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1 想いに気づく時
1 不可解な親友
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****Side:青城 紅
「何してんの、ホント」
それはK学園では有名な二大セレブの片割れ、大崎宅でのパーティーで。
「悪い。人混みは苦手なんだ」
【青城 紅】は壁に背を預け、追いかけて来た幼馴染みの【有馬 拓】を見上げる。ホームパーティーだと言っていたから油断した。
心配そうにこちらを見つめる彼。
「俺のことは気にせず、パーティーを楽しみたまえ」
二人は今年大学二年となった。幼稚園から大学院まであるK学園。二人は幼稚園からこの学園に所属している。長い付き合いだなと思いつつ、紅は有馬の背後に視線を向けた。
「そういうの、いいって。紅の体調の方が大事だろ」
紅にとって有馬は親友。高校時代までサッカー部に所属していた彼は程よく筋肉質であり身長も高い方だ。明るい髪色にピアス。お洒落で気さくだったから、男女関係なく人気があった。
それに対し、インテリを目指していた紅は艶やかな黒髪に制服をキチッと身に着けるような優等生。有馬が目に見えて紅を特別扱いしているのが気に入らない輩からは、年中嫌味を言われてきた。
──だからそれとなく距離を取っていたのに。
大学に入ってから有馬は……。
『なあ。大学では、もう……そういうの止めね?』
紅が何故距離を置いているのか、理解した上で何も言わずに放っておいたと言わんばかりに。
『放っておいた俺にも責任はあるけれど』
有馬はそう言ったが、違うのだ。彼は紅が有馬の取り巻きから嫌味を言われているのを放っておいたわけじゃない。彼は紅に突っかかる輩に腹を立て、相手を殴ろうとしたことがあるのだ。自分のせいで暴力沙汰になるのは良くないと思ったから離れたのに。
『有馬は悪くない』
『無条件に庇われると……傷つくんだけど?』
そう言われてしまうと強く出られない。そうでなくとも紅は有馬には弱い。自分には彼しか信頼できる人がいないから。
人は変わる。
簡単に好きだと言いながら、その好きは自分に都合のいい好きでしなかない。ありのままの自分でいいと言ってくれるのは有馬しかなかった。
何もありのままというのは努力しないというわけではない。長所も短所もその人を作る一部なんだと受け入れること。
それを自分の都合の良いように相手に直せというのは、思い通りの人形が欲しいのと何が違うのか。
優しくされないのは自分が優しくしないから。
愛されないのは自分が相手を愛さないから。
ただそれだけのことなのに、自分だけが一方的に利を搾取しようとする。それが大部分の人間だ。
だがそれよりも……優しくするから優しくされる。
こちらが好きになるから好きだというのだろうと思う方がずっと苦しく辛い。相手の愛を信じることができないのだから。
──俺はきっと有馬に依存している。
唯一の友人だから。
それは良くないと思った。そう思って参加したパーティーなのに。
余計なことだとはわかっているが、ここで有馬に”いい人”との出逢いがあれば良いと思っていた。
有馬はモテないわけじゃない。何故かK学園の女生徒にはモテなかったと本人は言っているが、それには理由がある。
有馬はつき合っても別れてしまう理由を紅に話すことはなかった。しかしたまたま有馬がフラれる現場を見てしまった紅は、複雑な心境になったのだ。
『有馬くんは、いつもわたしよりも友達を優先するよね』
恋は一時、友人は一生もの。そう思っているなら、多少友人を優先するのも分かる。だが、有馬は限度を超えていた。
『つき合って三か月になるのに、何度誘っても断るって何? わたし彼女だよね?』
”部活を優先するなら仕方ないけれど”と、彼女は続けて。
『理由が疲れてるでもわかる。でも、せっかくの休みなのに……』
”友達と約束があるから”と有馬は断るのだ。
──約束なんてしたことないのに。
