R18【同性恋愛】リーマン物語if5『塩田と板井と苦情係』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
92 / 96
12『惹かれ合って結ばれて』

9 彼の愛【R】

しおりを挟む
****side■塩田

「はあ……ッ」
「可愛い」

──可愛い?

 水音が室内に響く中、塩田は電車でんまに言われたことを心の中で反芻はんすうする。彼が愛してくれるというのなら、どんな言葉をかけられようとも嬉しいには違いないが、何を思って可愛いなどというのか未だに分からない。
「んんッ」
 ”こっちに集中して”とでも言うようにひと際深く奥まで突かれ、塩田はびくりと身体を震わせた。
 ゆっくりと彼自身が塩田を責め立てる。
 どうにかなってしまいそうだ。
「紀夫……」
 浅く何度も息をして快感をやり過ごす。
 二人で愛を感じるこの行為は相性が大切だということを知った。絶頂へのタイミングを合わせることは簡単ではない。恐らく彼が塩田の様子を見ながら合わせてくれているのだろうことは分かる。
 とは言え、相手任せにしてばかりでは呆れられてしまうだろう。
 自分にとっては彼が全て。努力くらいはしなければと思っていた。

 それなのに。
「ちょ……ッ」 
 まるで悪戯っ子のような笑みを浮かべ、彼が塩田自身を握り込む。
「んッ」
 強く上下する彼の手。こちらは必死でやり過ごそうとしているというのに、電車は余裕の笑み。
 動物には等しく性的快感というものがあるのだろう。それは子孫繫栄のために備わった感覚。それを一緒に楽しむために恋人たちは愛し合う。
 意味を成さない行為に、意味を持って。
ってもいいんだよ?」
「断る」
「強情だなあ」
 優しい瞳。細められて、柔らかい笑み。
 彼の優しい笑みに塩田は見惚れてしまう。
「でも、そんなところも好きだよ」
「んんッ」
 頬を撫でられ、そのまま口づけられる。その間も彼の手は緩むことはない。
「紀夫……一緒がいい……」
 このままではもう持たない。そう思った塩田は観念して電車にぎゅっと抱き着く。
 良いよとでも言うように、彼は塩田を抱きしめ返したのだった。

「お前、ホントズルい」
「なにが?」
 優しく塩田の髪を撫でる手が一瞬止まる。きっと何もかもが無自覚なのだろう。計算するようなヤツには見えないから。
 それでも恨み言を漏らさずにはいられなかった。
「どっちもはズルい」
「そんなこと言ったって、男はこっちが一番良いわけだから」
「触る……なッ」
 するりと敏感な部分を撫でられ塩田は腰を引く。彼はそんな塩田に目を細め、穏やかな笑みを浮かべた。一体どんなメンタルしているんだと思いつつも、再びすり寄る塩田。
「タチの特権でしょ」
「何言ってんだ、一体」
 塩田は理解不能なことを言われ眉を寄せた。

「それよりも」
 不毛なやり取りをしていても仕方ないと諦めた塩田は疑問をぶつけることにする。
「うん?」
 不思議そうに首を傾げつつ、塩田の首筋を撫でる彼。柔らかな音楽が二人を包む。
「なんであの時、視るのをやめにしたんだ?」
 何に対してなのか分からなかったのか、彼は一瞬考えるような表情をした。
 恥ずかしいわけではないが、固有名詞を出すことは躊躇われる。
「ああ、アレ」
 思い当たることがあったのか、電車はクスリと笑った。
「理由は二つあるよ」
「二つ?」
 ”そう”と肯定の意で返答をした彼。

「一つは塩田がヤキモチを妬いているのかな? と感じたから」
「ヤキモチ……」
 そんなつもりはなかったが、確かに彼が誰かの行為を見て興奮するのは嫌だなとは思った。自分以外に興味を持つ必要なんてないだろうと。
「もう一つはね」
「ん」
「塩田が誰かのオカズにされたら嫌だなと思ったから」
 ”オカズ?”と不思議そうに問い返す塩田に彼はちゅっと口づけをくれた。
「自慰の妄想に使われることだよ。ああいうところに入るということは、そういうことをするのが目的なわけだし」
「自慰?」
「いや、一人で楽しむとは限らないけれどね。性的なことをするということでしょ?」
 言葉を選びながら説明をする電車に対し、”こんな貧相な身体を見て何を妄想するんだ?”と不思議に思う塩田であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こいじまい。 -Ep.the British-

ベンジャミン・スミス
BL
貿易会社に勤務する月嶋春人は上司に片想いをしていた。 しかし、その想いは儚く散ってしまう。  いつまでも上司を忘れることが出来ない春人に「無理に忘れる必要は無い。」と、声をかけたのはイギリス人のアルバート・ミラーだった。  いつのまにか英国紳士なアルバートに惹かれていく春人は徐々に新しい恋への1歩を踏み出し始めていた。 身長差30cm、年の差18歳 おまけに相手は男で、外国人。 様々な壁にぶつかりながらも愛を育んでいく2人のオフィスラブ。 ************ 素敵な表紙はもなか様から いただきました。 ありがとうございます。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...