29 / 96
5『電車と塩田』
5【微R】その笑顔が好き
しおりを挟む
****side■塩田
五分の距離はあっという間。繋いだ手は心地よく、少し名残惜しかった。マンションの自室の前に立ち、ちらりと電車の方に視線を移すとそれは彼も同じようで。塩田は手を繋いだまま、ポケットを探ると鍵を取り出しドアを開ける。
「着いちゃったね」
「そうだな」
玄関に立ち止まり、じっと繋いだ手を見ていると、彼が手を口元へ引き寄せちゅっと口づけた。塩田の背中を何かが駆け抜ける。
「もっと繋いでいたかったな。……どうしたの?」
「いや」
どうもしていないと言おうとしたら、そのまま引き寄せられた。
「?」
不思議そうに彼を見つめていると、顎を捉えられ口づけられる。それは触れる程度の優しいキス。
「ごめん、嫌だった?」
と電車に問われ、
「嫌じゃない」
と答えれば、彼がホッとした表情をする。
「風呂行こうよ」
帰ったらすぐに風呂に入るのが塩田の習慣。遠隔操作で、家に着くころ風呂に湯が溜まっている。初めてそれを電車が見たとき、ハイテク! と言われたことを思い出す。
「えっと、一緒に?」
と彼。
「何、今更。毎日一緒に入ってるじゃないかよ」
初めて電車を家に泊めた日。帰るのが遅い上に翌日も仕事だったため、一緒に入ったのがきっかけで、それ以来彼が泊っていく日はいつも一緒に入ってた。髪を洗ってくれるのだが、それがとても気持ちよく、塩田のお気に入りだった。
「いやでも、変なことしない自信ないし」
と、彼。
「変なこと? 風呂場じゃなきゃダメなのか?」
と塩田がムッとして問うと、
「ベッドの上でも可ですが」
と返ってくる。
「じゃあ、いいだろ」
「それはベッドの上で、変なことをしても良いってこと?」
「変な内容にもよる」
──なんだ? 変なことって。
塩田は無知だったため、想像もつかなかった。しかし耳元で”気持ちいいこと”と言われ、なんだかわからないまま承諾してしまったのであった。
塩田は電車に寝転がっていれば良いよと言われ、言われるままにベッドに横になっていた。そんな塩田の肌を優しく撫でる彼の手。その気持ちよさに目を閉じると、自分に覆いかぶさった彼に口づけられた。
「気持ちいい?」
と問われ、
「お前の手、好き」
と答えると、彼が優しい笑みを浮かべる。
塩田は彼の笑顔がとても好きだった。
──優しくて柔らかい、お日様みたいな笑顔。
お前が笑っていると、なんだか幸せな気持ちになるんだ。
「俺は、塩田が大好きだよ」
髪を撫でる手を掴み、もっとと言うように口づけを強請る。何処に何をどうされるのか、先ほど簡単に説明された。怖くないと言ったらウソになるが、彼が望むなら叶えてあげたいと思う。
──動画を見る限りでは、痛そうではなかったしな。
ただ、あれがあんなところに入るのか? という不安はある。
「怖い?」
「少し」
「痛かったら言ってね?」
不安を取り除くように、優しい声で。
「わかった」
彼に身を任せ、夜はゆっくりと更けていく。
五分の距離はあっという間。繋いだ手は心地よく、少し名残惜しかった。マンションの自室の前に立ち、ちらりと電車の方に視線を移すとそれは彼も同じようで。塩田は手を繋いだまま、ポケットを探ると鍵を取り出しドアを開ける。
「着いちゃったね」
「そうだな」
玄関に立ち止まり、じっと繋いだ手を見ていると、彼が手を口元へ引き寄せちゅっと口づけた。塩田の背中を何かが駆け抜ける。
「もっと繋いでいたかったな。……どうしたの?」
「いや」
どうもしていないと言おうとしたら、そのまま引き寄せられた。
「?」
不思議そうに彼を見つめていると、顎を捉えられ口づけられる。それは触れる程度の優しいキス。
「ごめん、嫌だった?」
と電車に問われ、
「嫌じゃない」
と答えれば、彼がホッとした表情をする。
「風呂行こうよ」
帰ったらすぐに風呂に入るのが塩田の習慣。遠隔操作で、家に着くころ風呂に湯が溜まっている。初めてそれを電車が見たとき、ハイテク! と言われたことを思い出す。
「えっと、一緒に?」
と彼。
「何、今更。毎日一緒に入ってるじゃないかよ」
初めて電車を家に泊めた日。帰るのが遅い上に翌日も仕事だったため、一緒に入ったのがきっかけで、それ以来彼が泊っていく日はいつも一緒に入ってた。髪を洗ってくれるのだが、それがとても気持ちよく、塩田のお気に入りだった。
「いやでも、変なことしない自信ないし」
と、彼。
「変なこと? 風呂場じゃなきゃダメなのか?」
と塩田がムッとして問うと、
「ベッドの上でも可ですが」
と返ってくる。
「じゃあ、いいだろ」
「それはベッドの上で、変なことをしても良いってこと?」
「変な内容にもよる」
──なんだ? 変なことって。
塩田は無知だったため、想像もつかなかった。しかし耳元で”気持ちいいこと”と言われ、なんだかわからないまま承諾してしまったのであった。
塩田は電車に寝転がっていれば良いよと言われ、言われるままにベッドに横になっていた。そんな塩田の肌を優しく撫でる彼の手。その気持ちよさに目を閉じると、自分に覆いかぶさった彼に口づけられた。
「気持ちいい?」
と問われ、
「お前の手、好き」
と答えると、彼が優しい笑みを浮かべる。
塩田は彼の笑顔がとても好きだった。
──優しくて柔らかい、お日様みたいな笑顔。
お前が笑っていると、なんだか幸せな気持ちになるんだ。
「俺は、塩田が大好きだよ」
髪を撫でる手を掴み、もっとと言うように口づけを強請る。何処に何をどうされるのか、先ほど簡単に説明された。怖くないと言ったらウソになるが、彼が望むなら叶えてあげたいと思う。
──動画を見る限りでは、痛そうではなかったしな。
ただ、あれがあんなところに入るのか? という不安はある。
「怖い?」
「少し」
「痛かったら言ってね?」
不安を取り除くように、優しい声で。
「わかった」
彼に身を任せ、夜はゆっくりと更けていく。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
こいじまい。 -Ep.the British-
ベンジャミン・スミス
BL
貿易会社に勤務する月嶋春人は上司に片想いをしていた。
しかし、その想いは儚く散ってしまう。
いつまでも上司を忘れることが出来ない春人に「無理に忘れる必要は無い。」と、声をかけたのはイギリス人のアルバート・ミラーだった。
いつのまにか英国紳士なアルバートに惹かれていく春人は徐々に新しい恋への1歩を踏み出し始めていた。
身長差30cm、年の差18歳
おまけに相手は男で、外国人。
様々な壁にぶつかりながらも愛を育んでいく2人のオフィスラブ。
************
素敵な表紙はもなか様から
いただきました。
ありがとうございます。
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる