R18【同性恋愛】リーマン物語if2『万年筆が繋ぐ愛』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
11 / 48
2話『誤解と嫉妬』

1 好きなのに【微R】

しおりを挟む
****♡Side・塩田

 皇は午前を回った頃、塩田のマンションへたどり着いた。

『何か飲むか?』
と塩田が問えば、
『サンキュ』
といって彼は、塩田からスープカップを受け取る。
『好きなの、飲めよ』
 ケトルの横には籠に入ったスープの粉。
 彼はそれを不思議そうに眺めて、
『こんなの置いてたか?』
と問う。
『修二がマメなんだよ』
『修二、ねえ』
 彼は修二がマメな事よりも、塩田が彼を名前で呼ぶことの方が気になるようだ。
 カウンターに腰かけると粉を一つ開け、お湯を注ぐ。
『その割には減ってなさそうだが?』
 皇の地味な嫌味に、塩田は何も答えなかった。

 皇が明日出社だと言っていたことを、思い出す。
 早く寝かせてやらないとなと塩田はベッドルームへ向かう。乱れた寝具を直しリビングに戻ると、玄関のチャイムがなった。時刻は0時半を回っている。
 小声で話していたし、この部屋は防音だ。それでも深夜は響くのかもしれないと、塩田は玄関へ向かう。
 苦情を聞くために。
「はい」
 だが、ドアを開けて驚いた。
「修二?」
 彼は無言で塩田を玄関に押し込んだ。
 恐らくこんな深夜に外で話すと、近所迷惑になると考えたからだろう。
「どうして、ここに?」
 確か彼は、自分の呼びかけに応じなかったはずだ。

 傍にいて欲しくて電話をかけたものの、”電車の中だ”と言われてしまった。彼の家は遠い。我儘は言えないと思い、諦めたのだ。彼は皇の靴に気づくと、顔色を変えた。
「塩田」
「な……に」
「そんなに、男が欲しいのか?」
「は?」
 彼は明らかに怒っている。玄関で揉めるのは不味い。
 塩田はとっさに、玄関から一番近い部屋に彼を連れ込んだ。
「何、言ってるんだよ。修二」
 彼は部屋に入ると、塩田の手を振り払った。

「俺がダメなら、皇か?」
「なんのことを言ってる」
「俺が来られなかったから、アイツに抱いてもらったんだろ?」
「ちが……」
 彼は完全に誤解している。
 今まで仕事ですら怒らなかった彼が、怒りで震えていた。
「修二」
「抱いてやるよ。お前が二度と、他の奴とやらないように」

───何……怖い。
 なんで、そんな怒って……。

「やめ……痛ッ」
 塩田は絨毯の上に突き飛ばされた。
 カーテンの隙間から差し込む月明かりだけが、彼を照らしている。
「俺が……どんな思いで……」
「修二ッ……イヤだ……」
 押しのけようとするが、圧し掛かられてびくともしない。
「アイツは良くて、俺はダメなのか? はっ……笑わせる」
 彼の手が塩田の中心部を、撫で上げた。しばらくぶりの感触に、反応してしまっている自分がいた。
 だが、
「ここ、こんなにしてるくせに。淫乱が」
 修二の言葉に塩田は目を見開く。
 そして、彼が泣いていることに気づく。
「なんで…俺だけじゃ…ダメなんだよ…」
 暴言を吐いたのは彼なのに、誰よりも傷ついた表情をしてポロポロと涙を溢す。
「もう、こんなの……終わりにしたいよ」
 彼の苦悩。
「俺は、こんなに……塩田のことが好きなのに」
 塩田はどう返していいのか分からず、ただ彼を見つめていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~

華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。 もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。 だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。 だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。 子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。 アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ ●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。 ●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。 ●Rシーンには※つけてます。

処理中です...