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5話『17年前の事件の真相』
4 皇の愛のカタチ
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****♡Side・副社長(皇)
「皇さん……どうかされたのですか?」
皇がバルコニーの欄干に頬杖を付きぼんやりと外を眺めていると、背後から声をかけられる。
「うん?」
あれから社長に十七年前のことについて話を聞く機会があった。その内容の悍ましさに身震いしたことを思い出す。
開け放たれたリビングの掃き出し窓の向こう側。お洒落な音楽が聴こえる。
思わずリズムを取ってしまいそうになり、皇は苦笑した。
風にレースのカーテンが揺れる。
「夜風にあたりたかっただけだよ」
「そうなのですか」
肯定の意で微笑んで見せれば相手は頬を赤らめた。
彼がサンダルに履き替え近づいてくるのを眺めながら皇は昼間の会話を思い出す。
『僕もその点については……』
唯野の娘が誰の子なのかという話になると社長呉崎は言葉を濁した。
あの濁し方は何か知っているとしか思えなかったが、追及するのはやめたのだ。問題は唯野と娘に血の繋がりがあるかどうかだから。
──まさか唯野さんが十七年前に元会長のおもちゃにされていたなんて。
俄かには信じがたい話だが嘘を言う利点は何処にもないだろう。その証拠に呉崎は気まずそうな顔をし、皇に問うたのだ。
『そんなことを調べてどうする気なんだね?』
と。
なんと答えるか迷ったものの”唯野の離婚”について話すと社長は何故か急に協力的になった。
呉崎がどんな結末を望んでいるのか全く分からないが、彼にとって唯野の離婚は『喜ばしいこと』に属するのだと感じる。
「綺麗ですね、夜景」
隣に並んだ彼こと社長秘書の神流川。
「板井も同じことを言っていたよ」
「板井さんもこちらに?」
最近皇が板井と共に行動していることを見ても実感がわかないのだろう。不思議そうに問われる。
「外だと何かと問題が起きそうだしな」
皇の言葉に”そうですね”と口にする彼。
神流川を自宅に呼んだのは他でもない、調査協力を依頼しているからだ。
何故彼が協力してくれるのかはわからない。しかし唯野の人徳というものを感じた。
「皇さん」
「ん?」
神流川が自分に好意を持っていることは知っていたが、二人きりになることは日常茶飯事。何の警戒もしていなかった。
恐らく彼は皇の信頼を裏切ることはないだろう。想いを告げられたこともない。だがら、その時が来るまでは何も言うべきではないと思っている。
「本当にいいのでしょうか?」
「泊っていくことなら問題ないぞ。客間があるし」
「いえ。そうではなく」
”なんだ、違うのか”と言えば、困ったように眉を寄せる神流川。
飲みながら報告を聞くと言ったのは皇のほうだ。何度か一緒に飲みに行ったこともあり、彼が酒に強いことは知っている。
何か他に問題でもあるのだろうかと思っていると、
「社長が協力的と言うことは、この問題が早急に解決すると言っても過言ではありません」
と神流川。
「それの何が問題なんだよ」
「問題というか……唯野さんの離婚が成立するということは、彼が正式に塩田さんとおつきあいできるということなんですよ?」
「そうだな」
神流川は皇が塩田に想いを寄せていることも知っていた。
だから楽な相手なのだ。
「いいじゃないか。塩田が幸せになれる」
皇は一つ深呼吸して。
それを見ていた彼は切なげに皇を見つめる。
「本当にそれでいいんですか?」
「なんで神流川のほうが泣きそうな顔をしているんだよ」
言って笑う皇。
どんなに自分が塩田を好きだろうが結末は変わらないのだ。
だったら彼が幸せな方がいいじゃないかと思う。
塩田は皇の想いを否定しなかった。応えることはできなくても、愛し続けることを許してくれたのだ。
手に入れたいとは思う。それが本音だ。
けれど、思い続けれられるだけでもう十分だと思う自分もいる。
──結ばれるだけが全てじゃない。
いつかは諦めなければならないとしても。
望めば触れることを許してくれる。
会って会話することもできる。
いつか想いが溶けるまで、今はこのままでいられれば。
強がりだと言われたら否定はしない。
だが、こんな愛し方でもいいのではないだろうか?
