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1 想いに気づく時
2 不可解なやり取り
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****Side:青城 紅
「帰ろう、紅」
「え、なんで」
「なんで……って」
紅をちらりと見やると深くため息をつく有馬。また自分は彼の足を引っ張ってしまうのだろうか?
良い友達でいたい。そんなささやかな願いさえ叶えることは出来ないのだろうか、自分には。
「体調が悪いと楽しめないだろ?」
「だから……」
「俺は紅が来たいって言うから一緒に来たんだ。一人で楽しめなんて言うなよな」
有馬に先手を打たれ、紅は口を噤む。
「さ、何か旨いものでも食べに行こう」
有馬の提案に紅は俯いたまま。すると彼が紅の耳元に唇を寄せた。
「それとも……紅はご令嬢との出会いが目的か?」
「ちが……」
慌てて否定する紅に、彼は肩を竦め両手を軽く広げる。
「わかり易すぎ」
自分は出逢いなんて求めていない。それなのに。
「何が」
「そういうの要らないから」
有馬がなんのことを言っているのか分からす、紅は戸惑うが。
「俺がフラれるのは俺のせい。紅のせいじゃない」
”それに……”と彼は続ける。
「好きな人がいるから、誰かとくっつけようとしないで」
少し呆れたような、それでいて優しい笑み。
「さ、行こうぜ」
有馬はポケットに突っ込んでいた手を紅の方に差し出すと、肩を抱いて。自分が彼に引け目を感じてしまったのは、何がきっかけだったのだろう。
”歩きづらいよ”とその腕をのければ、有馬がくすりと笑う。
「何、お前ら帰るの?」
広いエントランス、湾曲した階段下。壁際のソファーに片膝を立てて座っていた美青年がこちらに気づいて声を発する。彼は二個上の先輩で大学でサークルで知り合った【瀬戸 遥】だ。
瀬戸の仲の良い先輩が、今回のパーティー会場となった屋敷の主人の長子の親戚らしい。日本人の平均身長よりも低い彼は歳よりも若く見える。
「相変わらず、整った綺麗な顔」
彼に近づく二人。瀬戸の手は紅の頬に伸ばされるが。
「勝手に触らないでください」
彼の手首を掴み静止の言葉を発する有馬。
「青城は嫌がってないみたいだが?」
「そんなことを判断する時間、なかったでしょう? とにかく俺が嫌なんで」
何故二人が言い合っているのかも分からず、紅はぼんやりと二人のやり取りを眺める。
瀬戸はキラキラした人だと思う。こういうタイプの人だったら、多少真面目な格好をしていても有馬と一緒にいても不思議ではないのだろうかと思いながら。
「ガード、硬いな」
くくくと肩で笑う瀬戸。
「嫌がるのわかってるくせに、毎回そういう腹立つ冗談はやめて貰えます?」
有馬はどちらかというと温厚だ。それは人との争いを意図的に避けている部分も感じる。
「なんでそんなあからさまなのにわからないんだ?」
「余計なことも言わないでください」
「まあ、せいぜい頑張んなよ」
瀬戸がポンと有馬の肩を叩く。有馬が切なげに眉を寄せたのが気になる。
「行こう、紅」
「あ、ああ」
きっと二人にしかわからない内容なのだろう。気にはなったが紅は踏み込むのをやめた。
屋敷を出て駐車場に向かう。
送迎を使っている人が大多数な為、思ったよりも台数は少なかった。
「どうかした?」
隣を歩く有馬の視線に気づき、紅が立ち止まると彼も歩みを止める。
「あ、いや……何食いたいんかなって思って」
歯切れの悪い言葉。きっと他に言いたいことがあるんだろう。
「言いたいことがあるならはっきり言えよ。嫌われるよ、そういうの」
遠慮されるのは嬉しくない。だからと言って当たるのが良くないことも理解しているつもりだ。
「嫌われる? 誰に」
「誰って……誰に嫌われたくないわけ」
”誰”というのは重要なのか? と思いながら紅は小さくため息を零す。
「紅に嫌われるのは嫌かな」
「俺に?」
そうだと言うように数回小さく頷く彼。意味が分からない。
「友達に嫌われたくない気持ちは分からなくもない。だけど」
”何か違くない?”と疑問を口にするが、有馬は曖昧に笑みを浮かべるだけ。
「帰ろう、紅」
「え、なんで」
「なんで……って」
紅をちらりと見やると深くため息をつく有馬。また自分は彼の足を引っ張ってしまうのだろうか?
