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7『それぞれが抱える問題と難関』
9 電車の家族
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****side■電車
『妹?』
『違うよ、義母』
実家のある駅までは、義母が迎えに来てくれていた。相手を見た塩田が固まる。無理もない、五人目の義母はまだ三十になったばかり。少し軽蔑の眼差しを感じつつ、二人で彼女の車に乗り込んだ。
「妹だなんて、これでも紀夫くんより年上なのに、若く見えるのかしらねえ」
ふふふと笑う義母は若く見られたことが嬉しかったのか、ご機嫌である。
最初の頃は自分も父を軽蔑の眼差しで見ていた。こんなに年の離れた若い奥さんを貰うなんて、と。だからと言って、父は若い女性が好きというわけではない。単に見境がないだけ。
しかしこの五人目の義母が一番仲良くやっているのも事実。
『あまり年が変わらない母だけれど、よろしくね』
彼女は大きなお腹を抱え、そういって電車の家にやってきた。こんなことは過去に何度も経験していた電車でさえ、彼女の年齢に驚いたのだ。
だが彼女は今までの義母の中で一番落ち着いていたし、母親らしかった。
今までの義母たちというのは、電車がすでに手のかからない年齢だったため、友人のような関係になる。そして新たにできた弟や妹の面倒を見るのは主に長男の電車の役割だったのである。
その中で、この五人目の義母だけが違った。すでに一緒に暮らしていた義弟妹を含め、彼らに我が子として接したのである。
今電車が塩田の家に入り浸ってられるのも、彼女が義弟妹たちの面倒とちゃんと見てくれるから。義弟妹たちは新しくできた子と共にこの新しい母にとても懐いており、自らお手伝いをするようになった。
「着いたわよ。広いだけしか取り柄のない家だけど、ゆっくりしていってね。塩田さん」
彼女は自宅の駐車場に車を停めると、三階建ての大きな家を見上げた。元は平屋だったが、どんどん家族が増えたため建て替えたのである。
「これ」
といって塩田が手土産を渡す。
それは子供たちの好むようなお菓子の詰め合わせであった。電車の母が亡くなったのは自分が中学の頃だった為、義弟妹たちは幼い子が多い。
「まあ! 子供たちが喜びそうだわ。ありがとう」
にっこりと微笑む彼女に、初めは偉く年の差のある夫婦だなと思っていた風な塩田も、普通の接し方になっていた。
「すぐ下でも十以上離れているんだよね」
電車は自宅のドアを開けながら塩田に説明する。
「へえ」
車の音で玄関に集まったのか、上は小学生から下はまだよちよち歩きの義弟妹たちが玄関の上がり口で待っていた。
「おかえりなさい」
と元気な声。
自分は毎日こんな賑やかな家で暮らしていたのだなと、改めて思う。塩田は一人っ子で現在は一人暮らし。煩くないかなと少し心配になるも、なぜか早々に子供たちに懐かれていた。何処にいても人を引き付ける塩田は健在のようだ。
──問題は父だよなあ。
電車は頼りない父のことを思い出し、少し憂鬱になるのだった。
『妹?』
『違うよ、義母』
実家のある駅までは、義母が迎えに来てくれていた。相手を見た塩田が固まる。無理もない、五人目の義母はまだ三十になったばかり。少し軽蔑の眼差しを感じつつ、二人で彼女の車に乗り込んだ。
「妹だなんて、これでも紀夫くんより年上なのに、若く見えるのかしらねえ」
ふふふと笑う義母は若く見られたことが嬉しかったのか、ご機嫌である。
最初の頃は自分も父を軽蔑の眼差しで見ていた。こんなに年の離れた若い奥さんを貰うなんて、と。だからと言って、父は若い女性が好きというわけではない。単に見境がないだけ。
しかしこの五人目の義母が一番仲良くやっているのも事実。
『あまり年が変わらない母だけれど、よろしくね』
彼女は大きなお腹を抱え、そういって電車の家にやってきた。こんなことは過去に何度も経験していた電車でさえ、彼女の年齢に驚いたのだ。
だが彼女は今までの義母の中で一番落ち着いていたし、母親らしかった。
今までの義母たちというのは、電車がすでに手のかからない年齢だったため、友人のような関係になる。そして新たにできた弟や妹の面倒を見るのは主に長男の電車の役割だったのである。
その中で、この五人目の義母だけが違った。すでに一緒に暮らしていた義弟妹を含め、彼らに我が子として接したのである。
今電車が塩田の家に入り浸ってられるのも、彼女が義弟妹たちの面倒とちゃんと見てくれるから。義弟妹たちは新しくできた子と共にこの新しい母にとても懐いており、自らお手伝いをするようになった。
「着いたわよ。広いだけしか取り柄のない家だけど、ゆっくりしていってね。塩田さん」
彼女は自宅の駐車場に車を停めると、三階建ての大きな家を見上げた。元は平屋だったが、どんどん家族が増えたため建て替えたのである。
「これ」
といって塩田が手土産を渡す。
それは子供たちの好むようなお菓子の詰め合わせであった。電車の母が亡くなったのは自分が中学の頃だった為、義弟妹たちは幼い子が多い。
「まあ! 子供たちが喜びそうだわ。ありがとう」
にっこりと微笑む彼女に、初めは偉く年の差のある夫婦だなと思っていた風な塩田も、普通の接し方になっていた。
「すぐ下でも十以上離れているんだよね」
電車は自宅のドアを開けながら塩田に説明する。
「へえ」
車の音で玄関に集まったのか、上は小学生から下はまだよちよち歩きの義弟妹たちが玄関の上がり口で待っていた。
「おかえりなさい」
と元気な声。
自分は毎日こんな賑やかな家で暮らしていたのだなと、改めて思う。塩田は一人っ子で現在は一人暮らし。煩くないかなと少し心配になるも、なぜか早々に子供たちに懐かれていた。何処にいても人を引き付ける塩田は健在のようだ。
──問題は父だよなあ。
電車は頼りない父のことを思い出し、少し憂鬱になるのだった。
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