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2話『誤解と嫉妬』
6 無力な自分
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****♡Side・課長(修二)
修二は目を覚ますと、塩田の髪をサラリと撫でた。
つるりとした肌。修二は、以前塩田が言っていたことを思い出す。
『髭そるの面倒だから、永久脱毛にしたんだ』
と。
なんだか、塩田らしいと思い笑ってしまった。ベッドから降り、ダイニングへ。掛け時計を見上げると午前六時であった。カウンターの上には、二人分の朝ご飯が用意されており、皇はマメだなと思う。まだ早い時間だというのに、もう出かけたようだ。
彼は本当に優秀な男だ。修二は歯を磨くために洗面所へ向かった。三本の歯ブラシを見て、まるで家族だなと感じ、クスッと笑ってしまう。
歯を磨きながら、
『なんで、あんなに社長に目の敵にされてるんだよ』
と皇に問われたことを思い出す。
理由は簡単だ、皇が自分を庇うから。ただそれだけ。彼は知らない、社長がどんな目で皇をみているのかを。
修二は心の中でため息をついた。
───お前が原因だなんて、言えるわけないだろ。
営業部時代、皇は同じ営業部の先輩たちから嫌がらせを受けている。確かに彼は優秀ではあったが、態度が尊大だったからだ。しかし社長は、皇をとても気に入っていた。その事が嫌がらせに拍車をかけたと言っても過言ではない。
だがそれは、自分と現在の総括にとっては関係のないことである。自分たちは営業成績が良く、周りのことなどまったく気にしていなかった。
そんな中、自販機の前で先輩からイジメに合っている皇に遭遇する。
きっととてもプライドが高いのであろう。彼は相手を睨みつけていた。
『やめろ。みっともないと思わないのか?』
先に声をかけたのは現総括だった。彼は正義感が強く、統率力もある。総括となった今では、本領を発揮しているとも言えた。
『こいつが生意気なのがいけないんだ』
先輩といっても、自分たちからしたら遥か年下だ。
『社会に出たら、年齢じゃない。実力がモノを言うんだ。皇はお前らと違って努力している。見習え』
先輩という立場に胡坐をかいているだけの者たちは、総括の言葉に言葉を発することが出来なかった。
この事件以降あれよあれよという間に、彼は総括にまで昇進する。この会社には、至る所に監視カメラがあった。社長はちゃんと見ている人だ。尊敬もするし、恐怖も感じる。
昇進し、営業から居なくなってしまった総括。皇が頼れるのは、修二しかいなかったのだ。社長の嫉妬は感じていた。だが皇を守ってやれるのは、自分しかいない。それでもあの事件に発展しまったのは、ある意味自分の責かも知れない。
社長は、営業で皇に恨みを抱いているものを呼び集め、皇を襲わせた。そして何食わぬ顔で彼を助けたのだ。自分に頼らせるために。
───あれが、社長の策略だと、皇は知らない。
それに気づいた修二は社長室に抗議に行った。だが、そこで社長から言われた言葉に愕然とする。
『君が悪いんじゃないか、唯野くん』
と。
自分が皇と懇意にしていたせいで、彼が傷つけられたのだ。社長は彼を助けた後、何も知らない彼を慰めるという名目で皇をレイプしたのだ。皇は単に性欲の処理をされたとしか思っていないだろう。だがあれは紛れもなく、レイプだ。
───守ってやりたいと願ったことが、こんな結果を産むなんて。
それ以来修二は、どんな理不尽な仕打ちをされても社長に逆らうことが出来なくなっていた。自分が何かすれば犠牲になるのは皇なのだと思うと、口をつぐむしかない。
───俺は、なんて無力なんだろう……。
修二は、目を閉じると、額に手をやったのだった。
修二は目を覚ますと、塩田の髪をサラリと撫でた。
つるりとした肌。修二は、以前塩田が言っていたことを思い出す。
『髭そるの面倒だから、永久脱毛にしたんだ』
と。
なんだか、塩田らしいと思い笑ってしまった。ベッドから降り、ダイニングへ。掛け時計を見上げると午前六時であった。カウンターの上には、二人分の朝ご飯が用意されており、皇はマメだなと思う。まだ早い時間だというのに、もう出かけたようだ。
彼は本当に優秀な男だ。修二は歯を磨くために洗面所へ向かった。三本の歯ブラシを見て、まるで家族だなと感じ、クスッと笑ってしまう。
歯を磨きながら、
『なんで、あんなに社長に目の敵にされてるんだよ』
と皇に問われたことを思い出す。
理由は簡単だ、皇が自分を庇うから。ただそれだけ。彼は知らない、社長がどんな目で皇をみているのかを。
修二は心の中でため息をついた。
───お前が原因だなんて、言えるわけないだろ。
営業部時代、皇は同じ営業部の先輩たちから嫌がらせを受けている。確かに彼は優秀ではあったが、態度が尊大だったからだ。しかし社長は、皇をとても気に入っていた。その事が嫌がらせに拍車をかけたと言っても過言ではない。
だがそれは、自分と現在の総括にとっては関係のないことである。自分たちは営業成績が良く、周りのことなどまったく気にしていなかった。
そんな中、自販機の前で先輩からイジメに合っている皇に遭遇する。
きっととてもプライドが高いのであろう。彼は相手を睨みつけていた。
『やめろ。みっともないと思わないのか?』
先に声をかけたのは現総括だった。彼は正義感が強く、統率力もある。総括となった今では、本領を発揮しているとも言えた。
『こいつが生意気なのがいけないんだ』
先輩といっても、自分たちからしたら遥か年下だ。
『社会に出たら、年齢じゃない。実力がモノを言うんだ。皇はお前らと違って努力している。見習え』
先輩という立場に胡坐をかいているだけの者たちは、総括の言葉に言葉を発することが出来なかった。
この事件以降あれよあれよという間に、彼は総括にまで昇進する。この会社には、至る所に監視カメラがあった。社長はちゃんと見ている人だ。尊敬もするし、恐怖も感じる。
昇進し、営業から居なくなってしまった総括。皇が頼れるのは、修二しかいなかったのだ。社長の嫉妬は感じていた。だが皇を守ってやれるのは、自分しかいない。それでもあの事件に発展しまったのは、ある意味自分の責かも知れない。
社長は、営業で皇に恨みを抱いているものを呼び集め、皇を襲わせた。そして何食わぬ顔で彼を助けたのだ。自分に頼らせるために。
───あれが、社長の策略だと、皇は知らない。
それに気づいた修二は社長室に抗議に行った。だが、そこで社長から言われた言葉に愕然とする。
『君が悪いんじゃないか、唯野くん』
と。
自分が皇と懇意にしていたせいで、彼が傷つけられたのだ。社長は彼を助けた後、何も知らない彼を慰めるという名目で皇をレイプしたのだ。皇は単に性欲の処理をされたとしか思っていないだろう。だがあれは紛れもなく、レイプだ。
───守ってやりたいと願ったことが、こんな結果を産むなんて。
それ以来修二は、どんな理不尽な仕打ちをされても社長に逆らうことが出来なくなっていた。自分が何かすれば犠牲になるのは皇なのだと思うと、口をつぐむしかない。
───俺は、なんて無力なんだろう……。
修二は、目を閉じると、額に手をやったのだった。
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