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8『二人で歩む幸せの道』

3【R】自信がなくても

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****side■唯野

 伝えることの難しさを知った。
 板井はロマンチックな演出の好きな男なのだなと唯野は感じている。きっと自分を喜ばせようとして色んなことをしてくれるのだろう。
 しかし、時々思うのだ。自分はそれに値するような人間なのかと。

──板井が好きだ。
 日々、どんどん惹かれていく。

 女性だったら感動してもっと気の利いた言葉の一つも言えるのだろう。そんなことを考えてしまい、辛くなる。何といえば、彼は喜んでくれるのだろう?
 どんな言葉にすれば伝わるのだろう。考えだしたらキリがなくて、気づけば何も言えなくなってしまう。

──こんな自分じゃ、一緒に居てもつまらないのではないか?
 そう思うと自信がなくなる。
 どうしたらいいのか分からない。

 ずっと。求められるままに与えてきた自分は、与えられることに慣れていなかった。左の薬指に光るリング。それは愛の証であり、彼の独占欲の証でもあった。こんな自分を独り占めしたいと思ってくれているのかと思うと、嬉しくて涙が零れた。
 こんな風に愛されたのは初めてで、戸惑うことばかり。彼の言動に一喜一憂して、嫌われることがとても怖い。幻滅されるのも、がっかりされるのも嫌だ。なのに結局、何もできない。

 コテージなど、入ったのは初めてだった。
 いかに自分が家族サービスを怠ったのかを思い知らされる。自分は仕事以外何もしてこなかった。仕事付き合い以外何もしてこなかったのだ。
 職場では無口で愛想のあまり良いとは言えない板井だが、二人きりの時は色んな顔を見せてくれる。それは自分にとって宝物だし、大切な時間でもあった。

 もしいつか、自分といるのがつまらないと、そっぽを向かれてしまったら?

「修二さん?」
 唇を噛みしめ俯いていると、後ろから優しく抱きしめられる。
 ”どうしたの?”というように優しい声。
「また余計なこと考えてる?」
 板井の手はシャツの上から優しく肌を撫でる。
「お前のことばかり、考えてるよ」
「それは嬉しいですね」
「……んッ」
 扱いが上手いなと思う。元気のない自分にあえて踏み込まない。代わりに熱を煽っていく。
「ベッドにいきましょう? 舐めてあげる」


 雰囲気に酔っているのだろう。いつもなら、抑える声が抑えられなかった。
「あッ……んんッ」
 板井との行為は好きだ。好きな相手なのだから、当たり前なのだろうが。丁寧な愛撫に、いつの間にか自分から強請ってしまっている。
 板井の指が唯野自身を焦らすように扱く。最奥の蕾を指で拡げ中を嘗め回す、彼の舌。全てが唯野の欲情を煽る。
 きたいのを我慢していると、それに気づいた彼がジェルを指に垂らし蕾の中へゆっくりとうずめた。くぷぷっと指が奥まで侵入していく。唯野は気持ちよさに、胸を仰け反らせ甘い声をあげる。
「はあッ……」
 呼吸を整えようとするが上手くいかない。
「あッ……まだ……」
 唯野の制止も聞かず、指をゆっくりと動かし始める板井。あまりの快感に唯野は理性を手放した。

──気持ち良すぎて、おかしくなりそうだ。

 いつもと違う場所だからなのか、全く理性を保てない。自ら足を大きく広げ、腰を揺らしてしまっていた。
「良い眺めですね。修二さんの厭らしい部分が全部丸見えですよ?」
 お前が巧すぎるんだと抗議しようとした唯野だったが、悔しかったので、
「誘ってるんだよ、バカ」
と強気なことを口にしてしまった。
 板井は一瞬驚いた顔をする。しかしすぐに目を細め、
「ふうん」
と優しい笑みを浮かべた。

「随分余裕なんですねえ。もう少し、刺激が必要ですか?」
「板井、ばか……やめ……」
 鈴口をちゅるっと吸い上げられ、我慢も限界に。
「ああッ」
「最高ですね」
 板井は口を離すと、鈴口から迸る熱を見つめている。唯野は赤面した。
「おま……なんで、いつもじっと見てるんだよ」
「好きなんですよ、だって見てると興奮するでしょ?」
「悪趣味だ」
 唯野が涙目で講義すると、余裕の笑みでこちらを見ている板井に口づけられたのだった。
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