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9『陽だまりみたいな君と日常』
5 いけないことだけれど
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****side■電車
「舟盛りも寿司も、美味しかったね」
と電車が座卓でお茶をすする塩田に視線を投げると、彼はこくりと頷く。
塩田が和食が好きなことは知っていたが、好きな寿司のネタまでは把握しているわけではない。そのため今回の旅行は収穫が多いなと感じていた。好きな人の好きな食べ物を知るというのは、とても大切なことだ。
付き合い程度に酒を口にし、温泉に浸かれば一日の疲れがどっと襲ってくる。
窓を開ければ涼しい風が頬を撫で、季節を感じさせた。
今は窓を閉め座卓で二人、テレビを眺めている。
これと言って面白い番組があるわけではないが。
「紀夫」
名前を呼ばれて再び塩田の方に視線を移せば、甘えたように腕を伸ばす彼。電車は彼を引き寄せた。
しかしここで問題が発生。電車の膝を跨いで座るには浴衣の裾を捲らなければならない。つまり、下着が丸見えになるということ。
「塩田、それはちょっと……」
理性が崩壊しそうな電車に、首を傾げる塩田。彼からすれば、いつものようにベタベタしたいだけなのだ。
──そうじゃなくても塩田の浴衣姿に、鼻血出しそうなのに。
「布団でイチャイチャしようよ」
「ん。俺は何処でもいいよ」
電車はテレビを消して、灯りを消した。空いたままの障子から差し込む月明り。電車が布団に横になると、彼がそれに倣って隣に潜り込む。
「畳も悪くないね」
電車は彼の背中に手を回すと、その首筋に口づける。
「温泉は好き」
と塩田が電車の背中に腕を回す。
薄布一枚で抱き合えば、互いの体温を感じた。
「またどこか行こうね、塩田」
小さく頷いて背中に回した腕に力を入れる彼が、愛しい。
──付き合う前は分からなかった。
塩田がこんなに甘えん坊だったこと。
「可愛い」
「は?」
”何が?”と言うようにこちらを見上げる彼に、口づける。
「んッ……紀夫?」
「いいよね? 塩田」
電車の変化に気づいた彼は、
「当たり前だろ。俺だって……」
”したい”と小さくいう彼が可愛い。そこで電車は先日彼が言っていたことを思い出す。
『別にそういうことが好きとかじゃなくて、紀夫としたいだけ』
──お互い初めての恋で、こんなに相性が良いなら。
これもまた運命なのかも知れない。
浴衣の合わせから手を差し入れ、その胸を撫でると、
「もっと」
と言って彼が口づけを強請る。
電車は彼の唇に口づけ、続いて耳たぶを甘噛みした。一応、懇親会という名目で旅行に来ている以上、こんなことをしていることがバレたら大目玉だ。
──バレないようにしないとな。
電車は月明りに照らされた塩田を見て、思わず鼻を抑える。こんな状況で大丈夫だろうかと不安を抱きつつも、彼の首筋に唇を寄せるのだった。
「舟盛りも寿司も、美味しかったね」
と電車が座卓でお茶をすする塩田に視線を投げると、彼はこくりと頷く。
塩田が和食が好きなことは知っていたが、好きな寿司のネタまでは把握しているわけではない。そのため今回の旅行は収穫が多いなと感じていた。好きな人の好きな食べ物を知るというのは、とても大切なことだ。
付き合い程度に酒を口にし、温泉に浸かれば一日の疲れがどっと襲ってくる。
窓を開ければ涼しい風が頬を撫で、季節を感じさせた。
今は窓を閉め座卓で二人、テレビを眺めている。
これと言って面白い番組があるわけではないが。
「紀夫」
名前を呼ばれて再び塩田の方に視線を移せば、甘えたように腕を伸ばす彼。電車は彼を引き寄せた。
しかしここで問題が発生。電車の膝を跨いで座るには浴衣の裾を捲らなければならない。つまり、下着が丸見えになるということ。
「塩田、それはちょっと……」
理性が崩壊しそうな電車に、首を傾げる塩田。彼からすれば、いつものようにベタベタしたいだけなのだ。
──そうじゃなくても塩田の浴衣姿に、鼻血出しそうなのに。
「布団でイチャイチャしようよ」
「ん。俺は何処でもいいよ」
電車はテレビを消して、灯りを消した。空いたままの障子から差し込む月明り。電車が布団に横になると、彼がそれに倣って隣に潜り込む。
「畳も悪くないね」
電車は彼の背中に手を回すと、その首筋に口づける。
「温泉は好き」
と塩田が電車の背中に腕を回す。
薄布一枚で抱き合えば、互いの体温を感じた。
「またどこか行こうね、塩田」
小さく頷いて背中に回した腕に力を入れる彼が、愛しい。
──付き合う前は分からなかった。
塩田がこんなに甘えん坊だったこと。
「可愛い」
「は?」
”何が?”と言うようにこちらを見上げる彼に、口づける。
「んッ……紀夫?」
「いいよね? 塩田」
電車の変化に気づいた彼は、
「当たり前だろ。俺だって……」
”したい”と小さくいう彼が可愛い。そこで電車は先日彼が言っていたことを思い出す。
『別にそういうことが好きとかじゃなくて、紀夫としたいだけ』
──お互い初めての恋で、こんなに相性が良いなら。
これもまた運命なのかも知れない。
浴衣の合わせから手を差し入れ、その胸を撫でると、
「もっと」
と言って彼が口づけを強請る。
電車は彼の唇に口づけ、続いて耳たぶを甘噛みした。一応、懇親会という名目で旅行に来ている以上、こんなことをしていることがバレたら大目玉だ。
──バレないようにしないとな。
電車は月明りに照らされた塩田を見て、思わず鼻を抑える。こんな状況で大丈夫だろうかと不安を抱きつつも、彼の首筋に唇を寄せるのだった。
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