良い友達でいたい。そんなささやかな願いさえ叶えることは出来ないのだろうか、自分には。
「体調が悪いと楽しめないだろ?」
「だから……」
「俺は紅が来たいって言うから一緒に来たんだ。一人で楽しめなんて言うなよな」
有馬に先手を打たれ、紅は口を噤む。
「さ、何か旨いものでも食べに行こう」
有馬の提案に紅は俯いたまま。すると彼が紅の耳元に唇を寄せた。
「それとも……紅はご令嬢との出会いが目的か?」
「ちが……」
慌てて否定する紅に、彼は肩を竦め両手を軽く広げる。
「わかり易すぎ」
自分は出逢いなんて求めていない。それなのに。
「何が」
「そういうの要らないから」
有馬がなんのことを言っているのか分からす、紅は戸惑うが。
「俺がフラれるのは俺のせい。紅のせいじゃない」
”それに……”と彼は続ける。
「好きな人がいるから、誰かとくっつけようとしないで」
少し呆れたような、それでいて優しい笑み。
「さ、行こうぜ」
有馬はポケットに突っ込んでいた手を紅の方に差し出すと、肩を抱いて。自分が彼に引け目を感じてしまったのは、何がきっかけだったのだろう。
”歩きづらいよ”とその腕をのければ、有馬がくすりと笑う。
「何、お前ら帰るの?」
広いエントランス、湾曲した階段下。壁際のソファーに片膝を立てて座っていた美青年がこちらに気づいて声を発する。彼は二個上の先輩で大学でサークルで知り合った【瀬戸 遥】だ。
瀬戸の仲の良い先輩が、今回のパーティー会場となった屋敷の主人の長子の親戚らしい。日本人の平均身長よりも低い彼は歳よりも若く見える。
「相変わらず、整った綺麗な顔」
彼に近づく二人。瀬戸の手は紅の頬に伸ばされるが。
「勝手に触らないでください」
彼の手首を掴み静止の言葉を発する有馬。
「青城は嫌がってないみたいだが?」
「そんなことを判断する時間、なかったでしょう? とにかく俺が嫌なんで」
何故二人が言い合っているのかも分からず、紅はぼんやりと二人のやり取りを眺める。
瀬戸はキラキラした人だと思う。こういうタイプの人だったら、多少真面目な格好をしていても有馬と一緒にいても不思議ではないのだろうかと思いながら。
「ガード、硬いな」
くくくと肩で笑う瀬戸。
「嫌がるのわかってるくせに、毎回そういう腹立つ冗談はやめて貰えます?」
有馬はどちらかというと温厚だ。それは人との争いを意図的に避けている部分も感じる。
「なんでそんなあからさまなのにわからないんだ?」
「余計なことも言わないでください」
「まあ、せいぜい頑張んなよ」
瀬戸がポンと有馬の肩を叩く。有馬が切なげに眉を寄せたのが気になる。
「行こう、紅」
「あ、ああ」
きっと二人にしかわからない内容なのだろう。気にはなったが紅は踏み込むのをやめた。
屋敷を出て駐車場に向かう。
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「どうかした?」
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「あ、いや……何食いたいんかなって思って」
歯切れの悪い言葉。きっと他に言いたいことがあるんだろう。
「言いたいことがあるならはっきり言えよ。嫌われるよ、そういうの」
遠慮されるのは嬉しくない。だからと言って当たるのが良くないことも理解しているつもりだ。
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「紅に嫌われるのは嫌かな」
「俺に?」
そうだと言うように数回小さく頷く彼。意味が分からない。
「友達に嫌われたくない気持ちは分からなくもない。だけど」
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