R18【同性恋愛】リーマン物語if5『塩田と板井と苦情係』

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
53 / 96
8『二人で歩む幸せの道』

6 温泉に行こうよ

しおりを挟む
****side■電車でんま

 電車でんまは頬杖をついて唯野の方を見ていた。

──いいなあ。
 幸せそう。

 塩田が珍しくお節介を焼いたのは、ホントに板井と仲が良いからだと実感した。そもそも塩田の方から連絡を取る相手は板井だけ。ほとんど一緒にいる電車に彼が連絡を取る必要はないので、なおのこと。

──そういや、俺。板井から連絡貰ったことないなあ。
 課長からたまにメッセージ貰うけど。

「ねえ、塩田」
「んー?」
 隣の塩田に声をかけると、彼はモニターを見つめたまま返事をくれる。
「今度どこか出かけようよ」
「おう、何処へ」
 彼は画面を見たまま、傍らのカフェオレに手を伸ばす。
「大人になったし、遊園地も映画館も行けるけど」
と電車が言うと、彼はむせた。
「おま……っ」
 タオルハンカチで口元を拭い、恨みがましい目でこちらを見る塩田。

──お付き合いしてエッチしちゃったし、これは大人になったって意味だよね?

「板井たち、泊りがけでコテージに行ったんだって。いいなあ」
と電車が言うと、
「何するんだ、そんなところで」
と言われる。電車は唸った。

──何するんだろう?

 アウトドア派の板井たちと違い、自分たちはどう考えてもインドア派である。塩田が遊園地に行きたがったのは、刺激的な乗り物に乗りたかったわけではなく、観覧車に乗りたかっただけだし、どちらかというと塩田の家でのんびり休日を過ごすことが多い二人。電車が板井たちに憧れたのは、泊りがけで出かけたからである。

「じゃあさ、温泉行こうよ」
「!」
 一緒に暮らし始めたばかりなのに、泊りがけで何処かに行きたいというのもどうかとは思ったが、一緒に暮らし始めたからこそ車でそのまま出かけられるのも利点だ。
 温泉という言葉に、塩田の目がキラキラする。どうやら温泉は好きらしい。
「なに、お前ら温泉旅行に行くのか?」
 二人の話を聞いていたのか、唯野がこちらに視線を向けて。どうやら唯野も温泉は好きらしい。
 塩田に”二人も誘う?”と合図すれば、彼は頷いた。
「課長、みんなで温泉行かない?」
とさっそく声をかける電車。
 声をかけられた唯野は、すごく嬉しそうな表情をした。

「みんなで行くなら、懇親会にして経費で落とすかな」
「そんなこと出来るの?」
 電車はこの会社のシステムについてあまり詳しくはなかった。
「うちの会社の場合は福利厚生の一環として懇親会などには補助金を出してくれるんだよね。一人当たりの金額が大体決まっているから、課によっては飲み会にして回数を多くしたり、年数回で一泊旅行している課もあるね」
と、唯野。
「へえ、知らなかった」
「チームワークを大切にしている会社だから、その辺は優遇されてるんだよ。うちの課は去年の春できたばかりでバタバタしていたから、旅行はいかなかったけれど」
 穏やかな笑みを浮かべる唯野。塩田は黙って話を聞いている。

 そこへ、
「何かあったんですか?」
と板井が商品部から戻って来た。
「懇親会で温泉旅行に行こうって話」
と電車。
「へえ。いいですね」
と板井は椅子を引きながら。
「今週末でいいかな。仕事が終わった後から二泊三日で」
 唯野は三人にぐるりと視線を向けると、PCで何か打ち込み始めた。
「俺の上は副社長だから、必要書類を副社長に送っておけば、後はやってくれるはず」
 通常は総括が判を押して総務部へ持っていってくれるらしいが、苦情係の上は副社長な為、総括を通すことがない。
「宿、何処がいいかな」
 唯野は乗り気、塩田は嬉しそうである。そんな二人を見ながら電車はウキウキした。しかし一番乗り気だったのは板井だったようで……。
「はい、お奨め宿一覧」
と各PCに一覧を送信する板井。
「気が利くね、板井」
と唯野。
「グッジョブ、板井」
と塩田。

 こうして四人は急遽、週末に温泉旅行へいくこととなったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

こいじまい。 -Ep.the British-

ベンジャミン・スミス
BL
貿易会社に勤務する月嶋春人は上司に片想いをしていた。 しかし、その想いは儚く散ってしまう。  いつまでも上司を忘れることが出来ない春人に「無理に忘れる必要は無い。」と、声をかけたのはイギリス人のアルバート・ミラーだった。  いつのまにか英国紳士なアルバートに惹かれていく春人は徐々に新しい恋への1歩を踏み出し始めていた。 身長差30cm、年の差18歳 おまけに相手は男で、外国人。 様々な壁にぶつかりながらも愛を育んでいく2人のオフィスラブ。 ************ 素敵な表紙はもなか様から いただきました。 ありがとうございます。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...