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5話『17年前の事件の真相』
1 事件の概要と糸口
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****♡side・塩田
修二を先に帰すと、塩田は板井と皇と合流した。
「帰りはどうするって?」
板井のマンションの最寄り駅は会社から二駅の場所にある。
「修二が車で迎えに来てくれるって」
と塩田はスマホのメッセージを眺めながら。
「じゃあ、呑みながら話すか」
三人は皇の車で板井のマンション近くのスーパーへ向かっていた。
夕飯は簡単に鍋にしようということで落ち着く。
「皇はどうするんだ?」
ビールの缶を手に取った皇に塩田が問う。
「板井のところに泊めてもらうから問題ない」
「ならいいが」
板井は二人から離脱し、食材を見ている。
「今日は概要を話そうと思う。あまり長居して唯野さんに怪しまれても困るしな」
皇はそういうとビールを籠に入れ、更に水を手に取った。
板井のマンションに着くと、手際の良い二人に塩田は圧倒されるばかり。
自分も一人暮らしをしていたのに、料理の一つもできないのだなと改めて思った。
修二と付き合う前は、よく同僚の電車が泊って行ったが、彼も簡単な料理ならできる。
自分も何か作れたりした方が良いだろうか? と皇に助言を求めたが、
「唯野さんが料理できるから、良いんじゃないのか?」
と言われてしまった。
「唯野さんが求めていない以上は、そのままでいいと思うぞ」
「そっか」
少しがっかりした表情をする塩田に、
「むしろ、何でも出来る用になったら唯野さんが不安になるんじゃないのか?」
と皇。
塩田にはその意味が分かり兼ねた。
「まあ、年下の塩田には分からないとは思うけれど、年上は心配になるもんなんだよ。特に年が離れているとさ」
皇にはそんな経験があるのだろうか?
だが皇の年齢的に十も離れていたとしたら、犯罪だ。なのでたとえ話なのだろうと思う。
「若い子の方がいいんじゃないか、とかさ」
その気持ちが分からない塩田は、ただ瞬きをしただけだった。
自分は何も、修二がなんでもしてくれるから好きと言うわけではない。
不便なことは承知で一人暮らしを始めたのだから、その覚悟くらいはあるつもりだ。料理が出来なくとも、便利な時代。
美味しくはなくても電子レンジさえあれば、何とかなる。
そんな塩田を周りが甘やかしてきたのだ。
「ま、料理なんて始めてしまえば簡単だから心配することない」
他の準備をしていた板井はいつの間にか傍にいてそんなことを言う。
「マメな板井だから簡単なんだろ?」
と塩田は肩を竦める。
「さて、遅くならないうちに本題に入ろう」
ダイニングテーブルにガスコンロの準備がなされていることを確認した皇は鍋掴みに手を差し入れると、塩田をテーブルに促して。
鍋をつつきながらビールに手を伸ばす板井。
塩田は小茄子の塩漬けを口に含むと、ビールグラスをテーブルに置いた皇に視線を移す。
「残念ながら黒岩から話を聞く時間は取れなかったんだが、板井の方が結構確信に迫った話を聞いてくれたよ」
「俺の方は社長室長から」
と板井。
二人が集めてくれた情報を総合するとこうだ。
十七年前、唯野修二は元会長の罠に嵌った。元会長は現社長の実父。
唯野との事件が元で会長の座を解任されている。
その罠というのが『受付嬢との不祥事』というものだ。
飲み会で酔った唯野は受付嬢に付き添われタクシーで帰宅するはずだったが、ホテルに連れ込まれた。後日、既成事実を突きつけられ、婚姻を承諾したという。しかし唯野には記憶がなかった。あったのは翌朝、二人で裸でベッドを共にしていたという事実のみ。
十七年前は新入社員だった唯野。問題を起こせばクビは免れないと思ってしまったのも無理はない。
元会長と結託した受付嬢の罠に嵌り、騙されて婚姻したのである。
問題は、その既成事実の方だ。
「DNA鑑定に持ち込めればこっちに分がある」
と皇。
「確実に修二の子ではないと言えるのか?」
と塩田。
もし鑑定でやはり修二の子だったとなれば妻に分がある。
「確信はしているが、証拠となると弱いな」
もう少し調べてみる必要があると板井が言う。
「元会長がらみの事件の方をもう少し探ってみては?」
