R18【同性恋愛】リーマン物語if2『万年筆が繋ぐ愛』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
7 / 48
1話『出会い』

1 彼に惹かれた日

しおりを挟む
****♡Side・課長(唯野 修二)

『移動?』

 あれは塩田たちが入社したばかりの頃のことだ。
 (株)原始人には、もともとお客様センターというモノがある。苦情係はあとから悪質なクレーマー対策室として、設立された部署なのだ。
 元営業にいた自分は、何故か社長から直々に課長として抜擢され、配属されたのだった。
 今ならその理由を想像することはできるが、当時は理解できずにいた。何故なら自分はその時既に、商品部に居たからである。その商品部の隣に苦情係は作られたのだ。

 苦情係は塩田の為にあると言っても過言じゃない。
 そこまでして、社長が塩田ここに置きたい理由は分からないが。社長は塩田を特別扱いしてはいるが、特別な関係には見えない。社長は既婚者で、自分とは違い家族第一に見えた。
 営業で自分と一位、二位を争っていた同期の奴は、あれよあれよという間に、総括に昇進。
 それに対し自分は、商品部を始めとする色んな部署を、転々とさせられた。
 
 苦情係の課長に抜擢させられた時、副社長の皇には、
『こんなのパワハラだろ?! 各部署を転々とさせられた挙句、新しく作られた部署で、未経験の部下は新入社員だぞ?!』
と自分よりも、憤りを感じていたようである。
 しかし自分には、養わなければならない家族がいる。こと娘においては、これから大学が控えていた。
 給料などの待遇は部長と同等という。苦情係には自分より上がいない。状況に応じては特別手当も出すと、社長は言った。後に引けるわけなどない。

『そうかもしれないが、社長の適性を見抜く目は確かだよ』
 自分の後輩であった皇は、ものの一年もしないうちに、副社長となった。彼のお陰で取引先も増えたという。
 陰では贔屓などという者もいるが、彼の適性を見抜いたのはまぎれもなく社長だ。
『自分だってその口だろ』
『だけど!』
皇にはどうしても、納得がいかなかったらしい。しかし今となっては、色んな部署を転々とさせられた意味も分かっている。社長が自分に対し見抜いた適正は、人当たりの良さと社交性。そして人望だ。色んな部署で仲良くなった奴らから、たった四人で結成された苦情係は支えられている。


あの日、
『大変だな』
と、たまたま帰りが一緒になった塩田は、移動の経緯を聞いてそう言った。
 入社当時から、上司対してにタメ口というとんでもない奴だったが、不思議と嫌な感じはしなかった。
『まあ、でも一応昇進だしな』
と修二が笑うと、
『おめでとう』
と彼は祝いの言葉をくれた。
 それがとても意外だった。
『同期の奴はエリートコースまっしぐらで、今や総括だけどな』
と肩を竦めると彼は、通りかかった文具店を親指で差し、
『付き合って欲しいんだが』
と修二の返事も聞かずに、中へ。

───俺はあの日からきっと…。

『これ、お祝い』
 上司を私用につき合わせるなんて、と思って待っていたら、彼は綺麗に包装されたスリムな長方形の箱型のものを、こちらに差し出してきた。
『どんな差があろうとも、昇進は昇進だろ?』
年下で、目上に対する言葉遣いもなってない部下だと思っていたが、彼は彼なりに気遣いのできる人物だと感じた。
『ありがと。開けて良い?』
『ここでか? 家で開けろよ』
と彼は眉を寄せる。
 確かに、店頭でプレゼントを開けるのもどうかしている。仕方なく帰宅後、書斎で包みを開けると中にはセンスの良い万年筆が。
 
 それは、自分にとって宝物となった。

 修二は自宅書斎の机に寄り掛かると、胸ポケットから万年筆を取り出す。赤黒い色の重厚なもの。間接照明の中で、煌めく。
「塩田……」
 自分は、どこから間違っていたのだろう。
 うちは夫婦別性。娘は妻の苗字を名乗っている。
 いつまでも独身気分が抜けず、孤独すら感じてしまうのはそのせいなのだろうか。

───そんなの言い訳だな。

 修二は、再びため息をついたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL短編まとめ(甘い話多め)

白井由貴
BL
BLの短編詰め合わせです。 主に10000文字前後のお話が多いです。 性的描写がないものもあればがっつりあるものもあります。 性的描写のある話につきましては、各話「あらすじ」をご覧ください。 (※性的描写のないものは各話上部に書いています) もしかすると続きを書くお話もあるかもしれません。 その場合、あまりにも長くなってしまいそうな時は別作品として分離する可能性がありますので、その点ご留意いただければと思います。 【不定期更新】 ※性的描写を含む話には「※」がついています。 ※投稿日時が前後する場合もあります。 ※一部の話のみムーンライトノベルズ様にも掲載しています。 ■追記 R6.02.22 話が多くなってきたので、タイトル別にしました。タイトル横に「※」があるものは性的描写が含まれるお話です。(性的描写が含まれる話にもこれまで通り「※」がつきます) 誤字脱字がありましたらご報告頂けると助かります。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

短編集

田原摩耶
BL
地雷ない人向け

処理中です...