32 / 77
7話 原点回帰【Side:奏斗】
27 新たな問題
しおりを挟む
「もー何?! 今日はどうしたの、白石」
「うん?」
机に肩肘をつきスマホの画面を眺めていた奏斗は、古川から声をかけられ顔をあげる。
「元気なさすぎ。若者は元気が取り柄でしょうよ」
「そんなこと言われてもな」
「古川、五月蠅いぞ」
奏斗が眉を寄せ困った顔をしていると、背後から圭一が古川をしかりつけた。
圭一に怒られ、渋々というように奏斗の席に腰かけた古川。
「俺はいつもこんなもんでしょ」
頬杖をついて微笑んで見せれば、
「なんなの?! 俺のこと口説いてる?!」
と言われてしまった。
理不尽だ。
「痛ッ」
古川は圭一にティッシュ箱を投げつけられ悶絶している。
「やかましい」
「仲いいね、大崎と」
構って欲しいのかと、話題を振るが古川は涙目だ。
「大崎、なんでティッシュボックスなんか持って歩いているのかと思ったら、投げる用なんだよ? 仲いいの? これ」
「まあ、少なくとも仲の悪い奴に投げつけたりしないのでは?」
古川は納得のいかない顔をしていたが、
「怪我したらどうしてくれるんだよ」
と圭一に抗議している。
「血が出たらそれで拭けばいいだろ。一石二鳥」
と冷たくあしらわれていた。
「で、時に三股疑惑の白石くん」
「な、なに」
奏斗の肩に腕を回し、声を落とす古川。
「最近特に、年上美女と懇意な関係だって聞いたんだけど?」
”彼女の家に入り浸っているとか”と続けて。
一体どこから情報が洩れているのだろうか。
「入り浸っているわけじゃないけれど……よく映画観たりとかはするかな」
嘘はないはずだ。
「彼女がいるのに?!」
「古川だってよく大里家にいくじゃない」
「それとこれとは違うよね?」
奏斗は肩をすくめると、
「どうかな」
とあいまいに笑う。
「それよりも、どっからそういう情報集めてくるわけ?」
「K学の裏掲示板」
そういえばこの人、高等部時代の生徒会長だったなと思いながら、チラリとスマホの画面に視線を落とす。
「そんなにいろんなこと書かれているわけ?」
「書かれているのは、一部の人だけだねえ」
「古川のは?」
「あるわけないでしょ!」
”モテない男は何も書かれないんだよ”とハンカチを噛みしめるフリをする古川。
「じゃあ、高等部時代の噂とかは……」
「ああいうのはNGだから。ファンの情報程度なら俺たちも見逃しもするけれど”住所やメッセージアプリのID”とかさ、そういうのは見つけ次第削除と垢バンよ」
「俺たち?」
「そそ。中等部、高等部で生徒会や風紀委員会に所属していた奴らは、運営の作業手伝ってるんだよ」
「へえ」
K学園の裏掲示板は裏と言いながらほとんどの学生が閲覧している人気のサイトだ。
「悪口とかだめだよね。炎上しちゃうし」
「ちょ……待って。三股疑惑は消してくれないわけ?」
奏斗は思わず、そう質問した。
「いやいやいや、あれは『白石くん、最近○○さんとよく一緒にいる』程度の情報よ? 三股疑惑は俺がかけてるの!」
「そ、そうなんだ」
どうやら書かれている情報は大したことではないようだ。それを総合して古川が妄想し、奏斗に突き付けているというのが真相。
高等部時代の噂は口頭で広がっていったようだ。
「どっちにしても揉めないように注意が必要なんじゃ? 見ているとは限らないけれど」
それは恋人がということなのだろうが、奏斗が恐れているのは愛美だ。
──まずいな。筒抜けってことか。
結菜も花穂も裏掲示板の書き込みは見そうではないが、愛美は違うだろう。
用があると誘いを断って、花穂といることがバレたら何を言われるかわからない。
「彼女じゃないのに……」
ため息とともに零れ落ちた言葉。
「何か言った?」
と古川。
「帰るわ」
「へ?」
奏斗は立ち上がると鞄を肩にかけ、圭一に目でだけで合図すると講堂を出た。
愛美に会うのは気が重い。
いくら言っても、言葉は届かないから。
とは言え、逃げてばかりでは何も解決はしない。
──結菜に守られているうちは、対等に話をすることはできないのかもしれない。
「うん?」
机に肩肘をつきスマホの画面を眺めていた奏斗は、古川から声をかけられ顔をあげる。
「元気なさすぎ。若者は元気が取り柄でしょうよ」
「そんなこと言われてもな」
「古川、五月蠅いぞ」
奏斗が眉を寄せ困った顔をしていると、背後から圭一が古川をしかりつけた。
圭一に怒られ、渋々というように奏斗の席に腰かけた古川。
「俺はいつもこんなもんでしょ」
頬杖をついて微笑んで見せれば、
「なんなの?! 俺のこと口説いてる?!」
と言われてしまった。
理不尽だ。
「痛ッ」
古川は圭一にティッシュ箱を投げつけられ悶絶している。
「やかましい」
「仲いいね、大崎と」
構って欲しいのかと、話題を振るが古川は涙目だ。
「大崎、なんでティッシュボックスなんか持って歩いているのかと思ったら、投げる用なんだよ? 仲いいの? これ」
