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3『唯野と塩田』
5【微R】板井と唯野、初めての夜
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****side■板井
部屋にはムードたっぷりな音楽が、静かに流れていた。板井は滑らかな唯野の肌を脇腹から胸に向かって撫で上げる。
「んっ……」
腕で口元を覆った彼が、僅かに声をあげた。板井の手のひらが胸の突起に触れたからだ。
──押して駄目なら引いてみろとは言うけれど。
そんなことをしたつもりはなかった。辛いから逃げただけなのに、彼はそんな自分に縋ってくれる。しかも自分の為に、その身を委ねようと言うのだ。
彼の過去は、耳を塞ぎたくなるような内容であった。彼は会長に何をされたのか、大まかにだが話してくれた。好きでもない相手に、性的なことを要求され、従ったという。
幸い、社長が助けてくれた為、大事は免れたようだが。
──タチの彼が、女のように扱われるのはプライドが許さなかったのではないだろうか?
それでも妻となる彼女の為にプライドを捨てたのだ。今もそうだ、板井の為に身体を開く彼。
──俺はあなたがそこまでして、繋ぎ止めたい相手なのだろうか?
「修二さん」
「う……ん?」
耳元で優しくその名を呼ぶ。
「会長にどこを、どうされたんです?」
「え?」
首すじに吸い付き、脇腹を優しく撫でる。
「そんな、十年以上前のこと……」
「言いたくない?」
と、問えば彼は真っ赤になった。
つまり、そういうことをされたということ。板井はおもむろに、彼自身を握り込む。全て塗り替えたいと思った。
──俺、ネコなんだけどな。
板井は見た目のせいで、どちらかというとタチに見られるため経験がなかった。しかしネコだからこそ、どこをどうされたいか解る。
もっとも、男同士なのだから良いところなんて、聞かずともわかっている。
「板井、怒ってる?」
「なんで怒るんです? 俺がまだこれっくらい小さい頃でしょ」
人差し指と親指で小さくUの字を作って見せると、
「そんな小さかったら、産まれてないだろ」
と唯野が笑う。
「そもそも、そこまで年離れてないし」
「まあ、産まれてはいましたね」
そっと彼の髪を撫でると、絹糸のような感触。一体なにを食べたら、こんな風になるんだと不思議に思う。身体を鍛えているのは知っているが、年齢相応には思えない。
「その頃、小学生かな」
と板井が年齢を計算して言うと、彼が切なげな表情をした。
「板井、後悔しないのか?」
「何をです?」
「俺が社会人一年目のとき、板井は小学生だったんだぞ? それくらい離れてる」
板井は、煩いなと言うように彼の唇を塞ぐ。甘い口づけ。
「あのですね。例えば80歳と70歳だったら大差ないでしょう?」
「もっと離れてる……」
──年の差気にしてる? 可愛いなぁ。
「一歳と二十歳で付き合ってたら、犯罪というか……イカれてるかもしれませんが、社会人になったら年なんか関係ないでしょ?」
二十歳の時に思ったことだ。大人は思ったほど大人ではない。自分が憧れていたものは、自分の意思でそうなっていくからなれるものであって、年を重ねたところでなれるものではないことを。
就職して、配属された部署は大きな会社の小さな部署だった。しかし上司である唯野 修二という男は自分が憧れていた『大人』という存在。凄く仕事ができる上に、嫌な顔一つせずに部下の面倒をみていた。
失敗しても怒ることなく、終わらなければ手伝ってくれる。慣れない仕事に疲れ切った自分たちを優しく気遣ってくれる人。いつも笑顔を絶やさない、尊敬できる上司だった。だからついていこうと思った。
それが恋になるなんて、想定外だったが。
「好きだからつき合ってる。年齢なんかどうでもいいです」
「板井……ごめん」
「いいですよ。それよりも」
「うん?」
「続きしたい。修二さんのここに、早く挿れたい」
と唯野の秘部に指を滑り込ませると、彼は真っ赤になったのだった。
部屋にはムードたっぷりな音楽が、静かに流れていた。板井は滑らかな唯野の肌を脇腹から胸に向かって撫で上げる。
「んっ……」
腕で口元を覆った彼が、僅かに声をあげた。板井の手のひらが胸の突起に触れたからだ。
──押して駄目なら引いてみろとは言うけれど。
そんなことをしたつもりはなかった。辛いから逃げただけなのに、彼はそんな自分に縋ってくれる。しかも自分の為に、その身を委ねようと言うのだ。
彼の過去は、耳を塞ぎたくなるような内容であった。彼は会長に何をされたのか、大まかにだが話してくれた。好きでもない相手に、性的なことを要求され、従ったという。
幸い、社長が助けてくれた為、大事は免れたようだが。
──タチの彼が、女のように扱われるのはプライドが許さなかったのではないだろうか?
