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3話『皇と修二』
4 同僚へのカミングアウト【微R】
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****♡side・塩田
「ん……っ」
塩田は久しぶりに与えられた、温もりと快感に夢中になっていた。
皇に事の顛末を話した修二は、辛そうに両手を組み合わせ項垂れていた。一方、全てを聞いた皇はショックを受けていたように見える。
皇は少し一人になりたいと言って、自宅マンションに帰ってしまった。皇のことも心配ではあったが。
塩田は取り残された修二をぎゅっと抱きしめ、
『大丈夫か?』
と、問うことしかできずにいた。
顔を上げた修二は切なげに、
『皇を守りたかったんだ』
と力なく呟く。
こんな時なのに不覚にも、塩田は弱っている彼に欲情した。
修二が時々、儚げに笑みを浮かべることがある。壊れてしまいそうな彼に、塩田は強く惹かれてしまうのだ。一見、強く見える彼の繊細な部分。きっとそれが真の彼の姿なのだと思った。そしてそんな彼の姿に幾度となく欲情した。
「塩田、好きだよ」
縋り付くように耳元で囁かれる声。
「好き」
短く答えれば、ホッとした表情を浮かべる彼。
何がそんなに不安だと言うのだろう?
「奥さんともするの?」
彼を独り占めしたいと思うのは、オカシイだろうか?
「記憶にある限りでは、したことないな」
塩田は修二の返答の内容に違和感を持った。それは一体どういう意味なのだろうか。彼には高校生の娘もいるというのに。
「オカシイかな? そのうち話すよ。今はただ、感じて」
肌を優しく撫でる彼の手に、塩田は身をよじる。彼の手のひらから伝わる、大好きな人の体温に愛を感じ、夢中になっていく。
「んんっ……」
自分に覆いかぶさる彼の首に腕を絡め、抱きつけば、
「ほんと、可愛い」
と言われ、首筋に修二の舌が這う。
塩田は彼のくれる愛撫に夢中になりながらも、先日のことを思い出していた。
『何を謝ってるんだ?』
きっと薄々気づいていたのだろう。彼はとても察しの良い人だから。
自分はそう思っていた。
あんな風に傷つけるつもりじゃなかったのに。
彼こと板井は、同じ課の同僚であり同期でもある。自分が所属する苦情係は自分たちが入社した年に新しく設立された部署。社内でも特殊な位置に属していた。たった四人の小さな課だが、どこよりも優秀な社員が揃っていると、副社長である皇から聞いたことがある。
塩田の同僚は二人。板井と電車。電車の方は明るく見た目も童顔で、優しく人懐こく、社内でも人気があった。ただ焦るとミスを連発するのが玉に瑕である。
電車とは彼が残業で終電を逃した日に家に泊めたのをきっかけに仲良くなった。
そして板井は見るからに体育会系という雰囲気の真面目で常識的な人物。察しが良く切れ者だが余計なことも言わないので、課の課長である修二に気に入られていた。我が課は人数も少ないことから、仲は良い。もっとも電車がムードメーカーとして良い雰囲気を作ってくれたからに他ならない。
『板井は課長のこと……好きだったんだろ?』
いつものように板井と屋上で休憩をしていた時のこと。いつかは言わなければならないと思ってはいた。
──俺は知ってた。板井が修二のこと好きだったこと。
知りながら、そういう関係になったんだ。
『何言ってるんだよ。課長は妻帯者だろ』
塩田が知らなかったことを彼はちゃんと知っていた。その上で、しょっちゅう社長に呼ばれる修二のことを心配していたのだ。想いを寄せながらも、自制をして。
『俺、課長とつきあってる』
『は?』
彼は眉を顰める。明らかに嫌悪を表していた。塩田は少し早まったことをしたかもしれないと思っていたのだった。
「ん……っ」
塩田は久しぶりに与えられた、温もりと快感に夢中になっていた。
皇に事の顛末を話した修二は、辛そうに両手を組み合わせ項垂れていた。一方、全てを聞いた皇はショックを受けていたように見える。
皇は少し一人になりたいと言って、自宅マンションに帰ってしまった。皇のことも心配ではあったが。
塩田は取り残された修二をぎゅっと抱きしめ、
『大丈夫か?』
と、問うことしかできずにいた。
顔を上げた修二は切なげに、
『皇を守りたかったんだ』
と力なく呟く。
こんな時なのに不覚にも、塩田は弱っている彼に欲情した。
修二が時々、儚げに笑みを浮かべることがある。壊れてしまいそうな彼に、塩田は強く惹かれてしまうのだ。一見、強く見える彼の繊細な部分。きっとそれが真の彼の姿なのだと思った。そしてそんな彼の姿に幾度となく欲情した。
「塩田、好きだよ」
縋り付くように耳元で囁かれる声。
「好き」
短く答えれば、ホッとした表情を浮かべる彼。
何がそんなに不安だと言うのだろう?
「奥さんともするの?」
彼を独り占めしたいと思うのは、オカシイだろうか?
「記憶にある限りでは、したことないな」
塩田は修二の返答の内容に違和感を持った。それは一体どういう意味なのだろうか。彼には高校生の娘もいるというのに。
「オカシイかな? そのうち話すよ。今はただ、感じて」
肌を優しく撫でる彼の手に、塩田は身をよじる。彼の手のひらから伝わる、大好きな人の体温に愛を感じ、夢中になっていく。
「んんっ……」
自分に覆いかぶさる彼の首に腕を絡め、抱きつけば、
「ほんと、可愛い」
と言われ、首筋に修二の舌が這う。
塩田は彼のくれる愛撫に夢中になりながらも、先日のことを思い出していた。
『何を謝ってるんだ?』
きっと薄々気づいていたのだろう。彼はとても察しの良い人だから。
自分はそう思っていた。
あんな風に傷つけるつもりじゃなかったのに。
彼こと板井は、同じ課の同僚であり同期でもある。自分が所属する苦情係は自分たちが入社した年に新しく設立された部署。社内でも特殊な位置に属していた。たった四人の小さな課だが、どこよりも優秀な社員が揃っていると、副社長である皇から聞いたことがある。
塩田の同僚は二人。板井と電車。電車の方は明るく見た目も童顔で、優しく人懐こく、社内でも人気があった。ただ焦るとミスを連発するのが玉に瑕である。
電車とは彼が残業で終電を逃した日に家に泊めたのをきっかけに仲良くなった。
そして板井は見るからに体育会系という雰囲気の真面目で常識的な人物。察しが良く切れ者だが余計なことも言わないので、課の課長である修二に気に入られていた。我が課は人数も少ないことから、仲は良い。もっとも電車がムードメーカーとして良い雰囲気を作ってくれたからに他ならない。
『板井は課長のこと……好きだったんだろ?』
いつものように板井と屋上で休憩をしていた時のこと。いつかは言わなければならないと思ってはいた。
──俺は知ってた。板井が修二のこと好きだったこと。
知りながら、そういう関係になったんだ。
『何言ってるんだよ。課長は妻帯者だろ』
塩田が知らなかったことを彼はちゃんと知っていた。その上で、しょっちゅう社長に呼ばれる修二のことを心配していたのだ。想いを寄せながらも、自制をして。
『俺、課長とつきあってる』
『は?』
彼は眉を顰める。明らかに嫌悪を表していた。塩田は少し早まったことをしたかもしれないと思っていたのだった。
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