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3話『皇と修二』
3 火急の連絡
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****♡Side・課長(唯野 修二)
ベッドに腰かけていると、無言で隣に塩田が座る。修二は膝を抱える彼の髪を、サラリと撫でた。
「今日もしないのか?」
そんな風に求められると、逆に困る。触れたいのは山々だ。なのに何故、こんな気持ちになるのだろう。自分はもっと責められたかったのかも知れない。
「塩田はしたい?」
バカだな自分は、と思った。なんでこんなことを聞いてしまうのだろう。彼に好かれているという事を、確かめようとしてしまうのか。塩田はじっと修二を見つめる。そして、
「当たり前だろ」
と一言。
気がつけば、彼を衝動的に押し倒していた。
「好きだよ」
誰よりも。修二はその気になって、口づけようとしたが、胸ポケットに入れていたスマホが鳴る。
───何故、こんな時に。くッ!
修二は、心の中で肩を落としつつ、胸ポケットのスマホを取り出した。そんな修二に、ちゅっと口づける、塩田。
「ちょ……」
動揺しつつも、スマホを耳に充てると相手は皇だった。
『今、大丈夫?』
彼の気落ちした声。修二はなんだか嫌な予感がした。
「なにかあったのか?」
ベッドから降りると窓際へ。塩田にはきっと聞かれたくない話だろう。
『社長につき合おうと言われた』
「は?」
───なんでそうなったんだ? そうならないように、努力してきたはずなのに。
「まさか、承諾したわけじゃないよな?」
『え?』
焦って声を荒げた修二に、むぎゅっと後ろから抱きつく塩田。まるで、落ち着けとでも言うように。
「ダメだぞ、皇」
『でも、唯野さんが社長からパワハラされてるのは、俺のせいなんでしょ?』
「そんなんじゃない」
皇を守るために努力してきた。少なくとも、そのつもりだ。もしここで彼が社長のいいなりになってしまったら。今までしてきたことは、全て無駄になる。それに社長は、一度手にしたものを手放したりはしないはずだ。一生、皇は社長の好きにされることになる。飽きるまで。
───そんなことさせられない。そんなこと、俺は望んでない。
「頼むから……承諾なんてするな」
『社長は俺が受ければもう、唯野さんには何もしないと誓った』
「やめろ」
震える声で止める。そんなこと、やめさせなければいけない。
『唯野さん、なんで…』
「全部話すから。早まったことしないでくれ」
祈るような気持ちで彼に懇願した。もう自分と社長の間に、何があったのか話すべき時が来たのだと思う。皇は理由も知らずに納得はしないであろう。
「話すから、ちゃんと。まずは帰って来い」
『わかった』
通話を切ると、塩田が不安そうにこちらを見ていた。修二はそんな彼をぎゅっと、抱きしめたのだった。
ベッドに腰かけていると、無言で隣に塩田が座る。修二は膝を抱える彼の髪を、サラリと撫でた。
「今日もしないのか?」
そんな風に求められると、逆に困る。触れたいのは山々だ。なのに何故、こんな気持ちになるのだろう。自分はもっと責められたかったのかも知れない。
「塩田はしたい?」
バカだな自分は、と思った。なんでこんなことを聞いてしまうのだろう。彼に好かれているという事を、確かめようとしてしまうのか。塩田はじっと修二を見つめる。そして、
「当たり前だろ」
と一言。
気がつけば、彼を衝動的に押し倒していた。
「好きだよ」
誰よりも。修二はその気になって、口づけようとしたが、胸ポケットに入れていたスマホが鳴る。
───何故、こんな時に。くッ!
修二は、心の中で肩を落としつつ、胸ポケットのスマホを取り出した。そんな修二に、ちゅっと口づける、塩田。
「ちょ……」
動揺しつつも、スマホを耳に充てると相手は皇だった。
『今、大丈夫?』
彼の気落ちした声。修二はなんだか嫌な予感がした。
「なにかあったのか?」
ベッドから降りると窓際へ。塩田にはきっと聞かれたくない話だろう。
『社長につき合おうと言われた』
「は?」
───なんでそうなったんだ? そうならないように、努力してきたはずなのに。
「まさか、承諾したわけじゃないよな?」
『え?』
焦って声を荒げた修二に、むぎゅっと後ろから抱きつく塩田。まるで、落ち着けとでも言うように。
「ダメだぞ、皇」
『でも、唯野さんが社長からパワハラされてるのは、俺のせいなんでしょ?』
「そんなんじゃない」
皇を守るために努力してきた。少なくとも、そのつもりだ。もしここで彼が社長のいいなりになってしまったら。今までしてきたことは、全て無駄になる。それに社長は、一度手にしたものを手放したりはしないはずだ。一生、皇は社長の好きにされることになる。飽きるまで。
───そんなことさせられない。そんなこと、俺は望んでない。
「頼むから……承諾なんてするな」
『社長は俺が受ければもう、唯野さんには何もしないと誓った』
「やめろ」
震える声で止める。そんなこと、やめさせなければいけない。
『唯野さん、なんで…』
「全部話すから。早まったことしないでくれ」
祈るような気持ちで彼に懇願した。もう自分と社長の間に、何があったのか話すべき時が来たのだと思う。皇は理由も知らずに納得はしないであろう。
「話すから、ちゃんと。まずは帰って来い」
『わかった』
通話を切ると、塩田が不安そうにこちらを見ていた。修二はそんな彼をぎゅっと、抱きしめたのだった。
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