「そうだな……社長にあたってみるか」
板井の提案に皇はそう言って頷いたのだった。
修二を先に帰すと、塩田は板井と皇と合流した。
「帰りはどうするって?」
板井のマンションの最寄り駅は会社から二駅の場所にある。
「修二が車で迎えに来てくれるって」
と塩田はスマホのメッセージを眺めながら。
「じゃあ、呑みながら話すか」
三人は皇の車で板井のマンション近くのスーパーへ向かっていた。
夕飯は簡単に鍋にしようということで落ち着く。
「皇はどうするんだ?」
ビールの缶を手に取った皇に塩田が問う。
「板井のところに泊めてもらうから問題ない」
「ならいいが」
板井は二人から離脱し、食材を見ている。
「今日は概要を話そうと思う。あまり長居して唯野さんに怪しまれても困るしな」
皇はそういうとビールを籠に入れ、更に水を手に取った。
板井のマンションに着くと、手際の良い二人に塩田は圧倒されるばかり。
自分も一人暮らしをしていたのに、料理の一つもできないのだなと改めて思った。
修二と付き合う前は、よく同僚の電車が泊って行ったが、彼も簡単な料理ならできる。
自分も何か作れたりした方が良いだろうか? と皇に助言を求めたが、
「唯野さんが料理できるから、良いんじゃないのか?」
と言われてしまった。
「唯野さんが求めていない以上は、そのままでいいと思うぞ」
「そっか」
少しがっかりした表情をする塩田に、
「むしろ、何でも出来る用になったら唯野さんが不安になるんじゃないのか?」
と皇。
塩田にはその意味が分かり兼ねた。
「まあ、年下の塩田には分からないとは思うけれど、年上は心配になるもんなんだよ。特に年が離れているとさ」
皇にはそんな経験があるのだろうか?
だが皇の年齢的に十も離れていたとしたら、犯罪だ。なのでたとえ話なのだろうと思う。
「若い子の方がいいんじゃないか、とかさ」
その気持ちが分からない塩田は、ただ瞬きをしただけだった。
自分は何も、修二がなんでもしてくれるから好きと言うわけではない。
不便なことは承知で一人暮らしを始めたのだから、その覚悟くらいはあるつもりだ。料理が出来なくとも、便利な時代。
美味しくはなくても電子レンジさえあれば、何とかなる。
そんな塩田を周りが甘やかしてきたのだ。
「ま、料理なんて始めてしまえば簡単だから心配することない」
他の準備をしていた板井はいつの間にか傍にいてそんなことを言う。
「マメな板井だから簡単なんだろ?」
と塩田は肩を竦める。
「さて、遅くならないうちに本題に入ろう」
ダイニングテーブルにガスコンロの準備がなされていることを確認した皇は鍋掴みに手を差し入れると、塩田をテーブルに促して。
鍋をつつきながらビールに手を伸ばす板井。
塩田は小茄子の塩漬けを口に含むと、ビールグラスをテーブルに置いた皇に視線を移す。
「残念ながら黒岩から話を聞く時間は取れなかったんだが、板井の方が結構確信に迫った話を聞いてくれたよ」
「俺の方は社長室長から」
と板井。
二人が集めてくれた情報を総合するとこうだ。
十七年前、唯野修二は元会長の罠に嵌った。元会長は現社長の実父。
唯野との事件が元で会長の座を解任されている。
その罠というのが『受付嬢との不祥事』というものだ。
飲み会で酔った唯野は受付嬢に付き添われタクシーで帰宅するはずだったが、ホテルに連れ込まれた。後日、既成事実を突きつけられ、婚姻を承諾したという。しかし唯野には記憶がなかった。あったのは翌朝、二人で裸でベッドを共にしていたという事実のみ。
十七年前は新入社員だった唯野。問題を起こせばクビは免れないと思ってしまったのも無理はない。
元会長と結託した受付嬢の罠に嵌り、騙されて婚姻したのである。
問題は、その既成事実の方だ。
「DNA鑑定に持ち込めればこっちに分がある」
と皇。
「確実に修二の子ではないと言えるのか?」
と塩田。
もし鑑定でやはり修二の子だったとなれば妻に分がある。
「確信はしているが、証拠となると弱いな」
もう少し調べてみる必要があると板井が言う。
「元会長がらみの事件の方をもう少し探ってみては?」
「そうだな……社長にあたってみるか」
板井の提案に皇はそう言って頷いたのだった。
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