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12『惹かれ合って結ばれて』
8 上手に伝えられたら【微R】
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****side■塩田
「んッ……」
いつになく乗り気な電車に戸惑いつつも応えようとする塩田だったが……。
──なんでこうなったんだっけ?
約束通り、二人はゲームショップに寄った帰りにスーパーへ向かいはした。
塩田の指定した隣の駅のゲームショップは、中古商品も扱っている店。塩田が予約したゲームはもちろん新品ではあったが、問題はそこにあるわけではない。
この店の中古商品はゲームのみではなく、漫画やフィギュア、DVDやCDなど多岐に渡る。そのためゲームを買うだけではなく、ついでに映画でも漁って行こうかという話になったのだが。
『へえ、大人向けのものも扱っているんだね』
その一角だけは少し異質で、未成年の入室不可区域となっていた。
『紀夫も、こういうものに興味あるのか?』
人間とは不思議な生き物だと思う。
発情期はないが……いや、むしろ人間とは万年発情期の生き物なのかもしれないが。それはそれとして、他の生き物とは異なり他者の性行為を見て興奮する生き物である。もちろん、全ての人類がそうとは限らないが。
『どうだろう。他人がどんな風にしているのか? には興味はあるけれど』
『そうなのか』
『試しに覗いてみる? 社会勉強』
つき合う以前、しょっちゅう一緒に風呂に入っていたが何もしてこなかった彼。その経験から彼が性欲よりも理性を優先できることは知っているし、他の人間には興味なさそうに見えた。
だからこんな提案をされるとは思っていなかったし、意外に感じたのだ。
『必要か? それ』
塩田の言葉にこちらに視線を移した彼は少し驚いた顔をし、手を取った。
『映画にしようか』
『ん?』
何故あっさりやめにしたのかわからない。だが、その時何かのスイッチが入ったのだと思う。自分はそんなに変な表情をしていたのだろうか?
「紀夫……ッ」
「なに、もう我慢できないの?」
彼の指が蕾の中をしきりに出入りする。
塩田は彼の首に腕を巻き付け、ぎゅっとしがみ付いて快感をやり過ごした。
「ん……」
「可愛い」
彼が口づけをくれる。
元々無理強いするタイプではないが、あの時何故引いたのかとても気になるところではあった。
彼はとても優しい人だと思う。優しい人は気が弱いイメージがあるが、電車に対し気が弱いと感じたことはなかった。彼はいつでも塩田の意思を尊重し、気持ちを大事にしてくれている。それが誰にでもできことではないことは塩田にも分かっていた。
心の中に優しい音楽が流れる。
それはいつしか鼓動とリンクして、どれだけ彼に恋焦がれているのか自覚させるのだ。
「大好きだよ、塩田」
ほらまた、心が跳ねる。
「俺も好き。紀夫が」
自分は感情表現が下手だから、どんなに好きかをうまく伝えられない。
もどかしく思いながら、キスを強請るのだ。
身体を滑る優しく温かい手。
こんなにも自分の事を大切にしてくれている彼。
それなのに自分は皇のことを意識しすぎて、不安にさせたり悲しませたりしている。そう思うと胸がズキリと痛んだ。
「ん? どうしたの?」
太陽みたいな電車の笑顔がとても好きだ。
モテるくせに塩田以外には全く興味を示さない。
自分だけに向けられた大きな愛。
塩田は、その愛を抱きしめるように彼の背中に腕を回す。
「中、欲しい」
「え」
たくさんの言葉で伝えられたらいいのに。自分にはそれが出来ない。こんなことで精一杯なのだ。
「紀夫が欲しい」
ドキドキしなから精一杯の言葉をぶつければ、
「あー! もうっ」
と彼が急に声を上げて塩田の肩に顔を埋める。
自分は何か間違ったことを言ってしまっただろうか。
「ねえ、塩田」
「ん」
「俺だって結構我慢してるんだよ?」
「ん?」
「あんまり煽らないでよ」
「は?」
言われている意味が分からずにキョトンとしていると、不意に秘部に彼自身が宛がわれた。
「え、ちょ……まっ」
「ダメ。待たない」
悪戯っぽく笑う彼の笑顔に塩田はドキリとしたのだった。
「んッ……」
いつになく乗り気な電車に戸惑いつつも応えようとする塩田だったが……。
──なんでこうなったんだっけ?
