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4話 初恋と彼 【Side:柊木 蜜花】
1 親友と自分
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「青城くんとのデート、楽しかった?」
週明け。校内で会った荻那に問う、蜜花。荻那は一瞬戸惑った表情を見せる。
「デート、デートなのかな。近くに出来た喫茶店に行っただけだよ」
その後、彼がどんな格好だったや、どんな話をしたなどと報告を受けた。
彼女の好きな相手が自分の好きな相手でなければどんなにか良かっただろうか。
「蜜花はどうだった?」
「どうって?」
「有馬と話したんでしょ?」
「ああ、有馬くん」
確かにあの後、有馬と一緒には帰ったが。
『有馬くんは馨ちゃんと青城くんをくっつけようとしてるの?』
『無論、そのつもり』
一言で言えば変な人だ。もっと言えばどうかしている。自分の好きな人と親友を、自らくっつけようとしているのだから。
『馨ちゃんは良いかもしれないけど、青城くんは?』
『どういう意味だ?』
有馬は確かに人気がある。特に他校生に。きっと彼女たちは容姿に騙されているのではないかと思った。
悪い人ではないが、変人としか言いようがない。いや、クレイジーだ。
──高身長だし、イケメンだとは思う。
『青城くんの意思は無視なの?』
『紅だって満更でもないだろ』
『何を見て、そう思うの』
許せないとまでは言わないが、紅の意思は尊重する気がないのだろうか。せめて本人の意思確認はすべきだろうと思った。
『紅が仲の良い女子は荻那だけだ、今のところ』
『青城くんは女子が苦手なの?』
『いや、女子がと言うよりは』
そのあとを濁した彼。
腑に落ちないことだらけだ。
『それはそれとして、紅は俺たちをくっつけようとしてる』
有馬の言葉に蜜花はゲンナリした。
『わたしはくっつく気ないけど?』
『安心しろ。その意思は尊重する』
『そもそもなんで青城くんはそんなことをしようとしてるの』
大方原因を作ったのは有馬だろう。
『俺が君を好きだと言ったから』
『なんでそんな嘘つくの』
やはり有馬はどうかしている。
「有馬くんはトチ狂った人って印象」
蜜花はゲンナリした表情を浮かべ、片手の平を軽く上に向けた。理解に苦しむと言ったところか。
「有馬、何したの……一体」
「黙ってれば、素敵なイケメンだけどね」
荻那が『どういうこと?』と腕組みをして首を傾げる。
「あ、青城くん」
蜜花と話していたはずの荻那の視線は廊下の先に向けられていた。
「陛下……」
「陛下?」
荻那につられて紅の方に視線を向けた蜜花。思わず呟いた言葉に荻那が反応する。
「いや、青城くんって陛下みたいだなと思って」
廊下ですれ違う生徒たちに声をかけられる度に軽く手をあげ、にこやかに会釈する紅。その様子はまるで皇族が国民に手を振っているように見えた。
「青城くんはファンサに余念がないから」
ぎゅっと拳を顔の横で握る荻那。それはまるで決断力のポーズに見えた。
「あれってファンサービスなんだ」
こっちは総理かと思いながら。
紅がこちらに近づいてくるのを待っていた荻那は、途中で有馬が合流したのを見てあからさまに嫌な顔をした。
「おはよう、青城くんと有馬」
「おはよう」
爽やかに挨拶を返す紅。蜜花もそれにならう。
「なんだ、あからさまに邪魔モノ扱いして」
有馬は笑っている。
「気のせい、気のせい」
『蜜花、またね』と言われ軽く手をあげ、その場を後にした。
──馨ちゃんには笑顔を向けるんだね、有馬くんは。
紅が複雑な表情を浮かべて二人を見ていたことを思い出しながら。
「そりゃそうだ」
有馬は紅に対して『蜜花が好き』とカミングアウトしているのに、その本命の前で他の女子と親しくしているのだから。
──あれじゃあ、青城くんが有馬くんの嘘に気づくのも時間の問題だと思うんだけど。
もし、嘘だと知ったら紅はどうするのだろうか。不仲になってしまうこともあり得る。
──有馬くんは自業自得だけど、青城くんが傷つくのは嫌だな。
