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9『陽だまりみたいな君と日常』
9【微R】塩田の予想外過ぎる行動
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****side■電車
余裕なんて初めから無くて。
それでも頑張れたのは、塩田の一番近い場所にいると思っていたから。そして同僚の板井が力を貸してくれると言っていたからに、ほかならない。
「んッ……」
電車は塩田のわき腹を撫であげ、首筋に口づける。
──皇副社長を脅威に感じてしまうのは、自分に自信がないから。
皇が余裕でいればいるほど、脅威に感じてしまっている自分がいた。
余裕を見せたくてしていたことが、逆に自分の首を絞めてしまったのだ。
「まだ、するのか?」
不安そうにこちらを見つめる瞳と視線がかち合い、電車はそっと瞬きをするとその唇に口づける。
「痛いならしない」
離れていく唇を、彼の瞳が追っていた。
「それが基準?」
「そうだよ」
と、彼の腿をなであげれば、
「じゃあ、来いよ」
とフッと笑う。
電車は、彼の感情が自分にだけ向けられることを願った。
婚姻という強みを得て、塩田の前に越えられない壁を築こうとしている自分は、なんと浅ましいのだろう?
結婚とは永遠に相手を愛する権利を得るためのものなのに。そんなことをしなければ安心できないなんて。
「はあ……ッ」
まだ柔らかいままのそこに、欲望の塊を穿つ。浅く息をしながら、一所懸命受け入れようとする彼が愛しい。
求められたいと願う塩田を頻繁に求めたことはなかった。
欲しいのはその心。性欲のはけ口のようには思われたくない。
「紀夫」
名前を呼ばれるたび、心は跳ねる。
伝わる体温が心に平穏を齎しても、直ぐに不安が自分を攫っていくことが忌々しい。
人がどんなきっかけで人を好きになるのかなんて、わからないから。
「今夜は、塩田が満足するまでしてあげる」
「俺は別に欲求不満なわけじゃ……」
ちらと瞼をあげこちらに視線を向けた彼の表情が変わる。
驚愕へと。
「紀夫? なんで泣いて……」
彼が電車の頬を両手で包み込み、心配そうな顔をした。
「好きだよ」
どうしようもなく好きで、不安に駆られてしまう自分をどうにもできないことを知る。それは感情の雫となって彼の上に降り注ぐ。
「俺も好きだ。締め付けすぎて、痛かったのか?」
心配そうな表情は困った顔へ変わる。
「違う。好きすぎて辛いんだ」
こんなことを言ってもきっと、塩田にはわからない。案の定、彼は困った表情をしながら、そっと電車の胸を手のひらで撫でる。
それは心臓が痛いのか? とでも言うように。
「俺はどうすればいい?」
どうしたらいいのか分からないのだろう。そう問う彼の手の上に電車は自分の手を重ねた。
「ずっと傍に居てよ、塩田。そして俺だけを見ていて欲しいの」
「俺にストーカーになれと?!」
塩田が更に困惑したように目を泳がせる。
──塩田らしいけれど。
どうしてそういう発想になるのかな?
電車がどう説明しようか迷っていると、
「ま、まあ。努力はしてみるが」
としどろもどろに無茶苦茶なことを言い始めた。
電車は説明を放棄し、どうなるのか見守ることにしたのだが。
数日後、塩田が『ストーカーのすゝめ』なる謎の本を購入しストーカーに挑戦し始めるのを見て、電車が笑ったのは言うまでもない。
余裕なんて初めから無くて。
それでも頑張れたのは、塩田の一番近い場所にいると思っていたから。そして同僚の板井が力を貸してくれると言っていたからに、ほかならない。
「んッ……」
電車は塩田のわき腹を撫であげ、首筋に口づける。
──皇副社長を脅威に感じてしまうのは、自分に自信がないから。
皇が余裕でいればいるほど、脅威に感じてしまっている自分がいた。
余裕を見せたくてしていたことが、逆に自分の首を絞めてしまったのだ。
「まだ、するのか?」
不安そうにこちらを見つめる瞳と視線がかち合い、電車はそっと瞬きをするとその唇に口づける。
「痛いならしない」
離れていく唇を、彼の瞳が追っていた。
「それが基準?」
「そうだよ」
と、彼の腿をなであげれば、
「じゃあ、来いよ」
とフッと笑う。
電車は、彼の感情が自分にだけ向けられることを願った。
婚姻という強みを得て、塩田の前に越えられない壁を築こうとしている自分は、なんと浅ましいのだろう?
結婚とは永遠に相手を愛する権利を得るためのものなのに。そんなことをしなければ安心できないなんて。
「はあ……ッ」
まだ柔らかいままのそこに、欲望の塊を穿つ。浅く息をしながら、一所懸命受け入れようとする彼が愛しい。
求められたいと願う塩田を頻繁に求めたことはなかった。
欲しいのはその心。性欲のはけ口のようには思われたくない。
「紀夫」
名前を呼ばれるたび、心は跳ねる。
伝わる体温が心に平穏を齎しても、直ぐに不安が自分を攫っていくことが忌々しい。
人がどんなきっかけで人を好きになるのかなんて、わからないから。
「今夜は、塩田が満足するまでしてあげる」
「俺は別に欲求不満なわけじゃ……」
ちらと瞼をあげこちらに視線を向けた彼の表情が変わる。
驚愕へと。
「紀夫? なんで泣いて……」
彼が電車の頬を両手で包み込み、心配そうな顔をした。
「好きだよ」
どうしようもなく好きで、不安に駆られてしまう自分をどうにもできないことを知る。それは感情の雫となって彼の上に降り注ぐ。
「俺も好きだ。締め付けすぎて、痛かったのか?」
心配そうな表情は困った顔へ変わる。
「違う。好きすぎて辛いんだ」
こんなことを言ってもきっと、塩田にはわからない。案の定、彼は困った表情をしながら、そっと電車の胸を手のひらで撫でる。
それは心臓が痛いのか? とでも言うように。
「俺はどうすればいい?」
どうしたらいいのか分からないのだろう。そう問う彼の手の上に電車は自分の手を重ねた。
「ずっと傍に居てよ、塩田。そして俺だけを見ていて欲しいの」
「俺にストーカーになれと?!」
塩田が更に困惑したように目を泳がせる。
──塩田らしいけれど。
どうしてそういう発想になるのかな?
電車がどう説明しようか迷っていると、
「ま、まあ。努力はしてみるが」
としどろもどろに無茶苦茶なことを言い始めた。
電車は説明を放棄し、どうなるのか見守ることにしたのだが。
数日後、塩田が『ストーカーのすゝめ』なる謎の本を購入しストーカーに挑戦し始めるのを見て、電車が笑ったのは言うまでもない。
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