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6『恋愛経験者と未経験者たち』
1【R】君はいつから俺が好き?
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****side■電車
入社したばかりの頃は不安でたまらなかった。明らかに自分とは系統の違う二人が同僚で、唯一頼れる上司は、しょっちゅう社長に呼ばれ不在。板井は真面目で直ぐに、課長こと唯野から信頼を得ていたように思う。しかし唯野が気に入っていたのは塩田の方だった。
塩田は初っ端から上司にため口という、飛んでもない人物。電車はそれをヒヤヒヤしながら見ていたが、咎める者は誰もいなかった。むしろそんなところを買われて”是非に!”とスカウトされたらしい。
その上理解力が素晴らしく、すぐに仕事を覚え、しかも早かった。今でこそ仲の良い同僚三人組と評されているが、当時は無口な二人と上手くやれる気はしなかったのだ。
初めて泊めてもらった日。こちらから話しかけたら、塩田は意外と喋ることを知る。すごく楽しくて、いつの間にか彼に恋愛感情を抱いてしまっていた。
──あれからずっと、塩田のことが好きなんだ。
塩田はいつから俺のこと好きなんだろう?
聞いてみたいが、なかなか勇気が出ないものだ。
「塩田」
「うん?」
濡れた彼の唇を親指の腹でなぞる。上気した彼の瞳が潤んでいた。自分にだけ見せる、特別な姿。
「大好きだよ」
想いを口にすれば、彼が目を細め、
「俺も好き」
と言葉をくれる。
そんな小さなことで満たされる自分がいた。しかし好きな人と両想いになれるのは、奇跡のようなもの。
「塩田は自慰とかする?」
塩田はとても不思議な人だ。一緒に風呂に入っても前を隠さない。
なぜ隠さないのかと問えば、
『なぜ、自宅で隠す必要があるんだ?』
と逆に問われる始末。
襲いたいのを我慢する日々。恋とは忍耐なのだと学んだ。
「自慰?」
不思議そうに聞き返され、電車は手を彼の下腹部に滑らせる。
「!」
驚く彼をじっと見つめ、彼自身を握りこむ。そこはすでに形を持ち始め、鈴口が濡れていた。
「ちょ……」
戸惑う彼の首筋に唇を寄せ、緩く強く彼自身を握りこんだ手で上下する。
「んッ……」
「気持ちいいでしょ?」
彼の首筋を吸い上げ、優しく問うと彼は素直に頷く。
──塩田は嘘をつかない。
強がったりもしない。
だから可愛い。
一見冷たく感じる塩田だが、言葉を飾らないだけだと気づいた時、何故唯野が彼を気に入っているのか理解した。そのうち、真面目で常識人の板井と塩田が仲良くなったのを見て驚いたが、板井は人に何かを強要する人物でないことを知り納得した。二人はとても仲がいいと思う。だが自分と板井は塩田にとって、違うと感じていた。だから焦る必要はないと思っていた。
焦りを感じ始めたのは、副社長が塩田にちょっかいを出し始めたから。
──塩田が取られちゃうって思ったから、思い切って板井に相談したんだ。
それは板井と仲良くなった、きっかけでもある。
「そこ……」
「ここ? ここが好きなの?」
裏筋から繋がるぷくっと膨れた部分をくりくりと刺激してやると、彼は電車の腕を軽く掴む。潤んだ瞳が、何かを訴えていた。ほんのり開いた唇に口づけると、満足そうに瞼を閉じる。言葉にしなくても気づいてくれることが、彼にとって嬉しいことなのだと電車は知っていた。
ずっと一緒いて、彼を見ていたから。
「なあ。俺もする?」
自分ばかりが気持ちいいのが気になるのか、彼はそんなことを問う。
「ううん。俺は塩田の中で気持ちよくなりたいから」
「ほんとに入るのか? あんな……とこに」
不安そうな彼の声。優しくわき腹を撫でると、ぎゅっと抱きついてくる。
「大丈夫。痛くしないから」
「お前、初めてなんだろ?」
恋愛もそれ以上も初めての二人。しかし電車には、なぜか謎の自信があった。
「大丈夫だよ」
「不安だ」
しかし塩田は不安でいっぱいのようである。
入社したばかりの頃は不安でたまらなかった。明らかに自分とは系統の違う二人が同僚で、唯一頼れる上司は、しょっちゅう社長に呼ばれ不在。板井は真面目で直ぐに、課長こと唯野から信頼を得ていたように思う。しかし唯野が気に入っていたのは塩田の方だった。
塩田は初っ端から上司にため口という、飛んでもない人物。電車はそれをヒヤヒヤしながら見ていたが、咎める者は誰もいなかった。むしろそんなところを買われて”是非に!”とスカウトされたらしい。
その上理解力が素晴らしく、すぐに仕事を覚え、しかも早かった。今でこそ仲の良い同僚三人組と評されているが、当時は無口な二人と上手くやれる気はしなかったのだ。
初めて泊めてもらった日。こちらから話しかけたら、塩田は意外と喋ることを知る。すごく楽しくて、いつの間にか彼に恋愛感情を抱いてしまっていた。
──あれからずっと、塩田のことが好きなんだ。
塩田はいつから俺のこと好きなんだろう?
