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7『それぞれが抱える問題と難関』
4 何故か○○だけは反対される電車
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****side■電車
「明日は一度、家に帰らないとなあ」
塩田がベッドルームとして使っている部屋にはウオークインクローゼットがある。そこで自分の持ち込んだ衣類を眺めながらそういうと、彼は後ろから抱き着いてきた。
「どうしたの? 塩田」
「なんで帰るんだよ」
”洗濯ならうちでもしてるだろ?”と続けて。
「そうなんだけれど。お出かけ用一着だとデートする時、いつも同じ服になるでしょ?」
と困った顔をする電車。
てっきり買えばいいと言われるかと思っていると、
「一緒に暮らせば?」
と言われ、思わず彼の方を振り返る。
「引っ越して来いよ、紀夫」
──それはいつも一緒に居たいということなのだろうか?
嬉しすぎる。
「俺がいないと寂しい?」
と問えば、
「当たり前だろ」
と再び抱き着かれた。
可愛いなと悶絶してると、
「紀夫、実家暮らしだっけ? 承諾とか要るのか?」
と問われる。
我が家は塩田の両親とは真逆で、基本何をしても反対をされたことはない。車の免許を取る時も、さっさと取れと援助を受けたし、進学も好きなところへ行きなさいと言われた。
──ただ一つだけ。
童貞を反対されたことはあるけれど……。
『紀夫! 恋人はいないのか? 好いた相手はいないのか? 父さんは相手が誰であっても反対はしない』
『今はいないかな』
と電車が返答をすると、
『なんだ? 童貞を守り抜こうという腹づもりか? そうは問屋が卸さない!』
と、大量の見合い写真を押し付けられたのだ。
苦々しい思い出である。
「反対はされないとは思うけれど、一応話をしないといけないし同棲となれば相手に逢わせろって言われるかも」
お付き合い数日で親に紹介の話は重いかなと思ったが、
「じゃあ、荷物取りに行くとき一緒に行く」
と言われ、さらに驚いた。
「良いの?」
「だっていずれは、結婚するんだろ」
「もちろん、俺はそのつもりだよ」
「だったら会うのは早い方がいいだろ」
塩田のこの先の人生に、自分の居場所があることを実感し、思わず感涙してしまいそうになる。
「塩田のご両親に挨拶は……」
「それはそのうちでいいだろ。どうせ何しても反対するんだし」
塩田は諦めというよりも、恒例行事だというような雰囲気を醸し出してそう言う。
「俺が何か言えば反対するのは、もはやパブロフ現象」
「パブロフの犬……つまり条件反射と?」
と電車が反応すれば、塩田が”そうだ”と頷く。
──反対するのは条件反射ってどうなの、それ。
「だから事後報告でいいだろ。住んでしまえばこっちのものだし、紀夫の両親が承諾してくれれば話しやすくなる」
”塩田の両親のことは塩田に任せるか”と思いながら、彼の手を引きウオークインクローゼットからベッドルームへ。
「中はちょっとひんやりするね」
と言いながらベッドに腰かけると、彼が電車の首に腕を絡め膝の上に乗り上げる。
電車は自分の膝に向き合って座る彼の背中に腕を回した。
──甘えん坊だなあ。可愛い。
「いつ越してくる?」
「じゃあ、週末。車も取りに行く」
「わかった」
満足そうに肩に顔を埋める彼。たった数日で人生って変わるんだなあと電車は思っていた。
「今日もぎゅってして寝てあげる」
と、眠そうな彼の背中を撫でながら、電車は幸せを噛みしめていたのだった。
──ずっとずっと一緒に居られたらいいな。
そうなれるように頑張らないとね。
「紀夫、好き」
「俺も好きだよ、塩田」
二人の愛はゆっくりと夜に溶けていく。
「明日は一度、家に帰らないとなあ」
塩田がベッドルームとして使っている部屋にはウオークインクローゼットがある。そこで自分の持ち込んだ衣類を眺めながらそういうと、彼は後ろから抱き着いてきた。
「どうしたの? 塩田」
「なんで帰るんだよ」
”洗濯ならうちでもしてるだろ?”と続けて。
「そうなんだけれど。お出かけ用一着だとデートする時、いつも同じ服になるでしょ?」
と困った顔をする電車。
てっきり買えばいいと言われるかと思っていると、
「一緒に暮らせば?」
と言われ、思わず彼の方を振り返る。
「引っ越して来いよ、紀夫」
──それはいつも一緒に居たいということなのだろうか?
嬉しすぎる。
「俺がいないと寂しい?」
と問えば、
「当たり前だろ」
と再び抱き着かれた。
可愛いなと悶絶してると、
「紀夫、実家暮らしだっけ? 承諾とか要るのか?」
と問われる。
我が家は塩田の両親とは真逆で、基本何をしても反対をされたことはない。車の免許を取る時も、さっさと取れと援助を受けたし、進学も好きなところへ行きなさいと言われた。
──ただ一つだけ。
童貞を反対されたことはあるけれど……。
『紀夫! 恋人はいないのか? 好いた相手はいないのか? 父さんは相手が誰であっても反対はしない』
『今はいないかな』
と電車が返答をすると、
『なんだ? 童貞を守り抜こうという腹づもりか? そうは問屋が卸さない!』
と、大量の見合い写真を押し付けられたのだ。
苦々しい思い出である。
「反対はされないとは思うけれど、一応話をしないといけないし同棲となれば相手に逢わせろって言われるかも」
お付き合い数日で親に紹介の話は重いかなと思ったが、
「じゃあ、荷物取りに行くとき一緒に行く」
と言われ、さらに驚いた。
「良いの?」
「だっていずれは、結婚するんだろ」
「もちろん、俺はそのつもりだよ」
「だったら会うのは早い方がいいだろ」
塩田のこの先の人生に、自分の居場所があることを実感し、思わず感涙してしまいそうになる。
「塩田のご両親に挨拶は……」
「それはそのうちでいいだろ。どうせ何しても反対するんだし」
塩田は諦めというよりも、恒例行事だというような雰囲気を醸し出してそう言う。
「俺が何か言えば反対するのは、もはやパブロフ現象」
「パブロフの犬……つまり条件反射と?」
と電車が反応すれば、塩田が”そうだ”と頷く。
──反対するのは条件反射ってどうなの、それ。
「だから事後報告でいいだろ。住んでしまえばこっちのものだし、紀夫の両親が承諾してくれれば話しやすくなる」
”塩田の両親のことは塩田に任せるか”と思いながら、彼の手を引きウオークインクローゼットからベッドルームへ。
「中はちょっとひんやりするね」
と言いながらベッドに腰かけると、彼が電車の首に腕を絡め膝の上に乗り上げる。
電車は自分の膝に向き合って座る彼の背中に腕を回した。
──甘えん坊だなあ。可愛い。
「いつ越してくる?」
「じゃあ、週末。車も取りに行く」
「わかった」
満足そうに肩に顔を埋める彼。たった数日で人生って変わるんだなあと電車は思っていた。
「今日もぎゅってして寝てあげる」
と、眠そうな彼の背中を撫でながら、電車は幸せを噛みしめていたのだった。
──ずっとずっと一緒に居られたらいいな。
そうなれるように頑張らないとね。
「紀夫、好き」
「俺も好きだよ、塩田」
二人の愛はゆっくりと夜に溶けていく。
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