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8『二人で歩む幸せの道』
5 上手くいってる?
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****side■唯野
月曜日。いつもの朝がやってくる。
「おはよー!」
「いつも元気だな、電車」
唯野がPCの画面をぼんやりと眺めていると、苦情係の入り口で電車の元気な挨拶。続いて塩田が、軽く片手をあげ中に入ってくる。
いつもと変わらない朝に今日は少し変化が。
「課長、これお土産」
と電車が、唯野に向かって紙に包まれた箱を差し出して来た。
「土産?」
と不思議そうな顔をした唯野に、
「紀夫の家に行ったので」
と向かい側から塩田が。
彼はPCを立ち上げながら、電車の代わりにそう答えた。
「へえ、ありがとう。パウンドケーキか」
唯野は箱を裏返し表示を見て、中身を知る。どうやらスタンダートなパウンドケーキのようだ。
──土産というほど電車の実家は遠かったか?
そこへ給湯室から戻ってきた板井が、
「コーヒーで良かったですか?」
とデスクの上にコーヒーカップを差し出す。
「ありがとう。電車から土産だって」
と唯野は、彼に向かって箱の表を見せる。
「冷やして置きましょうか?」
「そうだな。十時休憩の時にみんなで頂こう」
唯野は言って板井に箱を渡す。
すると、塩田がチラリとこちらに視線を向けた。
”仲が良いんだな”
と言われているように感じ、気恥ずかしくなる。
板井は電車に向かって礼を述べて、再び給湯室へ。
「で?」
立ったままPCを立ち上げた塩田はセッティングを済ますと、回転椅子に腰かけそのまま唯野の方へ椅子を滑らせると、声を潜め。
「でってなんだよ」
と唯野。
「上手くいってる?」
彼は抑揚のない声でそう問う。他人に無関心な彼がそんなことを聞くのも驚くが、内容が恋愛についてだった為、唯野は更に驚いた。
「何、変な顔して」
と塩田。
「あ、いや。その……そんなこと聞かれるとは思わなかったから」
「心配はしてる」
板井が彼と仲が良かったことを思い出し、少し羨ましく感じた。きっと自分なんかとは違い、何でも話せるのだろうと。
唯野が押し黙っていると、真面目な顔をしていた塩田は、困ったように眉を寄せた。そして、
「上手くいってないのか?」
と再び問う。
「そんなことはないけれど。時々、どうして良いか分からない」
それは率直な感想であり、今自分に立ちはだかっている問題。
すると彼は、
「課長はどうしたいの?」
と。唯野は返答に困ってしまう。
──どうしたいって言われても。
「好きなようにしたらいいんじゃないのか? たぶん板井は、それを受け止めることができると思うよ」
「好きなように……」
「板井は、表面だけを見てるタイプじゃないから」
”戻って来た”と言って塩田は自分の席に戻っていく。
──俺は、板井に好かれたい。
もっと愛されたい。幻滅されたくない。
だから何も言えなくなる。正解が分からないから。
「課長? どうかしました?」
じっと彼を見つめていると、不思議そうにこちらを見つめ返す板井と目が合う。
「いや」
「ちょっと商品部に行ってきますね」
「ああ、うん」
板井はファイルを掴むと苦情係を出ていく。唯野はため息をつき、PCモニターに視線を移そうとしてニヤニヤしている電車と目が合う。
「な、なんだよ」
たじろく唯野に電車は、
「課長、ラブラブだねー」
と口に手をあて冷やかすように言う。
彼の隣にいた塩田が肩を竦めた。どういう意味なんだと思っていると、電車が首に自身の人差し指をポンポンとあてる。
「!!」
唯野は音がしそうな勢いで首元を手で押さえた。
──キスマークか!
月曜日。いつもの朝がやってくる。
「おはよー!」
「いつも元気だな、電車」
唯野がPCの画面をぼんやりと眺めていると、苦情係の入り口で電車の元気な挨拶。続いて塩田が、軽く片手をあげ中に入ってくる。
いつもと変わらない朝に今日は少し変化が。
「課長、これお土産」
と電車が、唯野に向かって紙に包まれた箱を差し出して来た。
「土産?」
と不思議そうな顔をした唯野に、
「紀夫の家に行ったので」
と向かい側から塩田が。
彼はPCを立ち上げながら、電車の代わりにそう答えた。
「へえ、ありがとう。パウンドケーキか」
唯野は箱を裏返し表示を見て、中身を知る。どうやらスタンダートなパウンドケーキのようだ。
──土産というほど電車の実家は遠かったか?
そこへ給湯室から戻ってきた板井が、
「コーヒーで良かったですか?」
とデスクの上にコーヒーカップを差し出す。
「ありがとう。電車から土産だって」
と唯野は、彼に向かって箱の表を見せる。
「冷やして置きましょうか?」
「そうだな。十時休憩の時にみんなで頂こう」
唯野は言って板井に箱を渡す。
すると、塩田がチラリとこちらに視線を向けた。
”仲が良いんだな”
と言われているように感じ、気恥ずかしくなる。
板井は電車に向かって礼を述べて、再び給湯室へ。
「で?」
立ったままPCを立ち上げた塩田はセッティングを済ますと、回転椅子に腰かけそのまま唯野の方へ椅子を滑らせると、声を潜め。
「でってなんだよ」
と唯野。
「上手くいってる?」
彼は抑揚のない声でそう問う。他人に無関心な彼がそんなことを聞くのも驚くが、内容が恋愛についてだった為、唯野は更に驚いた。
「何、変な顔して」
と塩田。
「あ、いや。その……そんなこと聞かれるとは思わなかったから」
「心配はしてる」
板井が彼と仲が良かったことを思い出し、少し羨ましく感じた。きっと自分なんかとは違い、何でも話せるのだろうと。
唯野が押し黙っていると、真面目な顔をしていた塩田は、困ったように眉を寄せた。そして、
「上手くいってないのか?」
と再び問う。
「そんなことはないけれど。時々、どうして良いか分からない」
それは率直な感想であり、今自分に立ちはだかっている問題。
すると彼は、
「課長はどうしたいの?」
と。唯野は返答に困ってしまう。
──どうしたいって言われても。
「好きなようにしたらいいんじゃないのか? たぶん板井は、それを受け止めることができると思うよ」
「好きなように……」
「板井は、表面だけを見てるタイプじゃないから」
”戻って来た”と言って塩田は自分の席に戻っていく。
──俺は、板井に好かれたい。
もっと愛されたい。幻滅されたくない。
だから何も言えなくなる。正解が分からないから。
「課長? どうかしました?」
じっと彼を見つめていると、不思議そうにこちらを見つめ返す板井と目が合う。
「いや」
「ちょっと商品部に行ってきますね」
「ああ、うん」
板井はファイルを掴むと苦情係を出ていく。唯野はため息をつき、PCモニターに視線を移そうとしてニヤニヤしている電車と目が合う。
「な、なんだよ」
たじろく唯野に電車は、
「課長、ラブラブだねー」
と口に手をあて冷やかすように言う。
彼の隣にいた塩田が肩を竦めた。どういう意味なんだと思っていると、電車が首に自身の人差し指をポンポンとあてる。
「!!」
唯野は音がしそうな勢いで首元を手で押さえた。
──キスマークか!
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