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5話『17年前の事件の真相』
2 その不敵な笑み
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****♡Side・課長(唯野 修二)
ソファーに身を埋めた塩田は浮かない顔をしていた。
帰ってきてからずっとそうだ。
そんなに板井の相談とやらは難しい内容のものだったのだろうか?
コーヒーを入れていた修二はカップを掴むと彼の隣に腰かけ、ローテーブルにそれをそっと置いた。
「どうしたんだ?」
彼の背中に腕を回し、その肩を引き寄せる。
「なあ、修二」
修二の肩に頭を乗せた塩田は、
「年の差ってどう思う?」
と質問を口にした。
「は?」
てっきり板井の話しが出て来るのかと思っていたからだが。
いや、板井が年の差恋愛で悩んでいる可能性は否定できない。
だとしても、現に自分たちも年の差恋愛をしているはずなのだ。それを修二に聞くというのは、一体どういう意味合いを含むのだろうか。
「板井は年の差恋愛で苦しんでいるのか?」
思わずそう質問してしまう。
塩田は顔をあげると、眉を寄せた。まるでその表情は『何言ってんだ、あんた』とも読み取れる。
修二はますます困惑する。
「別に板井は悩んではいないと思うが」
と塩田。
「じゃあ、相手が悩んでるのか?」
「は?」
どうにも話がかみ合っていないようだ。
「さっきから修二は何を言っているんだ?」
「いや、塩田は板井と話をしてきたんだろ。そのことで考え事をしているのかと」
「俺は他人のことでは悩まない」
塩田は軽くため息をつくと修二の首に腕を巻き付け、徐に修二の唇に自分の唇を押し当てる。
──他人のことでは悩まない?
「ちょちょちょ……待て待て」
修二は何かに気づき、塩田の両肩を掴む。
「なんだよ、まだ途中」
キスを中断されたのが嫌だったのか、不満そうな彼。
「年の差って、塩田と俺の話しか?」
と問えば『何言ってんだ、当たり前だろ』という顔をされる。
「なんで急にそんなこと聞くんだ?」
今まで一度だってそんな話はしたことがなかったはずだ。不安な自分の気持ちを見透かされたとでもいうのだろうか?
「なんでって……修二は俺がなんでもできるようになったら、不安になるのか?」
誰の入れ知恵なのだろうかと思った。
「それは……まあ」
困ったように目を泳がす修二に抱き着く彼。
「なんで?」
「なんでって……相手が完璧だったら、自分は必要ないと思ってしまうものだろう? それに相手の選択肢だって広がる」
修二はその温もりを抱きしめながら、吐き出すように答える。
「俺は、甘えてばかりいるのは相手の負担にしかならないと思うんだが」
と塩田。
「俺は塩田に必要とされていたい」
「修二は便利屋でもママでもない」
修二の言葉にそういうと、首筋に吸い付く彼。
「それは……そうだけど」
正論を突きつけられ、どうしていいのか分からなかった。
ただ自分は、彼を失いたくないだけのだ。
人は助け合って生きている。互いに必要だと思うからその関係を続けられるのだとも思う。もし、塩田が一人で困らなくなれば自分は必要ないと思ってしまっても無理はないのではないか?
「俺は別に、修二が何かしてくれるから好きなわけじゃない」
年の差恋愛が上手くいかないのは、相手にはもっとふさわしい相手がいるのではと考えてしまうからだ。彼はまだ若い。価値観だって違うだろう。
「俺にはわからないよ。なんでそんなことで、不安になるのか」
「塩田」
「俺は修二だから好きなだけ」
”エッチしたい”と耳元で囁かれ、おいでと言うように彼の手を取った。
「塩田」
「ん?」
ベッドに組み伏せ、彼を見下ろす。
「俺は何があっても、塩田と別れるつもりはない。例えば他に好きな人が出来たと言われても」
塩田は修二の言葉に瞬きをする。
「そんなことになったら」
「なったら?」
「お前を閉じ込めてやる。どこにも行かせはしない」
修二の言葉に彼はフッと笑うと、
「やれるもんなら、やってみろよ」
と面白いという風にそう言う。
「その言葉、後悔するなよ?」
と修二。
「後悔なんてするもんか」
不敵に笑う塩田。修二はその笑顔に魅了されてしまっていたのだった。
ソファーに身を埋めた塩田は浮かない顔をしていた。
帰ってきてからずっとそうだ。
そんなに板井の相談とやらは難しい内容のものだったのだろうか?
