R18【異性恋愛】第三の選択─Even if it's not love─

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4話 理解できない彼【Side:花穂】

15 奏斗の恋人

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 他人の問題には口を出すべきではない。
 わかってはいる。わかっていながら何故、自分はこんなところにいるのか?
 花穂はため息をつくと、バッグからスマホを取り出し画面を見つめる。
 そこに記載されているのは、奏斗が二股をかけている二人の名。
 
 どんな結末を選ぶのか、奏斗次第ということも重々承知の上。
 その上で花穂は二人に会ってみようと思ったのである。

 先に会うのは『大川結菜』だ。
 現在の奏斗の正式な恋人。
 先に同じ講義を取っている学生に話を聞いてみたが、いい印象ではなかった。それは大方奏斗のせいだろう。

 男子学生からは、
『ああ、金髪ツインテールのギャル系の子。可愛いけど、あの白石の彼女だって噂。遊んでる子なのかもね』
 負け惜しみなのだろう。その言葉の裏には、”狙っていたのに”という気持ちが隠れているように思えた。

 女子学生からは、
『白石くんの彼女でしょう? どんな手使って近づいたのかしらね』
 忌々しいというように吐き捨てられた言葉。
 奏斗の噂など信じていないということが伝わってくる。

 それでも最初に結菜に会うことにしたのは、”恋人のいる男を寝取ろうとする女”などロクな奴ではないと思ったからだ。
 自分も人のことは言えないが。
 それに対し結菜は奏斗が元カノ【美月愛美】と肉体関係にあることを知っている。二人の関係を容認しているのか、そこは定かではないが少なくとも肝が据わっていると感じた。

 花穂は腕時計で時間を確認する。
 時刻は一分前。
 確実に伝えてもらえたのかわからないが、ここに結菜を呼び出していた。事前に確認し、この時間は空いている教室。
 深呼吸し、ゆっくりとドアを開ける。彼女の写真なら見たことがあるので、いればわかるはずだ。

「あれ? いない」
 教室には誰もいなかった。部屋を間違えたのかと一旦後ろに下がり、教室番号を確認する。
 伝えてもらえなかったということもあるだろう。
 相手は結菜に対し、いい印象は持っていなかった。先輩から呼び出しを受けるということに”ざまあ、見ろ”と思ったとしても、伝えない利点はなにもないだろう。
 とすれば、本人が警戒したか。

 花穂は教室の前の壁に寄りかかると腕を組んだ。
 結菜と会えないとなると、愛美のほうはもっと難易度が高そうである。
 そこで奏斗が言っていた結菜の印象を思い出す。

『結菜? んー、コミュ障で天然で明るい子かな』

──天然?
 少し待ってみようかしら。

 約束の時間から五分が経過している。もしかしたらどこかで迷っているかもしれないし、講義を受けた場所から遠いかもしれない。
 そんなことを思いながらバッグからBluetoothイヤフォンを取り出す。音楽をかけようとしてスマホを取り出すと、数件のメッセージが来ていた。

 一件は先輩、大里愛花から。
他人ひとのことに首を突っ込んで、大事に至っても知りませんわよ?』
 心配しているのだろう。ありがたいなと思った。
 しかしこれは自分で決めたこと。
 もう一件は奏斗から。ご飯のお誘いだ。自宅へ迎えに行くから都合のいい時間を教えてとあった。

──断られるって思わないのかしら?
 断らないけど。
 
 後ほど返信すると返し、誰かが走ってくるのに気付いた花穂は音のする方へ視線を向ける。
 ツインテールの女子学生がパタパタと走ってくるところであった。やけに息を切らしていた。どうしたというのだろう。

「ごめ……なさ……はあはあ……遅れッ」
 何とか花穂の前まで走ってくると彼女は膝に手をつき、切れ切れに謝罪の言葉を述べた。
「いえ、いいのよ。それよりどうしたの?」
「渡り廊下が通れなくて、エレベーターに乗ろうと思ったらいっぱいで。時間に遅れそうだったから走ってきました」
 別館とこちらを繋ぐ渡り廊下は三階と五階にある。
「ごめんなさいね。わたしも連絡先、伝えておけばよかったわね」
「あ、気にしないでください」

 結菜は周りの評価とは違い、とても素直ないい子という印象を受けた。
 お詫びもかねて学食へ誘ったのは良かったのだが。
「先輩、聞いてくださいよー」
 いつの間にか彼女の恋愛相談に。

──何故、こうなった?
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