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5『電車と塩田』
5【微R】その笑顔が好き
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****side■塩田
五分の距離はあっという間。繋いだ手は心地よく、少し名残惜しかった。マンションの自室の前に立ち、ちらりと電車の方に視線を移すとそれは彼も同じようで。塩田は手を繋いだまま、ポケットを探ると鍵を取り出しドアを開ける。
「着いちゃったね」
「そうだな」
玄関に立ち止まり、じっと繋いだ手を見ていると、彼が手を口元へ引き寄せちゅっと口づけた。塩田の背中を何かが駆け抜ける。
「もっと繋いでいたかったな。……どうしたの?」
「いや」
どうもしていないと言おうとしたら、そのまま引き寄せられた。
「?」
不思議そうに彼を見つめていると、顎を捉えられ口づけられる。それは触れる程度の優しいキス。
「ごめん、嫌だった?」
と電車に問われ、
「嫌じゃない」
と答えれば、彼がホッとした表情をする。
「風呂行こうよ」
帰ったらすぐに風呂に入るのが塩田の習慣。遠隔操作で、家に着くころ風呂に湯が溜まっている。初めてそれを電車が見たとき、ハイテク! と言われたことを思い出す。
「えっと、一緒に?」
と彼。
「何、今更。毎日一緒に入ってるじゃないかよ」
初めて電車を家に泊めた日。帰るのが遅い上に翌日も仕事だったため、一緒に入ったのがきっかけで、それ以来彼が泊っていく日はいつも一緒に入ってた。髪を洗ってくれるのだが、それがとても気持ちよく、塩田のお気に入りだった。
「いやでも、変なことしない自信ないし」
と、彼。
「変なこと? 風呂場じゃなきゃダメなのか?」
と塩田がムッとして問うと、
「ベッドの上でも可ですが」
と返ってくる。
「じゃあ、いいだろ」
「それはベッドの上で、変なことをしても良いってこと?」
「変な内容にもよる」
──なんだ? 変なことって。
塩田は無知だったため、想像もつかなかった。しかし耳元で”気持ちいいこと”と言われ、なんだかわからないまま承諾してしまったのであった。
塩田は電車に寝転がっていれば良いよと言われ、言われるままにベッドに横になっていた。そんな塩田の肌を優しく撫でる彼の手。その気持ちよさに目を閉じると、自分に覆いかぶさった彼に口づけられた。
「気持ちいい?」
と問われ、
「お前の手、好き」
と答えると、彼が優しい笑みを浮かべる。
塩田は彼の笑顔がとても好きだった。
──優しくて柔らかい、お日様みたいな笑顔。
お前が笑っていると、なんだか幸せな気持ちになるんだ。
「俺は、塩田が大好きだよ」
髪を撫でる手を掴み、もっとと言うように口づけを強請る。何処に何をどうされるのか、先ほど簡単に説明された。怖くないと言ったらウソになるが、彼が望むなら叶えてあげたいと思う。
──動画を見る限りでは、痛そうではなかったしな。
ただ、あれがあんなところに入るのか? という不安はある。
「怖い?」
「少し」
「痛かったら言ってね?」
不安を取り除くように、優しい声で。
「わかった」
彼に身を任せ、夜はゆっくりと更けていく。
五分の距離はあっという間。繋いだ手は心地よく、少し名残惜しかった。マンションの自室の前に立ち、ちらりと電車の方に視線を移すとそれは彼も同じようで。塩田は手を繋いだまま、ポケットを探ると鍵を取り出しドアを開ける。
「着いちゃったね」
「そうだな」
玄関に立ち止まり、じっと繋いだ手を見ていると、彼が手を口元へ引き寄せちゅっと口づけた。塩田の背中を何かが駆け抜ける。
「もっと繋いでいたかったな。……どうしたの?」
「いや」
どうもしていないと言おうとしたら、そのまま引き寄せられた。
「?」
不思議そうに彼を見つめていると、顎を捉えられ口づけられる。それは触れる程度の優しいキス。
「ごめん、嫌だった?」
と電車に問われ、
「嫌じゃない」
と答えれば、彼がホッとした表情をする。
「風呂行こうよ」
帰ったらすぐに風呂に入るのが塩田の習慣。遠隔操作で、家に着くころ風呂に湯が溜まっている。初めてそれを電車が見たとき、ハイテク! と言われたことを思い出す。
「えっと、一緒に?」
と彼。
「何、今更。毎日一緒に入ってるじゃないかよ」
初めて電車を家に泊めた日。帰るのが遅い上に翌日も仕事だったため、一緒に入ったのがきっかけで、それ以来彼が泊っていく日はいつも一緒に入ってた。髪を洗ってくれるのだが、それがとても気持ちよく、塩田のお気に入りだった。
「いやでも、変なことしない自信ないし」
と、彼。
「変なこと? 風呂場じゃなきゃダメなのか?」
と塩田がムッとして問うと、
「ベッドの上でも可ですが」
と返ってくる。
「じゃあ、いいだろ」
「それはベッドの上で、変なことをしても良いってこと?」
「変な内容にもよる」
──なんだ? 変なことって。
塩田は無知だったため、想像もつかなかった。しかし耳元で”気持ちいいこと”と言われ、なんだかわからないまま承諾してしまったのであった。
塩田は電車に寝転がっていれば良いよと言われ、言われるままにベッドに横になっていた。そんな塩田の肌を優しく撫でる彼の手。その気持ちよさに目を閉じると、自分に覆いかぶさった彼に口づけられた。
「気持ちいい?」
と問われ、
「お前の手、好き」
と答えると、彼が優しい笑みを浮かべる。
塩田は彼の笑顔がとても好きだった。
──優しくて柔らかい、お日様みたいな笑顔。
お前が笑っていると、なんだか幸せな気持ちになるんだ。
「俺は、塩田が大好きだよ」
髪を撫でる手を掴み、もっとと言うように口づけを強請る。何処に何をどうされるのか、先ほど簡単に説明された。怖くないと言ったらウソになるが、彼が望むなら叶えてあげたいと思う。
──動画を見る限りでは、痛そうではなかったしな。
ただ、あれがあんなところに入るのか? という不安はある。
「怖い?」
「少し」
「痛かったら言ってね?」
不安を取り除くように、優しい声で。
「わかった」
彼に身を任せ、夜はゆっくりと更けていく。
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