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7話 原点回帰【Side:奏斗】
26 原点回帰と救い
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「愛美さんとつき合ったのは?」
「塾がきっかけ、高校二年の辺りから三年の秋辺りまで」
「和馬とは?」
「高校三年の冬より前、秋かな」
その後、わたしとも付き合っていたわよね? と続ける花穂。
それはどんな形であれ、事実。
「それが卒後まででしょう?」
そう、三月の終わり。
「結菜さんとそういう関係になったのは?」
結菜はもともと恋人のフリをして欲しいと頼んだことがきっかけだった。
「大学入って……秋だな」
「だから! ほとんど恋人いるじゃないの」
「……そうだな」
追及され、改めて振り返ると確かにそうだと思った。
「いや、でも間とか」
「そんな一か月くらいで次の相手できる人が、フリーのときもあるって豪語しないわよ」
花穂は非常に不機嫌だ。
「少なくとも、奏斗を噂で知ってからずっと相手いるじゃない。告白できる状況じゃないわよ」
それよりも、と彼女は続ける。
「好きなら追いかけてよ」
「俺が花穂を?」
「そうよ!」
「無理だって」
「もう。なんでそんなに自信ないのよ」
そんなことを言われるのは理不尽だ。
「なくなったんだよ、誰かさんのせいでね」
奏斗が力なく嫌味を返すと、花穂の表情が変わった。
「ごめんね。そっか、わかった」
「え?」
「何よ、そんな顔して。何がそんなに不安なの?」
「どんな顔してるっていうんだよ」
「怯えた子供みたいな」
心の中を見透かされたように感じ、奏斗は黙る。
確かに怖くてたまらない自分がいるのだ。それは事実。
また花穂が自分の前から去るのではないかと思うと、恐怖に支配される。何でもするから傍にいてと縋りたくなるのだ。
「責任、取るから」
「うん?」
意外な言葉が花穂の口から飛び出し、思考は停止した。
「わたしのことは奏斗が幸せにしてくれるんでしょ?」
”そう言ってたわよね?”と彼女。
「うん」
「だから、奏斗が大学卒業したら」
そこで彼女は深呼吸する。
「結婚しましょ」
「はい?」
衝撃の宣言に一瞬頭が真っ白になった。
結婚するのが嫌とかそういうことではない。
「ちょ……え? 今、なんて?」
「二年後、結婚しましょっていったの。ちゃんと聞いてた? だからそれまでに二人とはちゃんと別れて!」
「そんな、無茶苦茶な」
情けない声を出す奏斗に、
「何よ、いやなの?」
と詰め寄る花穂。
「嫌じゃないよ、嬉しいけど」
「けど何よ」
「愛美を説得できる自信が……」
そもそも何とかできるくらいなら、初めから二股なんてかけてはいないだろう。どうにもできないからこうなっているのだ。
「根気よくやるしかないわよ。よく話しあって」
その言葉には乗り気になれない。愛美は何を言っても聞くような相手ではないから。下手に怒らせて花穂に迷惑が掛かっても困る。
結菜と別れずにいるのは、別れたらお付き合いを強制されることがわかっているからだ。結菜には申し訳ないが、事情を知ってくれているのも彼女なのだ。
そのことを話すと、
「それじゃあ何も解決しないでしょ」
と言われる。
もっともな意見だ。
「そもそも、どうしてそんなに愛美さんに対して罪の意識を感じているのよ」
「裏切ったからだよ」
それが花穂との”行為”を指していることに気づいた彼女は渋い顔をする。
「でも、別れていたんでしょ?」
「そうだけど」
「そっか。そういうことね」
煮え切らない言い方をする奏斗に対して何かを察した花穂はグイっと奏斗の襟元を引き寄せた。
「?」
そして耳元に唇を寄せると、
「愛はあったのよ、奏斗」
と囁く。
「遊びじゃないの。罪悪感なんて持たなくていい」
”もう、解放されていいの”
言い聞かせるように。
愛美とは清い交際関係だった。
いつか結婚したいとまで思った相手。
自分が不甲斐ないばかりに、喧嘩別れしてしまった。
それでも、相手は自分を思い続けてくれていたのに。
愛のない行為だと理解しながら受け入れたはずなのに、ボロボロになった。
「奏斗は相手にも自分にも誠実でありたかったのよね。もう、自分を赦してあげて。わたしは本気で奏斗が欲しかったの」
塞がらなかった傷口を癒すように優しい声音で。
「もう、俺を突き放さないでよ」
”君にしか救えないのに”そう言葉を繋ぐ。
どこからやり直したら、苦しまずに済むのか。
どこへ向かえば、救われるのか。
それでも無常に時間は進み続ける。
「塾がきっかけ、高校二年の辺りから三年の秋辺りまで」
「和馬とは?」
「高校三年の冬より前、秋かな」
その後、わたしとも付き合っていたわよね? と続ける花穂。
それはどんな形であれ、事実。
「それが卒後まででしょう?」
そう、三月の終わり。
「結菜さんとそういう関係になったのは?」
結菜はもともと恋人のフリをして欲しいと頼んだことがきっかけだった。
「大学入って……秋だな」
「だから! ほとんど恋人いるじゃないの」
「……そうだな」
追及され、改めて振り返ると確かにそうだと思った。
「いや、でも間とか」
「そんな一か月くらいで次の相手できる人が、フリーのときもあるって豪語しないわよ」
花穂は非常に不機嫌だ。
「少なくとも、奏斗を噂で知ってからずっと相手いるじゃない。告白できる状況じゃないわよ」
それよりも、と彼女は続ける。
「好きなら追いかけてよ」
「俺が花穂を?」
「そうよ!」
「無理だって」
「もう。なんでそんなに自信ないのよ」
そんなことを言われるのは理不尽だ。
「なくなったんだよ、誰かさんのせいでね」
奏斗が力なく嫌味を返すと、花穂の表情が変わった。
「ごめんね。そっか、わかった」
「え?」
「何よ、そんな顔して。何がそんなに不安なの?」
「どんな顔してるっていうんだよ」
「怯えた子供みたいな」
心の中を見透かされたように感じ、奏斗は黙る。
確かに怖くてたまらない自分がいるのだ。それは事実。
また花穂が自分の前から去るのではないかと思うと、恐怖に支配される。何でもするから傍にいてと縋りたくなるのだ。
「責任、取るから」
「うん?」
意外な言葉が花穂の口から飛び出し、思考は停止した。
「わたしのことは奏斗が幸せにしてくれるんでしょ?」
”そう言ってたわよね?”と彼女。
「うん」
「だから、奏斗が大学卒業したら」
そこで彼女は深呼吸する。
「結婚しましょ」
「はい?」
衝撃の宣言に一瞬頭が真っ白になった。
結婚するのが嫌とかそういうことではない。
「ちょ……え? 今、なんて?」
「二年後、結婚しましょっていったの。ちゃんと聞いてた? だからそれまでに二人とはちゃんと別れて!」
「そんな、無茶苦茶な」
情けない声を出す奏斗に、
「何よ、いやなの?」
と詰め寄る花穂。
「嫌じゃないよ、嬉しいけど」
「けど何よ」
「愛美を説得できる自信が……」
そもそも何とかできるくらいなら、初めから二股なんてかけてはいないだろう。どうにもできないからこうなっているのだ。
「根気よくやるしかないわよ。よく話しあって」
その言葉には乗り気になれない。愛美は何を言っても聞くような相手ではないから。下手に怒らせて花穂に迷惑が掛かっても困る。
結菜と別れずにいるのは、別れたらお付き合いを強制されることがわかっているからだ。結菜には申し訳ないが、事情を知ってくれているのも彼女なのだ。
そのことを話すと、
「それじゃあ何も解決しないでしょ」
と言われる。
もっともな意見だ。
「そもそも、どうしてそんなに愛美さんに対して罪の意識を感じているのよ」
「裏切ったからだよ」
それが花穂との”行為”を指していることに気づいた彼女は渋い顔をする。
「でも、別れていたんでしょ?」
「そうだけど」
「そっか。そういうことね」
煮え切らない言い方をする奏斗に対して何かを察した花穂はグイっと奏斗の襟元を引き寄せた。
「?」
そして耳元に唇を寄せると、
「愛はあったのよ、奏斗」
と囁く。
「遊びじゃないの。罪悪感なんて持たなくていい」
”もう、解放されていいの”
言い聞かせるように。
愛美とは清い交際関係だった。
いつか結婚したいとまで思った相手。
自分が不甲斐ないばかりに、喧嘩別れしてしまった。
それでも、相手は自分を思い続けてくれていたのに。
愛のない行為だと理解しながら受け入れたはずなのに、ボロボロになった。
「奏斗は相手にも自分にも誠実でありたかったのよね。もう、自分を赦してあげて。わたしは本気で奏斗が欲しかったの」
塞がらなかった傷口を癒すように優しい声音で。
「もう、俺を突き放さないでよ」
”君にしか救えないのに”そう言葉を繋ぐ。
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どこへ向かえば、救われるのか。
それでも無常に時間は進み続ける。
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