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2話 わたしの好きな人 【Side:荻那 馨】
2 彼からの印象
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「青城くんもやっぱり蜜花のようなタイプは可愛いと思う?」
「も?」
再び歩き出す紅に続いて歩を進める荻那。
紅は不思議そうにこちらへ視線を向けた。
”も”がどこにかかっているのか思案しているのだろうか。少し間を置き、彼は言う。
「それは見た目に関して言っているの」
「そう、なっちゃうのかな」
そこである疑念が湧く。話の流れから”も”は『有馬』か『一般的』にかかると考えるのが自然。だが彼は不思議そうな表情をした。誰と比べているのか分からなかったからだろう。
──ということは、有馬が青城くんに対して『蜜花が可愛い』と言ったことがないと想像できるのだけど。
それには非常に違和感が湧く。
紅が気を遣うほどに、有馬が蜜花のことを好きであると言っている”はず”なのに。少なくとも紅はそう感じるから二人きりにしようとした。そう、思えるのに何かが変である。
「見た目か……ツインテールはポイントが高いとは思うが、絶対領域も負けてないと思うんだよな。どっちも良いと思う」
「?」
荻那には紅の言っていることが判り兼ねた。
「俺たちは日常的に『可愛い』と言う言葉を使うけれど、元々は小さきものを差して使われる言葉だったんだよね。だから少なくとも人を対象にした場合は、目下の者に対して使う言葉なんだと思うわけだよ」
言わんとしていることは分かるが、何故その説明をしようとしているのか分からない。
「だからそのことを踏まえると、同級生に向けていい言葉なのか迷うし。何よりもセクハラじゃないかなとか思ったりも」
そこで紅のことが少し理解が出来た。
──有馬は青城くんのことはよく知っているはず。
つまり、有馬が蜜花のことを可愛いと称さなくても不思議ではないと言うことね。
そんなことを紅に対して発言したら『セクハラだぞ』と言われるから有馬は言わなかった可能性がある、ということだ。
「でも、わたしは青城くんにだったら可愛いって言われても嬉しいかな」
「そう?」
そこで何故か彼は複雑な表情をした。それは彼への好きが伝わってしまったからなのかと思ったが。
荻那はふと、紅が言っていた『どっちも良いと思う』という言葉が気になってスマホで検索してみたところ『絶対領域』が何を指しているのか理解した。
──わあ。ちゃんと褒められている!
荻那はスカートの裾を抑え、頬を赤らめる。街路樹を見上げる紅の方をチラリと見つつ。紅が複雑な表情をしたのは『可愛い』と発言したことに荻那が気づいていなかったからなのかもしれないし、褒めた部位がセクハラに当たるからなのかもしれなかった。
──青城くんらしいな。
「ねえ、青城くん」
「うん?」
街路樹を見上げていた彼が呼ばれて視線をこちらに移す。
「近所にレトロアンティーク喫茶が出来たんだけど」
「レトロなのに?」
確かにレトロとは日本では復古と訳されることが多い。何故古いものを新しく建てられるのかという矛盾を感じてしまうものだ。新しくできた店に老舗と書いてあることに違和感を覚えることもあるだろう。
しかしレトロと言う言葉を検索すれば【過去の流行やスタイルを現代に取り入れること、またはそのようなスタイル自体を指す】言葉と出る。なので変ではない。
「むしろ、レトロだから」
荻那がスマホで言葉の意味を表示したページを彼に向けると、眼鏡をあげる仕草をしたのち『なるほど』と呟く。
彼が伊達メガネをかけるのは校内でだけだ。
「今度一緒に行かない?」
「いいね」
きっとどこに誘っても一緒に行ってくれるだろう。それが特別なのか、趣味が合うからなのか、それとも恋愛対象外だからなのかは分からない。
もしかしたら単に友達だと思われている可能性もある。
──焦っても仕方ないよね。