それでも妻となる彼女の為にプライドを捨てたのだ。今もそうだ、板井の為に身体を開く彼。
──俺はあなたがそこまでして、繋ぎ止めたい相手なのだろうか?
「修二さん」
「う……ん?」
耳元で優しくその名を呼ぶ。
「会長にどこを、どうされたんです?」
「え?」
首すじに吸い付き、脇腹を優しく撫でる。
「そんな、十年以上前のこと……」
「言いたくない?」
と、問えば彼は真っ赤になった。
つまり、そういうことをされたということ。板井はおもむろに、彼自身を握り込む。全て塗り替えたいと思った。
──俺、ネコなんだけどな。
板井は見た目のせいで、どちらかというとタチに見られるため経験がなかった。しかしネコだからこそ、どこをどうされたいか解る。
もっとも、男同士なのだから良いところなんて、聞かずともわかっている。
「板井、怒ってる?」
「なんで怒るんです? 俺がまだこれっくらい小さい頃でしょ」
人差し指と親指で小さくUの字を作って見せると、
「そんな小さかったら、産まれてないだろ」
と唯野が笑う。
「そもそも、そこまで年離れてないし」
「まあ、産まれてはいましたね」
そっと彼の髪を撫でると、絹糸のような感触。一体なにを食べたら、こんな風になるんだと不思議に思う。身体を鍛えているのは知っているが、年齢相応には思えない。
「その頃、小学生かな」
と板井が年齢を計算して言うと、彼が切なげな表情をした。
「板井、後悔しないのか?」
「何をです?」
「俺が社会人一年目のとき、板井は小学生だったんだぞ? それくらい離れてる」
板井は、煩いなと言うように彼の唇を塞ぐ。甘い口づけ。
「あのですね。例えば80歳と70歳だったら大差ないでしょう?」
「もっと離れてる……」
──年の差気にしてる? 可愛いなぁ。
「一歳と二十歳で付き合ってたら、犯罪というか……イカれてるかもしれませんが、社会人になったら年なんか関係ないでしょ?」
二十歳の時に思ったことだ。大人は思ったほど大人ではない。自分が憧れていたものは、自分の意思でそうなっていくからなれるものであって、年を重ねたところでなれるものではないことを。
就職して、配属された部署は大きな会社の小さな部署だった。しかし上司である唯野 修二という男は自分が憧れていた『大人』という存在。凄く仕事ができる上に、嫌な顔一つせずに部下の面倒をみていた。
失敗しても怒ることなく、終わらなければ手伝ってくれる。慣れない仕事に疲れ切った自分たちを優しく気遣ってくれる人。いつも笑顔を絶やさない、尊敬できる上司だった。だからついていこうと思った。
それが恋になるなんて、想定外だったが。
「好きだからつき合ってる。年齢なんかどうでもいいです」
「板井……ごめん」
「いいですよ。それよりも」
「うん?」
「続きしたい。修二さんのここに、早く挿れたい」
と唯野の秘部に指を滑り込ませると、彼は真っ赤になったのだった。
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