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10『理解と焦燥の狭間』
5 唯野の目指す未来【微R】
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****side■唯野
「どうかしたのか?」
一緒に暮らし始めてからほとんど車だったが、今日は電車利用。
帰りの電車は一駅。スマホの画面を見つめていた恋人であり部下の板井が、チラリとこちらに視線を向けた。
問いかけは案内と共にかき消され、目的の駅についたことに気づく。
仕方なく唯野は、彼に続いて列車のホームに降りた。
どうしようか迷っていると、
「塩田たちから焼き鳥屋に行かないかと誘いが」
と板井。
最近駅の近くに出来た、炭火焼の焼き鳥屋の評判が良いらしい。
「教えたの、俺ですけどね」
と笑う板井。
「へえ。焼き鳥で生一杯。そそるね」
と唯野。
板井は商品部の者たちと仲が良く、しょっちゅう良い情報を仕入れてくる。今回も恐らく商品部の誰かから聞いたに違いない。
「行くなら車で迎えに来てくれるらしいです。泊まっていけと」
四人とも飲んだら代行を頼むしかないので、それが妥当だろう。
塩田の家は会社まで徒歩五分。悪くない提案だ。
「じゃあ明日の準備をしておかないとな」
と唯野。
板井は行く旨を伝えたようだ。
彼らの入社当時はどうなるかと思ったが、苦情係の三人の部下はとても仲が良いようだ。こんな風に交際をすることになるとは思っていなかったが。
降りた駅からほど近い、二人の愛の巣。
妻と離婚し、娘と暮らすかも知れないと思って借りた、広いマンション。そのまま一人で暮らしていたら、とても寂しかったろうと思う。
隣の板井を見上げ、微笑むとちゅっと口づけられた。
「たまにはこういうのもいいな」
と唯野。
それぞれが恋人と一緒に暮らすようになり、仕事帰りに呑みに行く回数は減った。大切な人との時間をゆっくり過ごすべきだと思ったから。
しかしたまにはこうして部署の面々と夕飯を共にするのはやはり悪くない。
たった四人の部署なのだから。
「はあッ……板井……」
迎えに来てくれるというのに、風呂場でこんなことをしているなんて。
身体を洗ってくれるという板井の手が、唯野の中心部に伸び酷く感じてしまっていた。
”今日はできないから、触るくらいいいでしょう?”と言われ、OKしてしまったのがいけなかったのか。それともできないと分かっているからこそ、反応してしまうのか。
「んッ……」
壁に両手をつき、両足を広げた唯野の蕾に彼の指が刺激を与える。挿入されたその指は内壁を撫で、唯野自身に絡まる指が上下した。
「達ってもいいんですよ?」
板井は唯野の耳元でそう囁くと耳たぶを噛んだ。
「お前は……?」
「俺は良いです。あなたの達くところが見たい」
ここでは風邪を引きますし、と付け加える彼。
”じゃあ、明日はいっぱいして”と言えば、彼が嬉しそうに微笑む。
変われば変わるものだなと唯野は思った。
以前は自慰すらしないほど性欲がなかったのだ。それが今や、少し板井に触られたくらいで、身体が疼く。
──塩田たちは結婚に向けて互いの両親に挨拶に行こうとしている。
俺もいずれはそうなりたいが、果たして板井のご両親は年の離れた恋人との婚姻を許してくれるだろうか?
週末はキャンプへ行く約束をしている。
それとなくご両親へのあいさつのことを切り出してみようと思った。現在の同棲についても、板井がどのように説明しているのか分かっていない。
話はそこからだなと思った。
この先もずっと一緒にいられたなら、どんなに幸せだろうか?
そんなことを思いながら、唯野は熱を放ったのだった。
「どうかしたのか?」
一緒に暮らし始めてからほとんど車だったが、今日は電車利用。
帰りの電車は一駅。スマホの画面を見つめていた恋人であり部下の板井が、チラリとこちらに視線を向けた。
問いかけは案内と共にかき消され、目的の駅についたことに気づく。
仕方なく唯野は、彼に続いて列車のホームに降りた。
どうしようか迷っていると、
「塩田たちから焼き鳥屋に行かないかと誘いが」
と板井。
最近駅の近くに出来た、炭火焼の焼き鳥屋の評判が良いらしい。
「教えたの、俺ですけどね」
と笑う板井。
「へえ。焼き鳥で生一杯。そそるね」
と唯野。
板井は商品部の者たちと仲が良く、しょっちゅう良い情報を仕入れてくる。今回も恐らく商品部の誰かから聞いたに違いない。
「行くなら車で迎えに来てくれるらしいです。泊まっていけと」
四人とも飲んだら代行を頼むしかないので、それが妥当だろう。
塩田の家は会社まで徒歩五分。悪くない提案だ。
「じゃあ明日の準備をしておかないとな」
と唯野。
板井は行く旨を伝えたようだ。
彼らの入社当時はどうなるかと思ったが、苦情係の三人の部下はとても仲が良いようだ。こんな風に交際をすることになるとは思っていなかったが。
降りた駅からほど近い、二人の愛の巣。
妻と離婚し、娘と暮らすかも知れないと思って借りた、広いマンション。そのまま一人で暮らしていたら、とても寂しかったろうと思う。
隣の板井を見上げ、微笑むとちゅっと口づけられた。
「たまにはこういうのもいいな」
と唯野。
それぞれが恋人と一緒に暮らすようになり、仕事帰りに呑みに行く回数は減った。大切な人との時間をゆっくり過ごすべきだと思ったから。
しかしたまにはこうして部署の面々と夕飯を共にするのはやはり悪くない。
たった四人の部署なのだから。
「はあッ……板井……」
迎えに来てくれるというのに、風呂場でこんなことをしているなんて。
身体を洗ってくれるという板井の手が、唯野の中心部に伸び酷く感じてしまっていた。
”今日はできないから、触るくらいいいでしょう?”と言われ、OKしてしまったのがいけなかったのか。それともできないと分かっているからこそ、反応してしまうのか。
「んッ……」
壁に両手をつき、両足を広げた唯野の蕾に彼の指が刺激を与える。挿入されたその指は内壁を撫で、唯野自身に絡まる指が上下した。
「達ってもいいんですよ?」
板井は唯野の耳元でそう囁くと耳たぶを噛んだ。
「お前は……?」
「俺は良いです。あなたの達くところが見たい」
ここでは風邪を引きますし、と付け加える彼。
”じゃあ、明日はいっぱいして”と言えば、彼が嬉しそうに微笑む。
変われば変わるものだなと唯野は思った。
以前は自慰すらしないほど性欲がなかったのだ。それが今や、少し板井に触られたくらいで、身体が疼く。
──塩田たちは結婚に向けて互いの両親に挨拶に行こうとしている。
俺もいずれはそうなりたいが、果たして板井のご両親は年の離れた恋人との婚姻を許してくれるだろうか?
週末はキャンプへ行く約束をしている。
それとなくご両親へのあいさつのことを切り出してみようと思った。現在の同棲についても、板井がどのように説明しているのか分かっていない。
話はそこからだなと思った。
この先もずっと一緒にいられたなら、どんなに幸せだろうか?
そんなことを思いながら、唯野は熱を放ったのだった。
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