R18【異性恋愛】第三の選択─Even if it's not love─

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2.5話 溶け合う夜に【Side:花穂】

3 鈍感な彼、気づかれたくない彼女【R】

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「ん……ッ」
 わき腹から胸へ這う奏斗の手。
 思わず声を漏らすと、
「俺でも感じるんだ」
と彼。
 何故そんなに突っかかるのか分からない。
 ”奏斗、あなたおかしいわよ”
 そう言ってしまえたならどんなにか楽だろう。だが花穂は何も言わなかった。際どい所を優しく撫でる彼の手が肌を滑る。

──『俺でも』って何よ。
 奏斗としかしたことないのに。

 身体は熱を帯びる。心だけがとても痛い。
 どうしてこんな、何を考えているのか分からない男に惚れてしまったのか。
 ずっと自問自答している。

「なあ、花穂」
「なによ」
「俺のどこが良かったの」
「はい?」
 彼の手は敏感なところをなぞった。
 そんなところ弄りながらするべき質問じゃないわよねと思いながら、花穂は彼の髪を撫でる。
「気に入ったところがあったから、つき合ってと言ったんだろ?」
「そうね」
 響く水音。彼の中指が花穂の中に侵入してくる。

「顔。身体」
 彼の愛撫が良すぎて花穂は単語を述べるのがやっとだった。
 それなのに、
「身体って……」
と奏斗はショックを受けているようである。
「そんなの……つき合って見なきゃ中身なんてわからないわよ……んんッ……」
「いいの? これ」
 ゆっくりと抜き差しされる指に花穂は身を捩った。
 潤んだ瞳で見つめ返せば、彼が息を呑む。

「そんなヤラシイ顔して、見つめないでよ」
「え?」
 花穂は彼に腕を伸ばすと引き寄せて、その口を塞ぐ。
 なんのことか分からないと言った顔をしていた彼がその口づけに応じる。
「おしゃべりはおしまい」
 愁いを含んだその瞳がとても好き。
 花穂の言葉に彼は黙る。
 頬を撫でれば、再び口づけを落とす。早く繋がってしまいたいと思った。そうすれば、何も考えず快楽に身を任せることが出来るから。

「舐めてやるから、足開いて」
 耳元に唇をよせるとそんなことを言う奏斗。花穂は何を言うんだと、頬を染めた。部屋が暗くて良かったと思う。
 羞恥に頬を染めているなんてことは気づかれたくはない。いつだって気丈に振舞ってきたのだから。
「今日は……いい」
「今日は?」
 花穂はしまったと思ったが、後の祭り。
「それは次があるってこと?」
 そんなところばかり察しが良いとは。その調子で花穂の好意にも気づいて欲しいものだが、何故か奏斗は花穂に関しては鈍感なのだ。
「他に好きな奴がいるのに?」
「他とか言ってないでしょ」
「うん……?」

 どうしてそこは意味が分からないのよ、と思った。
 いい加減、殴りたくなる。
 気が変になるほど好きだと言ってやりたくなった。だが、それは出来ない。恋愛から逃げて来た男に好きだなんて言ったら、追い詰めるだけだろう。
 辛いには違いないが、今はこの位置にいたい。
 複雑な表情をしたままの彼が避妊具に手を伸ばす。

──そうよ、深く考えなさいよ。ホント。
 でも、今は良いわ。気づかなくて。
 苦しめたいわけじゃないの。

「う……んんッ」
 大きく足を開かれ、花穂は少しでも羞恥を和らげようと奏斗の背中に腕を回した。入り口をぬるりと滑る彼自身。
 いつかこの想いが伝わればいいと願う。
「痛い?」
 そりゃどんなに慣らしたとしても、狭い入り口を無理やり広げるような行為なのだ、多少は痛いものだ。久しぶりなら、なおさら。
「ん……ゆっくりして」
「わかった」
 ちゅっと頬に口づけられ、その意外な行動に花穂は思考が停止する。

──もう、絶対何か変よ。

 その正体がわからないまま、彼自身を受け入れていく。
「力抜いて、花穂」
「そんなこと……言われても……んッ」
 半端ない圧迫感。しかしそれを感じるほどにきゅっと締め付けてしまっている自分がいる。
「そんなに締め付けられたら……っちゃうよ」
 耳元で甘く囁かれて、ドキリとした。
 我慢できなくなった花穂は思わず、
「なんなの、奏斗。今日、絶対変!」
と奏斗に訴える。
「はあ?」
「意味わからない。なんでそんなにドキドキさせるのよ」
 花穂の言葉に、何を言われているのか理解しようとしているのだろうか。瞳を揺らし、じっと花穂を見つめた。
 そして黙って何かを思案しているように見えた奏斗は首を傾げると、
「もっとドキドキしてよ」
と言って微笑んだのだった。
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