「まあ、少なくとも仲の悪い奴に投げつけたりしないのでは?」
古川は納得のいかない顔をしていたが、
「怪我したらどうしてくれるんだよ」
と圭一に抗議している。
「血が出たらそれで拭けばいいだろ。一石二鳥」
と冷たくあしらわれていた。
「で、時に三股疑惑の白石くん」
「な、なに」
奏斗の肩に腕を回し、声を落とす古川。
「最近特に、年上美女と懇意な関係だって聞いたんだけど?」
”彼女の家に入り浸っているとか”と続けて。
一体どこから情報が洩れているのだろうか。
「入り浸っているわけじゃないけれど……よく映画観たりとかはするかな」
嘘はないはずだ。
「彼女がいるのに?!」
「古川だってよく大里家にいくじゃない」
「それとこれとは違うよね?」
奏斗は肩をすくめると、
「どうかな」
とあいまいに笑う。
「それよりも、どっからそういう情報集めてくるわけ?」
「K学の裏掲示板」
そういえばこの人、高等部時代の生徒会長だったなと思いながら、チラリとスマホの画面に視線を落とす。
「そんなにいろんなこと書かれているわけ?」
「書かれているのは、一部の人だけだねえ」
「古川のは?」
「あるわけないでしょ!」
”モテない男は何も書かれないんだよ”とハンカチを噛みしめるフリをする古川。
「じゃあ、高等部時代の噂とかは……」
「ああいうのはNGだから。ファンの情報程度なら俺たちも見逃しもするけれど”住所やメッセージアプリのID”とかさ、そういうのは見つけ次第削除と垢バンよ」
「俺たち?」
「そそ。中等部、高等部で生徒会や風紀委員会に所属していた奴らは、運営の作業手伝ってるんだよ」
「へえ」
K学園の裏掲示板は裏と言いながらほとんどの学生が閲覧している人気のサイトだ。
「悪口とかだめだよね。炎上しちゃうし」
「ちょ……待って。三股疑惑は消してくれないわけ?」
奏斗は思わず、そう質問した。
「いやいやいや、あれは『白石くん、最近○○さんとよく一緒にいる』程度の情報よ? 三股疑惑は俺がかけてるの!」
「そ、そうなんだ」
どうやら書かれている情報は大したことではないようだ。それを総合して古川が妄想し、奏斗に突き付けているというのが真相。
高等部時代の噂は口頭で広がっていったようだ。
「どっちにしても揉めないように注意が必要なんじゃ? 見ているとは限らないけれど」
それは恋人がということなのだろうが、奏斗が恐れているのは愛美だ。
──まずいな。筒抜けってことか。
結菜も花穂も裏掲示板の書き込みは見そうではないが、愛美は違うだろう。
用があると誘いを断って、花穂といることがバレたら何を言われるかわからない。
「彼女じゃないのに……」
ため息とともに零れ落ちた言葉。
「何か言った?」
と古川。
「帰るわ」
「へ?」
奏斗は立ち上がると鞄を肩にかけ、圭一に目でだけで合図すると講堂を出た。
愛美に会うのは気が重い。
いくら言っても、言葉は届かないから。
とは言え、逃げてばかりでは何も解決はしない。
──結菜に守られているうちは、対等に話をすることはできないのかもしれない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
アダルト漫画家とランジェリー娘
茜色
恋愛
21歳の音原珠里(おとはら・じゅり)は14歳年上のいとこでアダルト漫画家の音原誠也(おとはら・せいや)と二人暮らし。誠也は10年以上前、まだ子供だった珠里を引き取り養い続けてくれた「保護者」だ。
今や社会人となった珠里は、誠也への秘めた想いを胸に、いつまでこの平和な暮らしが許されるのか少し心配な日々を送っていて……。
☆全22話です。職業等の設定・描写は非常に大雑把で緩いです。ご了承くださいませ。
☆エピソードによって、ヒロイン視点とヒーロー視点が不定期に入れ替わります。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも投稿しております。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

社長の×××
恩田璃星
恋愛
真田葵26歳。
ある日突然異動が命じられた。
異動先である秘書課の課長天澤唯人が社長の愛人という噂は、社内では公然の秘密。
不倫が原因で辛い過去を持つ葵は、二人のただならぬ関係を確信し、課長に不倫を止めるよう説得する。
そんな葵に課長は
「社長との関係を止めさせたいなら、俺を誘惑してみて?」
と持ちかける。
決して結ばれることのない、同居人に想いを寄せる葵は、男の人を誘惑するどころかまともに付き合ったこともない。
果たして課長の不倫を止めることができるのか!?
*他サイト掲載作品を、若干修正、公開しております*

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる