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12『惹かれ合って結ばれて』
5 嬉しいご褒美?!【微R】
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****side■電車
電車が塩田の腕をぐいっと掴み引き上げると、
「くッ……」
苦しそうに小さくうめき声をあげ、彼がぎゅっとしがみ付いてくる。
「騎乗位は嫌?」
「や……じゃない」
震える声で否定する彼。
塩田の考えていることなんてお見通しなのにと電車は思う。
どうせまた皇のことを考えていたに違いない。
だったら考えられないくらい行為に夢中にさせればいいのだ。
「上手に動けたらご褒美あげるよ」
「ご褒美?」
「そう」
潤んだ瞳に魅了されながら、優しくその髪を撫で口づける。
彼だって好き好んで皇のことばかり考えているのではないのだろう。
その証拠に、
「紀夫……すき」
とキスの合間に愛を言葉にする。
「愛してるよ」
「ん……ッ」
奥を締め付けながら頑張って動こうとする彼が愛しい。
何をしてもしなくても、いつかはその呪縛から解き放たれるだろう。
今は自分の考えに囚われているだけなのだから。
そう思わなければ不安に押しつぶされてしまいそうになる。
皇の言うことを信じるならば、塩田は皇にとって特別で居たいだけで皇のことを特別に思っているわけじゃない。それを表現しないことが不満なだけで、反対されたいわけでも意見されたいわけでもない。そういうことなのだろう。
──特別に思われたい相手は副社長だけというわけじゃない。
わかるんだけれど、何かこう……腑に落ちないものはある。
特別に思われたいとは言っても、しつこく求愛などされたら困ることは分かっている。だからどんな反応を期待していたのかわからない。
どんな言葉をかければ塩田が満足したのか、それは電車にも皇にもわからないまま。
当の本人さえ明確な答えを持っていないのに、わかるはずがないのだ。
だから自分は静かに時が満ちるのを待つだけ。
その時はもう彼の瞳に自分以外を映させやしない。
「紀夫……そんなに押さえつけたら、動けない」
「うん?」
どうやら心に反応し無意識に彼の腰をぎゅっと抑えつけていたようである。
そんなにご褒美が欲しいのだろうかと思いながら、困った顔をしてこちらを見つめる彼を優しく抱きしめた。
勢いで言っただけなのに、そんなに楽しみにしているなら彼が最高に喜ぶご褒美を用意しないとなと電車は思う。意外と単純な彼が愛しくてたまらない。
──まあ、塩田がなにを貰ったら喜ぶかくらい想像はつくけどね。
「何、マジでこれくれんの? 紀夫は神か!」
「うん、いいよ。あげる」
「いやでも、これ激レア武器だぞ?」
それは同僚の板井と三人で固定パーティを組んでいるオンラインゲームでの話。
「ガチャで出たけど、俺の職業だと使う機会ないしね」
それは塩田が以前から欲しがっていたものだ。
電車たちのプレイしているゲームでは未使用品はトレードや出品ができるため、無課金勢には特にありがたいシステムだと思う。
武器や防具、道具については素材を集めて自分たちで作れる他にガチャでしかでないものもある。一日に無料で回せる分もあるため、二人は課金はしていない。
「なあ、さっそくインしないか? 今、期間イベントあるし」
「え。今から?」
あれだけ運動したのに元気だなと思いつつ、時計に視線を走らせる電車。
「一周だけだよ? 明日に響くし」
電車の言葉にコクコクと頷き、横にピタッとくっついて座りなおす彼。
彼は基本自分から他人に触れるようなことはしない。
つまり恋人はよっぽど特別なのだろう。
「板井来るかな?」
ソロでも遊べないことはないが、最大八人でパーティを組めるシステムのゲームである。さすがに二人ではきついだろう。
「脅せばくると思うよ」
「へ?」
「いや、こっちの話」
”なんでもないよ。俺が誘うね”と塩田に告げ、電車は板井にメッセージを送る。
一分後、板井はログインするなり、
