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3話『皇と修二』

2 真実を知った副社長

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****♡Side・副社長(皇)

「またパワハラですか?」
 夜、待ち合わせの場所に着いた皇は、社長を見るなり開口一番にそう言葉を漏らした。
「なんのことだね、皇くん」
「唯野課長のことです」
 我慢には限界というものがある。休日にわざわざ呼びつけ、叱りつけるなど許してはおけなかった。自分は副社長。彼に意見出来る者がいない以上、自分が言うべきではないだろうか。
「まあ、ゆっくり話そうじゃないか」
 彼は余裕の笑みを浮かべると、皇を促し店の中へ。社長の行きつけの店で、個室を予約してある。

「で?」
と席に着くと手を拭き両手の指先を合わせ、その指先に顎を乗せる社長。
 皇は、その社長の態度を腹ただしく思った。
「真面目に聞いてください。なんの恨みがあって、唯野課長にそんな事ばかりするんです?」
 すると彼は、とても意外そうな顔をして、
「恨みなんかないよ」
と、答える。
 なんの恨みもないのに嫌がらせばかりするなんてイカレている、と感じた。そんな無意味なことをして、何になると言うのだろうか?
「唯野課長があなたに従うのは、単に社長だから。逆らえないからです。もう、こんなこと辞めて欲しい」
 心からの言葉だった。しかし次の返事を聞いて、皇は驚愕する。

「唯野くんは、僕が社長だから逆らわないんじゃない。君を守りたいからだ」
 社長は急に真面目な顔をして、じっと皇を見つめた。
「はい?」
 言われている意味が分からない。
「君を僕から守りたいから」

───唯野さんがパワハラされているのは、俺のせい?

 一体どういうことなのかと、逡巡する。仕事で重大なミスをした覚えはない。庇われるようなことはしていないはずだ。考えても言われている意味が分からない。何か、弱みでも握られていただろうか。
「本当にわからないの?」
と、社長。
 分かるはずなどない。思い当たることがないのだから。
「皇くん」
「何でしょうか」
 皇は抑揚のない声で返事をする。自分のせいで、尊敬する先輩がパワハラを受けていることが、とてもショックだった。しかも、理由が分からないなんて。唯野に、なんと謝罪すればいいのだろうか。
「僕と、お付き合いをしないかね?」
「は?」
 こんな時に、何をフザケタことを言っているのかと思った。
「僕ね、君のことが好きなんだよ。本気で。考えてくれないかな」
「……交換条件でも出したおつもりですか?」
「そうだね。君が考えてくれるなら、唯野くんには今後一切、何もしないと誓うよ」
但し、と彼は続ける。
「彼は、なんと言うだろうね」
と意味深な言葉を付け加えて。
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