「あのトチ狂った人をなんとかしないと」
蜜花は新たな悩みにため息を漏らしたのだった。
週明け。校内で会った荻那に問う、蜜花。荻那は一瞬戸惑った表情を見せる。
「デート、デートなのかな。近くに出来た喫茶店に行っただけだよ」
その後、彼がどんな格好だったや、どんな話をしたなどと報告を受けた。
彼女の好きな相手が自分の好きな相手でなければどんなにか良かっただろうか。
「蜜花はどうだった?」
「どうって?」
「有馬と話したんでしょ?」
「ああ、有馬くん」
確かにあの後、有馬と一緒には帰ったが。
『有馬くんは馨ちゃんと青城くんをくっつけようとしてるの?』
『無論、そのつもり』
一言で言えば変な人だ。もっと言えばどうかしている。自分の好きな人と親友を、自らくっつけようとしているのだから。
『馨ちゃんは良いかもしれないけど、青城くんは?』
『どういう意味だ?』
有馬は確かに人気がある。特に他校生に。きっと彼女たちは容姿に騙されているのではないかと思った。
悪い人ではないが、変人としか言いようがない。いや、クレイジーだ。
──高身長だし、イケメンだとは思う。
『青城くんの意思は無視なの?』
『紅だって満更でもないだろ』
『何を見て、そう思うの』
許せないとまでは言わないが、紅の意思は尊重する気がないのだろうか。せめて本人の意思確認はすべきだろうと思った。
『紅が仲の良い女子は荻那だけだ、今のところ』
『青城くんは女子が苦手なの?』
『いや、女子がと言うよりは』
そのあとを濁した彼。
腑に落ちないことだらけだ。
『それはそれとして、紅は俺たちをくっつけようとしてる』
有馬の言葉に蜜花はゲンナリした。
『わたしはくっつく気ないけど?』
『安心しろ。その意思は尊重する』
『そもそもなんで青城くんはそんなことをしようとしてるの』
大方原因を作ったのは有馬だろう。
『俺が君を好きだと言ったから』
『なんでそんな嘘つくの』
やはり有馬はどうかしている。
「有馬くんはトチ狂った人って印象」
蜜花はゲンナリした表情を浮かべ、片手の平を軽く上に向けた。理解に苦しむと言ったところか。
「有馬、何したの……一体」
「黙ってれば、素敵なイケメンだけどね」
荻那が『どういうこと?』と腕組みをして首を傾げる。
「あ、青城くん」
蜜花と話していたはずの荻那の視線は廊下の先に向けられていた。
「陛下……」
「陛下?」
荻那につられて紅の方に視線を向けた蜜花。思わず呟いた言葉に荻那が反応する。
「いや、青城くんって陛下みたいだなと思って」
廊下ですれ違う生徒たちに声をかけられる度に軽く手をあげ、にこやかに会釈する紅。その様子はまるで皇族が国民に手を振っているように見えた。
「青城くんはファンサに余念がないから」
ぎゅっと拳を顔の横で握る荻那。それはまるで決断力のポーズに見えた。
「あれってファンサービスなんだ」
こっちは総理かと思いながら。
紅がこちらに近づいてくるのを待っていた荻那は、途中で有馬が合流したのを見てあからさまに嫌な顔をした。
「おはよう、青城くんと有馬」
「おはよう」
爽やかに挨拶を返す紅。蜜花もそれにならう。
「なんだ、あからさまに邪魔モノ扱いして」
有馬は笑っている。
「気のせい、気のせい」
『蜜花、またね』と言われ軽く手をあげ、その場を後にした。
──馨ちゃんには笑顔を向けるんだね、有馬くんは。
紅が複雑な表情を浮かべて二人を見ていたことを思い出しながら。
「そりゃそうだ」
有馬は紅に対して『蜜花が好き』とカミングアウトしているのに、その本命の前で他の女子と親しくしているのだから。
──あれじゃあ、青城くんが有馬くんの嘘に気づくのも時間の問題だと思うんだけど。
もし、嘘だと知ったら紅はどうするのだろうか。不仲になってしまうこともあり得る。
──有馬くんは自業自得だけど、青城くんが傷つくのは嫌だな。
「あのトチ狂った人をなんとかしないと」
蜜花は新たな悩みにため息を漏らしたのだった。
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