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2話『誤解と嫉妬』
5 叶わなくても
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****♡Side・副社長(皇)
皇は翌朝、三人分の朝ご飯を用意すると二人分にラップし、カウンターに腰かける。まるで、家族だなと思いながら。大学時代から一人暮らしをしている皇には、家事全般はお手の物。会社では、生活感がないなどと言われているが。
───同じく一人暮らししているのに、塩田は料理をしない。
初めて夕飯を一緒に取った時は、驚いたものだ。
職場には食堂もあるし、外食産業も近場に展開されている。特にわが社、(株)原始人の近くの路地には社員の行きつけの呑み屋、”南国バナナ”という店があり昼間はランチも提供していた。人気の店である。
『え。夕飯のおかず、それ?』
一緒に寄ったスーパーで漬物だけを購入する塩田に驚いた皇は、思わずそう問いかけた。
『料理出来ないし』
塩田はどちらかと言うと、華奢だ。自分や修二のように身体を鍛えているわけでもない。
皇は着太りしやすいため、特に体形には気を配っていた。童顔でブクブクした長身など、見目が悪い。副社長としてしょっちゅう取引先の重役と会う身としては、”見目麗しい”ほうがなにかと都合も良かった。
『どんなものが好きなんだ?』
野菜コーナーに向かおうとする皇に、彼は、
『料理出来るんだ』
と尊敬の眼差しを向けて来た。
あの日のことは忘れられない。
いつも塩対応で、何にも興味がなさそうな、彼。上司だろうが、部下だろうが態度は一緒。苦情係の課長にだけ懐いているのも、皇としては面白くなかった。そんな彼が、自分に関心を向けた瞬間でもある。
───俺は、誰にも興味なさそうな塩田が、ずっと気になっていたんだ。
修二が既婚者だということを知ってから、あからさまに彼を避け始めた塩田。
自分は余計なことを言ってしまったと思いながらも、
『皇といる』
といって、自分を代わりにする彼が愛しかった。
皇には下に弟と妹がいる。皇にとても懐いていて、可愛い。しかし手負いの獣のような塩田が、懐いてくれるのは格別であった。
『食べたいもの言えよ』
初めは兄弟の世話をしている気分であったが、段々と彼に惹かれていったのだ。もちろん一度は強引に身体の関係になった仲だが。以前の好意とは、全然違う。本気で恋人になりたいと思っている。
───俺は、やはり馬鹿なのかもしれないな。
彼を手に入れるチャンスを自ら棒に振ってしまったのだから。それでも彼には幸せでいて欲しかった。初めて自分が本気になった相手だ。
「さて、仕事に行くか」
皇は茶碗を水につけると、スーツのジャケットを羽織る。今日は土曜日だというのに、接待だ。夜は社長の食事に付き合わねばならない。塩田を奪いたいと思いながら、二人きりにしなければならない自分に、自嘲気味な笑みを浮かべ。
皇は翌朝、三人分の朝ご飯を用意すると二人分にラップし、カウンターに腰かける。まるで、家族だなと思いながら。大学時代から一人暮らしをしている皇には、家事全般はお手の物。会社では、生活感がないなどと言われているが。
───同じく一人暮らししているのに、塩田は料理をしない。
初めて夕飯を一緒に取った時は、驚いたものだ。
職場には食堂もあるし、外食産業も近場に展開されている。特にわが社、(株)原始人の近くの路地には社員の行きつけの呑み屋、”南国バナナ”という店があり昼間はランチも提供していた。人気の店である。
『え。夕飯のおかず、それ?』
一緒に寄ったスーパーで漬物だけを購入する塩田に驚いた皇は、思わずそう問いかけた。
『料理出来ないし』
塩田はどちらかと言うと、華奢だ。自分や修二のように身体を鍛えているわけでもない。
皇は着太りしやすいため、特に体形には気を配っていた。童顔でブクブクした長身など、見目が悪い。副社長としてしょっちゅう取引先の重役と会う身としては、”見目麗しい”ほうがなにかと都合も良かった。
『どんなものが好きなんだ?』
野菜コーナーに向かおうとする皇に、彼は、
『料理出来るんだ』
と尊敬の眼差しを向けて来た。
あの日のことは忘れられない。
いつも塩対応で、何にも興味がなさそうな、彼。上司だろうが、部下だろうが態度は一緒。苦情係の課長にだけ懐いているのも、皇としては面白くなかった。そんな彼が、自分に関心を向けた瞬間でもある。
───俺は、誰にも興味なさそうな塩田が、ずっと気になっていたんだ。
修二が既婚者だということを知ってから、あからさまに彼を避け始めた塩田。
自分は余計なことを言ってしまったと思いながらも、
『皇といる』
といって、自分を代わりにする彼が愛しかった。
皇には下に弟と妹がいる。皇にとても懐いていて、可愛い。しかし手負いの獣のような塩田が、懐いてくれるのは格別であった。
『食べたいもの言えよ』
初めは兄弟の世話をしている気分であったが、段々と彼に惹かれていったのだ。もちろん一度は強引に身体の関係になった仲だが。以前の好意とは、全然違う。本気で恋人になりたいと思っている。
───俺は、やはり馬鹿なのかもしれないな。
彼を手に入れるチャンスを自ら棒に振ってしまったのだから。それでも彼には幸せでいて欲しかった。初めて自分が本気になった相手だ。
「さて、仕事に行くか」
皇は茶碗を水につけると、スーツのジャケットを羽織る。今日は土曜日だというのに、接待だ。夜は社長の食事に付き合わねばならない。塩田を奪いたいと思いながら、二人きりにしなければならない自分に、自嘲気味な笑みを浮かべ。
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