コーヒーを入れていた修二はカップを掴むと彼の隣に腰かけ、ローテーブルにそれをそっと置いた。
「どうしたんだ?」
彼の背中に腕を回し、その肩を引き寄せる。
「なあ、修二」
修二の肩に頭を乗せた塩田は、
「年の差ってどう思う?」
と質問を口にした。
「は?」
てっきり板井の話しが出て来るのかと思っていたからだが。
いや、板井が年の差恋愛で悩んでいる可能性は否定できない。
だとしても、現に自分たちも年の差恋愛をしているはずなのだ。それを修二に聞くというのは、一体どういう意味合いを含むのだろうか。
「板井は年の差恋愛で苦しんでいるのか?」
思わずそう質問してしまう。
塩田は顔をあげると、眉を寄せた。まるでその表情は『何言ってんだ、あんた』とも読み取れる。
修二はますます困惑する。
「別に板井は悩んではいないと思うが」
と塩田。
「じゃあ、相手が悩んでるのか?」
「は?」
どうにも話がかみ合っていないようだ。
「さっきから修二は何を言っているんだ?」
「いや、塩田は板井と話をしてきたんだろ。そのことで考え事をしているのかと」
「俺は他人のことでは悩まない」
塩田は軽くため息をつくと修二の首に腕を巻き付け、徐に修二の唇に自分の唇を押し当てる。
──他人のことでは悩まない?
「ちょちょちょ……待て待て」
修二は何かに気づき、塩田の両肩を掴む。
「なんだよ、まだ途中」
キスを中断されたのが嫌だったのか、不満そうな彼。
「年の差って、塩田と俺の話しか?」
と問えば『何言ってんだ、当たり前だろ』という顔をされる。
「なんで急にそんなこと聞くんだ?」
今まで一度だってそんな話はしたことがなかったはずだ。不安な自分の気持ちを見透かされたとでもいうのだろうか?
「なんでって……修二は俺がなんでもできるようになったら、不安になるのか?」
誰の入れ知恵なのだろうかと思った。
「それは……まあ」
困ったように目を泳がす修二に抱き着く彼。
「なんで?」
「なんでって……相手が完璧だったら、自分は必要ないと思ってしまうものだろう? それに相手の選択肢だって広がる」
修二はその温もりを抱きしめながら、吐き出すように答える。
「俺は、甘えてばかりいるのは相手の負担にしかならないと思うんだが」
と塩田。
「俺は塩田に必要とされていたい」
「修二は便利屋でもママでもない」
修二の言葉にそういうと、首筋に吸い付く彼。
「それは……そうだけど」
正論を突きつけられ、どうしていいのか分からなかった。
ただ自分は、彼を失いたくないだけのだ。
人は助け合って生きている。互いに必要だと思うからその関係を続けられるのだとも思う。もし、塩田が一人で困らなくなれば自分は必要ないと思ってしまっても無理はないのではないか?
「俺は別に、修二が何かしてくれるから好きなわけじゃない」
年の差恋愛が上手くいかないのは、相手にはもっとふさわしい相手がいるのではと考えてしまうからだ。彼はまだ若い。価値観だって違うだろう。
「俺にはわからないよ。なんでそんなことで、不安になるのか」
「塩田」
「俺は修二だから好きなだけ」
”エッチしたい”と耳元で囁かれ、おいでと言うように彼の手を取った。
「塩田」
「ん?」
ベッドに組み伏せ、彼を見下ろす。
「俺は何があっても、塩田と別れるつもりはない。例えば他に好きな人が出来たと言われても」
塩田は修二の言葉に瞬きをする。
「そんなことになったら」
「なったら?」
「お前を閉じ込めてやる。どこにも行かせはしない」
修二の言葉に彼はフッと笑うと、
「やれるもんなら、やってみろよ」
と面白いという風にそう言う。
「その言葉、後悔するなよ?」
と修二。
「後悔なんてするもんか」
不敵に笑う塩田。修二はその笑顔に魅了されてしまっていたのだった。
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