約束通り、二人はゲームショップに寄った帰りにスーパーへ向かいはした。
塩田の指定した隣の駅のゲームショップは、中古商品も扱っている店。塩田が予約したゲームはもちろん新品ではあったが、問題はそこにあるわけではない。
この店の中古商品はゲームのみではなく、漫画やフィギュア、DVDやCDなど多岐に渡る。そのためゲームを買うだけではなく、ついでに映画でも漁って行こうかという話になったのだが。
『へえ、大人向けのものも扱っているんだね』
その一角だけは少し異質で、未成年の入室不可区域となっていた。
『紀夫も、こういうものに興味あるのか?』
人間とは不思議な生き物だと思う。
発情期はないが……いや、むしろ人間とは万年発情期の生き物なのかもしれないが。それはそれとして、他の生き物とは異なり他者の性行為を見て興奮する生き物である。もちろん、全ての人類がそうとは限らないが。
『どうだろう。他人がどんな風にしているのか? には興味はあるけれど』
『そうなのか』
『試しに覗いてみる? 社会勉強』
つき合う以前、しょっちゅう一緒に風呂に入っていたが何もしてこなかった彼。その経験から彼が性欲よりも理性を優先できることは知っているし、他の人間には興味なさそうに見えた。
だからこんな提案をされるとは思っていなかったし、意外に感じたのだ。
『必要か? それ』
塩田の言葉にこちらに視線を移した彼は少し驚いた顔をし、手を取った。
『映画にしようか』
『ん?』
何故あっさりやめにしたのかわからない。だが、その時何かのスイッチが入ったのだと思う。自分はそんなに変な表情をしていたのだろうか?
「紀夫……ッ」
「なに、もう我慢できないの?」
彼の指が蕾の中をしきりに出入りする。
塩田は彼の首に腕を巻き付け、ぎゅっとしがみ付いて快感をやり過ごした。
「ん……」
「可愛い」
彼が口づけをくれる。
元々無理強いするタイプではないが、あの時何故引いたのかとても気になるところではあった。
彼はとても優しい人だと思う。優しい人は気が弱いイメージがあるが、電車に対し気が弱いと感じたことはなかった。彼はいつでも塩田の意思を尊重し、気持ちを大事にしてくれている。それが誰にでもできことではないことは塩田にも分かっていた。
心の中に優しい音楽が流れる。
それはいつしか鼓動とリンクして、どれだけ彼に恋焦がれているのか自覚させるのだ。
「大好きだよ、塩田」
ほらまた、心が跳ねる。
「俺も好き。紀夫が」
自分は感情表現が下手だから、どんなに好きかをうまく伝えられない。
もどかしく思いながら、キスを強請るのだ。
身体を滑る優しく温かい手。
こんなにも自分の事を大切にしてくれている彼。
それなのに自分は皇のことを意識しすぎて、不安にさせたり悲しませたりしている。そう思うと胸がズキリと痛んだ。
「ん? どうしたの?」
太陽みたいな電車の笑顔がとても好きだ。
モテるくせに塩田以外には全く興味を示さない。
自分だけに向けられた大きな愛。
塩田は、その愛を抱きしめるように彼の背中に腕を回す。
「中、欲しい」
「え」
たくさんの言葉で伝えられたらいいのに。自分にはそれが出来ない。こんなことで精一杯なのだ。
「紀夫が欲しい」
ドキドキしなから精一杯の言葉をぶつければ、
「あー! もうっ」
と彼が急に声を上げて塩田の肩に顔を埋める。
自分は何か間違ったことを言ってしまっただろうか。
「ねえ、塩田」
「ん」
「俺だって結構我慢してるんだよ?」
「ん?」
「あんまり煽らないでよ」
「は?」
言われている意味が分からずにキョトンとしていると、不意に秘部に彼自身が宛がわれた。
「え、ちょ……まっ」
「ダメ。待たない」
悪戯っぽく笑う彼の笑顔に塩田はドキリとしたのだった。
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