大学も一緒なんだし、のんびりいこう。
荻那は心の中でぎゅっと拳を握りしめた。
恋に焦りは禁物である。
「も?」
再び歩き出す紅に続いて歩を進める荻那。
紅は不思議そうにこちらへ視線を向けた。
”も”がどこにかかっているのか思案しているのだろうか。少し間を置き、彼は言う。
「それは見た目に関して言っているの」
「そう、なっちゃうのかな」
そこである疑念が湧く。話の流れから”も”は『有馬』か『一般的』にかかると考えるのが自然。だが彼は不思議そうな表情をした。誰と比べているのか分からなかったからだろう。
──ということは、有馬が青城くんに対して『蜜花が可愛い』と言ったことがないと想像できるのだけど。
それには非常に違和感が湧く。
紅が気を遣うほどに、有馬が蜜花のことを好きであると言っている”はず”なのに。少なくとも紅はそう感じるから二人きりにしようとした。そう、思えるのに何かが変である。
「見た目か……ツインテールはポイントが高いとは思うが、絶対領域も負けてないと思うんだよな。どっちも良いと思う」
「?」
荻那には紅の言っていることが判り兼ねた。
「俺たちは日常的に『可愛い』と言う言葉を使うけれど、元々は小さきものを差して使われる言葉だったんだよね。だから少なくとも人を対象にした場合は、目下の者に対して使う言葉なんだと思うわけだよ」
言わんとしていることは分かるが、何故その説明をしようとしているのか分からない。
「だからそのことを踏まえると、同級生に向けていい言葉なのか迷うし。何よりもセクハラじゃないかなとか思ったりも」
そこで紅のことが少し理解が出来た。
──有馬は青城くんのことはよく知っているはず。
つまり、有馬が蜜花のことを可愛いと称さなくても不思議ではないと言うことね。
そんなことを紅に対して発言したら『セクハラだぞ』と言われるから有馬は言わなかった可能性がある、ということだ。
「でも、わたしは青城くんにだったら可愛いって言われても嬉しいかな」
「そう?」
そこで何故か彼は複雑な表情をした。それは彼への好きが伝わってしまったからなのかと思ったが。
荻那はふと、紅が言っていた『どっちも良いと思う』という言葉が気になってスマホで検索してみたところ『絶対領域』が何を指しているのか理解した。
──わあ。ちゃんと褒められている!
荻那はスカートの裾を抑え、頬を赤らめる。街路樹を見上げる紅の方をチラリと見つつ。紅が複雑な表情をしたのは『可愛い』と発言したことに荻那が気づいていなかったからなのかもしれないし、褒めた部位がセクハラに当たるからなのかもしれなかった。
──青城くんらしいな。
「ねえ、青城くん」
「うん?」
街路樹を見上げていた彼が呼ばれて視線をこちらに移す。
「近所にレトロアンティーク喫茶が出来たんだけど」
「レトロなのに?」
確かにレトロとは日本では復古と訳されることが多い。何故古いものを新しく建てられるのかという矛盾を感じてしまうものだ。新しくできた店に老舗と書いてあることに違和感を覚えることもあるだろう。
しかしレトロと言う言葉を検索すれば【過去の流行やスタイルを現代に取り入れること、またはそのようなスタイル自体を指す】言葉と出る。なので変ではない。
「むしろ、レトロだから」
荻那がスマホで言葉の意味を表示したページを彼に向けると、眼鏡をあげる仕草をしたのち『なるほど』と呟く。
彼が伊達メガネをかけるのは校内でだけだ。
「今度一緒に行かない?」
「いいね」
きっとどこに誘っても一緒に行ってくれるだろう。それが特別なのか、趣味が合うからなのか、それとも恋愛対象外だからなのかは分からない。
もしかしたら単に友達だと思われている可能性もある。
──焦っても仕方ないよね。
大学も一緒なんだし、のんびりいこう。
荻那は心の中でぎゅっと拳を握りしめた。
恋に焦りは禁物である。
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