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2話『誤解と嫉妬』
8 愛しい彼
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****♡Side・副社長(皇)
「何か買って行ってやるか」
仕事は午前中のみ。夜は社長に付き合わなければならない。その為、塩田の家からはあるいて五分だが車で来ている。帰りに総菜屋に寄り、彼のことを思いながら数点購入した。もしかしたら昼は済ませているかもしれない。
「ただいま」
といって塩田の家に戻ると、彼は玄関に座り込んでいた。
「どうした?課長は」
「職場」
彼は寂しそうに膝を抱えて。
「何か、あったのか?」
皇の問いに、彼は首を横に振る。分からないと言うように。
「とりあえず、飯食えよ。総菜買ってきたから」
彼の腕を掴み、ぐいっと引っ張る。体勢を崩した彼が胸に飛び込む形となった。
たった一度の情事を思い出す。恋人同士になれたなら、どんなに幸せだろう。いつだって側にいて、甘やかしてやるのに。
「塩田」
キスをしたいと思った。キスは不貞行為にはあたらない。自分だって彼のことが好きなのだ。それくらいは許されてもいいのではないか、と。
「いいだろ?」
顔を近づけながら、問う。彼はじっと皇を見つめていたが、静かに瞳を閉じた。ちゅっと軽くくちづける。まるで、母と赤子のように。ダイニングまでいくと総菜を皿に盛り付け、向かい側に座る。大人しく食事をしているものの、寂し気だ。
───きっと、今日はずっと一緒に居られると思ったんだろうな。可愛そうに。
彼はあまり感情を表にださない。抱いてもらえなかった上に一人にされるのは、寂しくて堪らないだろう。こんな時、一緒にいても笑顔にしてやれないことが悔しかった。自分は修二の代わりにすらなれない、と言われているようで。しかし何のために会社に行ったのだろうか。
───ん? まさか…。
そこで、社長が誰かに電話をかけていたことを思い出す。休みの日に呼びつけるのはパワハラだといったはずだが。
また社長は、自分の言葉を無視したのだろうか。社長の修二への態度は尋常ではない。相当な恨みを感じる。しかしながら、クビにしたいというわけでもなさそうだ。
『彼以外に、誰が塩田くんを面倒見れるの』
社長はどうしても、塩田を会社に引き留めて置きたいようだった。たしかに苦情係が出来てから、悪質クレーマーは減っている。しかも塩田は悪質クレーマーに好かれているのだ。少し相手をしてもらって満足する輩が多いほどに。
彼のクレーマーの対応は斬新で、まるで知恵比べをして居るような気分になるのだろう、と皇は思っていた。こう言ったなら、どう返ってるのだろうか、と。予想外の返答に笑ってしまう相手もいるようだった。
「何か買って行ってやるか」
仕事は午前中のみ。夜は社長に付き合わなければならない。その為、塩田の家からはあるいて五分だが車で来ている。帰りに総菜屋に寄り、彼のことを思いながら数点購入した。もしかしたら昼は済ませているかもしれない。
「ただいま」
といって塩田の家に戻ると、彼は玄関に座り込んでいた。
「どうした?課長は」
「職場」
彼は寂しそうに膝を抱えて。
「何か、あったのか?」
皇の問いに、彼は首を横に振る。分からないと言うように。
「とりあえず、飯食えよ。総菜買ってきたから」
彼の腕を掴み、ぐいっと引っ張る。体勢を崩した彼が胸に飛び込む形となった。
たった一度の情事を思い出す。恋人同士になれたなら、どんなに幸せだろう。いつだって側にいて、甘やかしてやるのに。
「塩田」
キスをしたいと思った。キスは不貞行為にはあたらない。自分だって彼のことが好きなのだ。それくらいは許されてもいいのではないか、と。
「いいだろ?」
顔を近づけながら、問う。彼はじっと皇を見つめていたが、静かに瞳を閉じた。ちゅっと軽くくちづける。まるで、母と赤子のように。ダイニングまでいくと総菜を皿に盛り付け、向かい側に座る。大人しく食事をしているものの、寂し気だ。
───きっと、今日はずっと一緒に居られると思ったんだろうな。可愛そうに。
彼はあまり感情を表にださない。抱いてもらえなかった上に一人にされるのは、寂しくて堪らないだろう。こんな時、一緒にいても笑顔にしてやれないことが悔しかった。自分は修二の代わりにすらなれない、と言われているようで。しかし何のために会社に行ったのだろうか。
───ん? まさか…。
そこで、社長が誰かに電話をかけていたことを思い出す。休みの日に呼びつけるのはパワハラだといったはずだが。
また社長は、自分の言葉を無視したのだろうか。社長の修二への態度は尋常ではない。相当な恨みを感じる。しかしながら、クビにしたいというわけでもなさそうだ。
『彼以外に、誰が塩田くんを面倒見れるの』
社長はどうしても、塩田を会社に引き留めて置きたいようだった。たしかに苦情係が出来てから、悪質クレーマーは減っている。しかも塩田は悪質クレーマーに好かれているのだ。少し相手をしてもらって満足する輩が多いほどに。
彼のクレーマーの対応は斬新で、まるで知恵比べをして居るような気分になるのだろう、と皇は思っていた。こう言ったなら、どう返ってるのだろうか、と。予想外の返答に笑ってしまう相手もいるようだった。
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