『電車! お前汚いぞ!』
という第一声。
『何のことかな?』
もちろん電車はすっとぼけたのであった。
電車が塩田の腕をぐいっと掴み引き上げると、
「くッ……」
苦しそうに小さくうめき声をあげ、彼がぎゅっとしがみ付いてくる。
「騎乗位は嫌?」
「や……じゃない」
震える声で否定する彼。
塩田の考えていることなんてお見通しなのにと電車は思う。
どうせまた皇のことを考えていたに違いない。
だったら考えられないくらい行為に夢中にさせればいいのだ。
「上手に動けたらご褒美あげるよ」
「ご褒美?」
「そう」
潤んだ瞳に魅了されながら、優しくその髪を撫で口づける。
彼だって好き好んで皇のことばかり考えているのではないのだろう。
その証拠に、
「紀夫……すき」
とキスの合間に愛を言葉にする。
「愛してるよ」
「ん……ッ」
奥を締め付けながら頑張って動こうとする彼が愛しい。
何をしてもしなくても、いつかはその呪縛から解き放たれるだろう。
今は自分の考えに囚われているだけなのだから。
そう思わなければ不安に押しつぶされてしまいそうになる。
皇の言うことを信じるならば、塩田は皇にとって特別で居たいだけで皇のことを特別に思っているわけじゃない。それを表現しないことが不満なだけで、反対されたいわけでも意見されたいわけでもない。そういうことなのだろう。
──特別に思われたい相手は副社長だけというわけじゃない。
わかるんだけれど、何かこう……腑に落ちないものはある。
特別に思われたいとは言っても、しつこく求愛などされたら困ることは分かっている。だからどんな反応を期待していたのかわからない。
どんな言葉をかければ塩田が満足したのか、それは電車にも皇にもわからないまま。
当の本人さえ明確な答えを持っていないのに、わかるはずがないのだ。
だから自分は静かに時が満ちるのを待つだけ。
その時はもう彼の瞳に自分以外を映させやしない。
「紀夫……そんなに押さえつけたら、動けない」
「うん?」
どうやら心に反応し無意識に彼の腰をぎゅっと抑えつけていたようである。
そんなにご褒美が欲しいのだろうかと思いながら、困った顔をしてこちらを見つめる彼を優しく抱きしめた。
勢いで言っただけなのに、そんなに楽しみにしているなら彼が最高に喜ぶご褒美を用意しないとなと電車は思う。意外と単純な彼が愛しくてたまらない。
──まあ、塩田がなにを貰ったら喜ぶかくらい想像はつくけどね。
「何、マジでこれくれんの? 紀夫は神か!」
「うん、いいよ。あげる」
「いやでも、これ激レア武器だぞ?」
それは同僚の板井と三人で固定パーティを組んでいるオンラインゲームでの話。
「ガチャで出たけど、俺の職業だと使う機会ないしね」
それは塩田が以前から欲しがっていたものだ。
電車たちのプレイしているゲームでは未使用品はトレードや出品ができるため、無課金勢には特にありがたいシステムだと思う。
武器や防具、道具については素材を集めて自分たちで作れる他にガチャでしかでないものもある。一日に無料で回せる分もあるため、二人は課金はしていない。
「なあ、さっそくインしないか? 今、期間イベントあるし」
「え。今から?」
あれだけ運動したのに元気だなと思いつつ、時計に視線を走らせる電車。
「一周だけだよ? 明日に響くし」
電車の言葉にコクコクと頷き、横にピタッとくっついて座りなおす彼。
彼は基本自分から他人に触れるようなことはしない。
つまり恋人はよっぽど特別なのだろう。
「板井来るかな?」
ソロでも遊べないことはないが、最大八人でパーティを組めるシステムのゲームである。さすがに二人ではきついだろう。
「脅せばくると思うよ」
「へ?」
「いや、こっちの話」
”なんでもないよ。俺が誘うね”と塩田に告げ、電車は板井にメッセージを送る。
一分後、板井はログインするなり、
『電車! お前汚いぞ!』
という第一声。
『何のことかな?』
もちろん電車はすっとぼけたのであった。
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