聞いてみたいが、なかなか勇気が出ないものだ。
「塩田」
「うん?」
濡れた彼の唇を親指の腹でなぞる。上気した彼の瞳が潤んでいた。自分にだけ見せる、特別な姿。
「大好きだよ」
想いを口にすれば、彼が目を細め、
「俺も好き」
と言葉をくれる。
そんな小さなことで満たされる自分がいた。しかし好きな人と両想いになれるのは、奇跡のようなもの。
「塩田は自慰とかする?」
塩田はとても不思議な人だ。一緒に風呂に入っても前を隠さない。
なぜ隠さないのかと問えば、
『なぜ、自宅で隠す必要があるんだ?』
と逆に問われる始末。
襲いたいのを我慢する日々。恋とは忍耐なのだと学んだ。
「自慰?」
不思議そうに聞き返され、電車は手を彼の下腹部に滑らせる。
「!」
驚く彼をじっと見つめ、彼自身を握りこむ。そこはすでに形を持ち始め、鈴口が濡れていた。
「ちょ……」
戸惑う彼の首筋に唇を寄せ、緩く強く彼自身を握りこんだ手で上下する。
「んッ……」
「気持ちいいでしょ?」
彼の首筋を吸い上げ、優しく問うと彼は素直に頷く。
──塩田は嘘をつかない。
強がったりもしない。
だから可愛い。
一見冷たく感じる塩田だが、言葉を飾らないだけだと気づいた時、何故唯野が彼を気に入っているのか理解した。そのうち、真面目で常識人の板井と塩田が仲良くなったのを見て驚いたが、板井は人に何かを強要する人物でないことを知り納得した。二人はとても仲がいいと思う。だが自分と板井は塩田にとって、違うと感じていた。だから焦る必要はないと思っていた。
焦りを感じ始めたのは、副社長が塩田にちょっかいを出し始めたから。
──塩田が取られちゃうって思ったから、思い切って板井に相談したんだ。
それは板井と仲良くなった、きっかけでもある。
「そこ……」
「ここ? ここが好きなの?」
裏筋から繋がるぷくっと膨れた部分をくりくりと刺激してやると、彼は電車の腕を軽く掴む。潤んだ瞳が、何かを訴えていた。ほんのり開いた唇に口づけると、満足そうに瞼を閉じる。言葉にしなくても気づいてくれることが、彼にとって嬉しいことなのだと電車は知っていた。
ずっと一緒いて、彼を見ていたから。
「なあ。俺もする?」
自分ばかりが気持ちいいのが気になるのか、彼はそんなことを問う。
「ううん。俺は塩田の中で気持ちよくなりたいから」
「ほんとに入るのか? あんな……とこに」
不安そうな彼の声。優しくわき腹を撫でると、ぎゅっと抱きついてくる。
「大丈夫。痛くしないから」
「お前、初めてなんだろ?」
恋愛もそれ以上も初めての二人。しかし電車には、なぜか謎の自信があった。
「大丈夫だよ」
「不安だ」
しかし塩田は不安でいっぱいのようである。
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