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2話『誤解と嫉妬』
9 耐える理由
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****♡Side・課長(修二)
「皇くんが塩田君の家に入り浸っているそうだが」
休日だというのに、社長直々の呼び出しがあった。そこで社長の皇への執着が、どんな種類のものかに気づく。今までは単純に、右腕としても優秀な皇を傍に置きたいからだと思っていた。
───家庭を大事にしている人だと思っていたが、とんだ狸だ。
皇と肉体関係を結んだのは主従関係であり支配によるものと考えていた、修二。古くは日本にも存在していたもの。
しかしそれが、ただの恋慕だと気づき反吐が出た。
社長は本気なのだ、皇に対し。自分も人のことは言えないが、十以上も年の離れた皇に対し力でねじ伏せその身体を良いようにしたのだ。その皇が、塩田にちょっかいを出していることが気に入らないらしい。
今日も午前中は仕事。夜には社長と会食だと言うのに、自宅へは帰らず塩田の家に直行。それを事前に知った社長が、修二にどういうことかと問質そうとしていた。
「塩田くんのことは、君に任せているはずだよ。皇くんがいちいち面倒を見る必要はないんじゃないのかね?」
確かに、きっかけを作ってしまったのは自分だ。酒に酔った勢いで想いを告げ、既婚者であることを黙ったまま付き合い続けた。
その結果、既婚者であることが他の人の口から知られることとなる。遊びだと勘違いされた自分は言い訳も許されず、距離を置かれた。
見兼ねた皇が、塩田の傍に居てやろうとするのは自然な流れだ。何せ皇は、塩田のことが好きなのだから。
だがらといって社長に責められる言われはない。皇が社長の愛人でこうなっているならまだしも、皇が好きなのは塩田なのだから。それでも修二は頭を下げるしかなかった。社長が恋慕の念を持ち皇を傍に置こうとしている以上、少しでも刺激すれば皇が犠牲になるだろう。
彼が社長に良いようにされたあの時とは、明らかに状況が違う。あの頃はまだ、塩田に出逢ってすらいなかった。恋を知らず、肉体関係を結ぶ意味も知らなかったあの頃とは。成り行きでそうなったとはいえ、皇は塩田と一度そういう関係になっている。本気で好きだからこそ、その後曖昧な関係で事に及ぶことを拒否したのだ。好きでもない相手と身体の関係を持つことが、傷つくことであると知ってしまっている。
───皇をそんな風に傷つけるのは、間違っている。
どんなに恋のライバルであろうと。脅威であろうと。それは修二にとって許せないことであった。自分の為に相手を貶めても、絶対に幸せにはなれない。自分に出来ることは、逆らう事じゃない。盾になることだ。
修二はただ、社長からの理不尽な言葉に耐えるしかなかったのだった。
「皇くんが塩田君の家に入り浸っているそうだが」
休日だというのに、社長直々の呼び出しがあった。そこで社長の皇への執着が、どんな種類のものかに気づく。今までは単純に、右腕としても優秀な皇を傍に置きたいからだと思っていた。
───家庭を大事にしている人だと思っていたが、とんだ狸だ。
皇と肉体関係を結んだのは主従関係であり支配によるものと考えていた、修二。古くは日本にも存在していたもの。
しかしそれが、ただの恋慕だと気づき反吐が出た。
社長は本気なのだ、皇に対し。自分も人のことは言えないが、十以上も年の離れた皇に対し力でねじ伏せその身体を良いようにしたのだ。その皇が、塩田にちょっかいを出していることが気に入らないらしい。
今日も午前中は仕事。夜には社長と会食だと言うのに、自宅へは帰らず塩田の家に直行。それを事前に知った社長が、修二にどういうことかと問質そうとしていた。
「塩田くんのことは、君に任せているはずだよ。皇くんがいちいち面倒を見る必要はないんじゃないのかね?」
確かに、きっかけを作ってしまったのは自分だ。酒に酔った勢いで想いを告げ、既婚者であることを黙ったまま付き合い続けた。
その結果、既婚者であることが他の人の口から知られることとなる。遊びだと勘違いされた自分は言い訳も許されず、距離を置かれた。
見兼ねた皇が、塩田の傍に居てやろうとするのは自然な流れだ。何せ皇は、塩田のことが好きなのだから。
だがらといって社長に責められる言われはない。皇が社長の愛人でこうなっているならまだしも、皇が好きなのは塩田なのだから。それでも修二は頭を下げるしかなかった。社長が恋慕の念を持ち皇を傍に置こうとしている以上、少しでも刺激すれば皇が犠牲になるだろう。
彼が社長に良いようにされたあの時とは、明らかに状況が違う。あの頃はまだ、塩田に出逢ってすらいなかった。恋を知らず、肉体関係を結ぶ意味も知らなかったあの頃とは。成り行きでそうなったとはいえ、皇は塩田と一度そういう関係になっている。本気で好きだからこそ、その後曖昧な関係で事に及ぶことを拒否したのだ。好きでもない相手と身体の関係を持つことが、傷つくことであると知ってしまっている。
───皇をそんな風に傷つけるのは、間違っている。
どんなに恋のライバルであろうと。脅威であろうと。それは修二にとって許せないことであった。自分の為に相手を貶めても、絶対に幸せにはなれない。自分に出来ることは、逆らう事じゃない。盾になることだ。
修二はただ、社長からの理不尽な言葉に耐えるしかなかったのだった。
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