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2話『誤解と嫉妬』
1 好きなのに【微R】
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****♡Side・塩田
皇は午前を回った頃、塩田のマンションへたどり着いた。
『何か飲むか?』
と塩田が問えば、
『サンキュ』
といって彼は、塩田からスープカップを受け取る。
『好きなの、飲めよ』
ケトルの横には籠に入ったスープの粉。
彼はそれを不思議そうに眺めて、
『こんなの置いてたか?』
と問う。
『修二がマメなんだよ』
『修二、ねえ』
彼は修二がマメな事よりも、塩田が彼を名前で呼ぶことの方が気になるようだ。
カウンターに腰かけると粉を一つ開け、お湯を注ぐ。
『その割には減ってなさそうだが?』
皇の地味な嫌味に、塩田は何も答えなかった。
皇が明日出社だと言っていたことを、思い出す。
早く寝かせてやらないとなと塩田はベッドルームへ向かう。乱れた寝具を直しリビングに戻ると、玄関のチャイムがなった。時刻は0時半を回っている。
小声で話していたし、この部屋は防音だ。それでも深夜は響くのかもしれないと、塩田は玄関へ向かう。
苦情を聞くために。
「はい」
だが、ドアを開けて驚いた。
「修二?」
彼は無言で塩田を玄関に押し込んだ。
恐らくこんな深夜に外で話すと、近所迷惑になると考えたからだろう。
「どうして、ここに?」
確か彼は、自分の呼びかけに応じなかったはずだ。
傍にいて欲しくて電話をかけたものの、”電車の中だ”と言われてしまった。彼の家は遠い。我儘は言えないと思い、諦めたのだ。彼は皇の靴に気づくと、顔色を変えた。
「塩田」
「な……に」
「そんなに、男が欲しいのか?」
「は?」
彼は明らかに怒っている。玄関で揉めるのは不味い。
塩田はとっさに、玄関から一番近い部屋に彼を連れ込んだ。
「何、言ってるんだよ。修二」
彼は部屋に入ると、塩田の手を振り払った。
「俺がダメなら、皇か?」
「なんのことを言ってる」
「俺が来られなかったから、アイツに抱いてもらったんだろ?」
「ちが……」
彼は完全に誤解している。
今まで仕事ですら怒らなかった彼が、怒りで震えていた。
「修二」
「抱いてやるよ。お前が二度と、他の奴とやらないように」
───何……怖い。
なんで、そんな怒って……。
「やめ……痛ッ」
塩田は絨毯の上に突き飛ばされた。
カーテンの隙間から差し込む月明かりだけが、彼を照らしている。
「俺が……どんな思いで……」
「修二ッ……イヤだ……」
押しのけようとするが、圧し掛かられてびくともしない。
「アイツは良くて、俺はダメなのか? はっ……笑わせる」
彼の手が塩田の中心部を、撫で上げた。しばらくぶりの感触に、反応してしまっている自分がいた。
だが、
「ここ、こんなにしてるくせに。淫乱が」
修二の言葉に塩田は目を見開く。
そして、彼が泣いていることに気づく。
「なんで…俺だけじゃ…ダメなんだよ…」
暴言を吐いたのは彼なのに、誰よりも傷ついた表情をしてポロポロと涙を溢す。
「もう、こんなの……終わりにしたいよ」
彼の苦悩。
「俺は、こんなに……塩田のことが好きなのに」
塩田はどう返していいのか分からず、ただ彼を見つめていたのだった。
皇は午前を回った頃、塩田のマンションへたどり着いた。
『何か飲むか?』
と塩田が問えば、
『サンキュ』
といって彼は、塩田からスープカップを受け取る。
『好きなの、飲めよ』
ケトルの横には籠に入ったスープの粉。
彼はそれを不思議そうに眺めて、
『こんなの置いてたか?』
と問う。
『修二がマメなんだよ』
『修二、ねえ』
彼は修二がマメな事よりも、塩田が彼を名前で呼ぶことの方が気になるようだ。
カウンターに腰かけると粉を一つ開け、お湯を注ぐ。
『その割には減ってなさそうだが?』
皇の地味な嫌味に、塩田は何も答えなかった。
皇が明日出社だと言っていたことを、思い出す。
早く寝かせてやらないとなと塩田はベッドルームへ向かう。乱れた寝具を直しリビングに戻ると、玄関のチャイムがなった。時刻は0時半を回っている。
小声で話していたし、この部屋は防音だ。それでも深夜は響くのかもしれないと、塩田は玄関へ向かう。
苦情を聞くために。
「はい」
だが、ドアを開けて驚いた。
「修二?」
彼は無言で塩田を玄関に押し込んだ。
恐らくこんな深夜に外で話すと、近所迷惑になると考えたからだろう。
「どうして、ここに?」
確か彼は、自分の呼びかけに応じなかったはずだ。
傍にいて欲しくて電話をかけたものの、”電車の中だ”と言われてしまった。彼の家は遠い。我儘は言えないと思い、諦めたのだ。彼は皇の靴に気づくと、顔色を変えた。
「塩田」
「な……に」
「そんなに、男が欲しいのか?」
「は?」
彼は明らかに怒っている。玄関で揉めるのは不味い。
塩田はとっさに、玄関から一番近い部屋に彼を連れ込んだ。
「何、言ってるんだよ。修二」
彼は部屋に入ると、塩田の手を振り払った。
「俺がダメなら、皇か?」
「なんのことを言ってる」
「俺が来られなかったから、アイツに抱いてもらったんだろ?」
「ちが……」
彼は完全に誤解している。
今まで仕事ですら怒らなかった彼が、怒りで震えていた。
「修二」
「抱いてやるよ。お前が二度と、他の奴とやらないように」
───何……怖い。
なんで、そんな怒って……。
「やめ……痛ッ」
塩田は絨毯の上に突き飛ばされた。
カーテンの隙間から差し込む月明かりだけが、彼を照らしている。
「俺が……どんな思いで……」
「修二ッ……イヤだ……」
押しのけようとするが、圧し掛かられてびくともしない。
「アイツは良くて、俺はダメなのか? はっ……笑わせる」
彼の手が塩田の中心部を、撫で上げた。しばらくぶりの感触に、反応してしまっている自分がいた。
だが、
「ここ、こんなにしてるくせに。淫乱が」
修二の言葉に塩田は目を見開く。
そして、彼が泣いていることに気づく。
「なんで…俺だけじゃ…ダメなんだよ…」
暴言を吐いたのは彼なのに、誰よりも傷ついた表情をしてポロポロと涙を溢す。
「もう、こんなの……終わりにしたいよ」
彼の苦悩。
「俺は、こんなに……塩田のことが好きなのに」
塩田はどう返していいのか分からず、ただ彼を見つめていたのだった。
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