誰が相手でも有馬は誘いに乗らず、紅のところへやってくる。なんの約束もしていないのに。
「何してんの、ホント」
それはK学園では有名な二大セレブの片割れ、大崎宅でのパーティーで。
「悪い。人混みは苦手なんだ」
【青城 紅】は壁に背を預け、追いかけて来た幼馴染みの【有馬 拓】を見上げる。ホームパーティーだと言っていたから油断した。
心配そうにこちらを見つめる彼。
「俺のことは気にせず、パーティーを楽しみたまえ」
二人は今年大学二年となった。幼稚園から大学院まであるK学園。二人は幼稚園からこの学園に所属している。長い付き合いだなと思いつつ、紅は有馬の背後に視線を向けた。
「そういうの、いいって。紅の体調の方が大事だろ」
紅にとって有馬は親友。高校時代までサッカー部に所属していた彼は程よく筋肉質であり身長も高い方だ。明るい髪色にピアス。お洒落で気さくだったから、男女関係なく人気があった。
それに対し、インテリを目指していた紅は艶やかな黒髪に制服をキチッと身に着けるような優等生。有馬が目に見えて紅を特別扱いしているのが気に入らない輩からは、年中嫌味を言われてきた。
──だからそれとなく距離を取っていたのに。
大学に入ってから有馬は……。
『なあ。大学では、もう……そういうの止めね?』
紅が何故距離を置いているのか、理解した上で何も言わずに放っておいたと言わんばかりに。
『放っておいた俺にも責任はあるけれど』
有馬はそう言ったが、違うのだ。彼は紅が有馬の取り巻きから嫌味を言われているのを放っておいたわけじゃない。彼は紅に突っかかる輩に腹を立て、相手を殴ろうとしたことがあるのだ。自分のせいで暴力沙汰になるのは良くないと思ったから離れたのに。
『有馬は悪くない』
『無条件に庇われると……傷つくんだけど?』
そう言われてしまうと強く出られない。そうでなくとも紅は有馬には弱い。自分には彼しか信頼できる人がいないから。
人は変わる。
簡単に好きだと言いながら、その好きは自分に都合のいい好きでしなかない。ありのままの自分でいいと言ってくれるのは有馬しかなかった。
何もありのままというのは努力しないというわけではない。長所も短所もその人を作る一部なんだと受け入れること。
それを自分の都合の良いように相手に直せというのは、思い通りの人形が欲しいのと何が違うのか。
優しくされないのは自分が優しくしないから。
愛されないのは自分が相手を愛さないから。
ただそれだけのことなのに、自分だけが一方的に利を搾取しようとする。それが大部分の人間だ。
だがそれよりも……優しくするから優しくされる。
こちらが好きになるから好きだというのだろうと思う方がずっと苦しく辛い。相手の愛を信じることができないのだから。
──俺はきっと有馬に依存している。
唯一の友人だから。
それは良くないと思った。そう思って参加したパーティーなのに。
余計なことだとはわかっているが、ここで有馬に”いい人”との出逢いがあれば良いと思っていた。
有馬はモテないわけじゃない。何故かK学園の女生徒にはモテなかったと本人は言っているが、それには理由がある。
有馬はつき合っても別れてしまう理由を紅に話すことはなかった。しかしたまたま有馬がフラれる現場を見てしまった紅は、複雑な心境になったのだ。
『有馬くんは、いつもわたしよりも友達を優先するよね』
恋は一時、友人は一生もの。そう思っているなら、多少友人を優先するのも分かる。だが、有馬は限度を超えていた。
『つき合って三か月になるのに、何度誘っても断るって何? わたし彼女だよね?』
”部活を優先するなら仕方ないけれど”と、彼女は続けて。
『理由が疲れてるでもわかる。でも、せっかくの休みなのに……』
”友達と約束があるから”と有馬は断るのだ。
──約束なんてしたことないのに。
誰が相手でも有馬は誘いに乗らず、紅のところへやってくる。なんの約束もしていないのに。
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