「皇さん……どうかされたのですか?」
皇がバルコニーの欄干に頬杖を付きぼんやりと外を眺めていると、背後から声をかけられる。
「うん?」
あれから社長に十七年前のことについて話を聞く機会があった。その内容の悍ましさに身震いしたことを思い出す。
開け放たれたリビングの掃き出し窓の向こう側。お洒落な音楽が聴こえる。
思わずリズムを取ってしまいそうになり、皇は苦笑した。
風にレースのカーテンが揺れる。
「夜風にあたりたかっただけだよ」
「そうなのですか」
肯定の意で微笑んで見せれば相手は頬を赤らめた。
彼がサンダルに履き替え近づいてくるのを眺めながら皇は昼間の会話を思い出す。
『僕もその点については……』
唯野の娘が誰の子なのかという話になると社長呉崎は言葉を濁した。
あの濁し方は何か知っているとしか思えなかったが、追及するのはやめたのだ。問題は唯野と娘に血の繋がりがあるかどうかだから。
──まさか唯野さんが十七年前に元会長のおもちゃにされていたなんて。
俄かには信じがたい話だが嘘を言う利点は何処にもないだろう。その証拠に呉崎は気まずそうな顔をし、皇に問うたのだ。
『そんなことを調べてどうする気なんだね?』
と。
なんと答えるか迷ったものの”唯野の離婚”について話すと社長は何故か急に協力的になった。
呉崎がどんな結末を望んでいるのか全く分からないが、彼にとって唯野の離婚は『喜ばしいこと』に属するのだと感じる。
「綺麗ですね、夜景」
隣に並んだ彼こと社長秘書の神流川。
「板井も同じことを言っていたよ」
「板井さんもこちらに?」
最近皇が板井と共に行動していることを見ても実感がわかないのだろう。不思議そうに問われる。
「外だと何かと問題が起きそうだしな」
皇の言葉に”そうですね”と口にする彼。
神流川を自宅に呼んだのは他でもない、調査協力を依頼しているからだ。
何故彼が協力してくれるのかはわからない。しかし唯野の人徳というものを感じた。
「皇さん」
「ん?」
神流川が自分に好意を持っていることは知っていたが、二人きりになることは日常茶飯事。何の警戒もしていなかった。
恐らく彼は皇の信頼を裏切ることはないだろう。想いを告げられたこともない。だがら、その時が来るまでは何も言うべきではないと思っている。
「本当にいいのでしょうか?」
「泊っていくことなら問題ないぞ。客間があるし」
「いえ。そうではなく」
”なんだ、違うのか”と言えば、困ったように眉を寄せる神流川。
飲みながら報告を聞くと言ったのは皇のほうだ。何度か一緒に飲みに行ったこともあり、彼が酒に強いことは知っている。
何か他に問題でもあるのだろうかと思っていると、
「社長が協力的と言うことは、この問題が早急に解決すると言っても過言ではありません」
と神流川。
「それの何が問題なんだよ」
「問題というか……唯野さんの離婚が成立するということは、彼が正式に塩田さんとおつきあいできるということなんですよ?」
「そうだな」
神流川は皇が塩田に想いを寄せていることも知っていた。
だから楽な相手なのだ。
「いいじゃないか。塩田が幸せになれる」
皇は一つ深呼吸して。
それを見ていた彼は切なげに皇を見つめる。
「本当にそれでいいんですか?」
「なんで神流川のほうが泣きそうな顔をしているんだよ」
言って笑う皇。
どんなに自分が塩田を好きだろうが結末は変わらないのだ。
だったら彼が幸せな方がいいじゃないかと思う。
塩田は皇の想いを否定しなかった。応えることはできなくても、愛し続けることを許してくれたのだ。
手に入れたいとは思う。それが本音だ。
けれど、思い続けれられるだけでもう十分だと思う自分もいる。
──結ばれるだけが全てじゃない。
いつかは諦めなければならないとしても。
望めば触れることを許してくれる。
会って会話することもできる。
いつか想いが溶けるまで、今はこのままでいられれば。
強がりだと言われたら否定はしない。
だが、こんな愛し方でもいいのではないだろうか?
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