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────1章【圭一と咲夜】
♡0:愛しの恋人
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****♡Side・咲夜
────大崎邸にて。
【姫川咲夜】は窓に面したカウンターで頬杖をつき、シトシトと雨の降る裏庭を眺めていた。スピーカーからはしっとりと流れる”To The Limit”が部屋をロマンチックに彩っている。
父に連れられ大崎邸に引っ越してきたのはまだ四つの時。離婚の理由を知ったのは最近のことだった。
大崎邸は三階建てのアンティークで大きな洋館である。二十名ほどの従業員こと、通称ファミリーが住み込みで働いている賑やかな屋敷だ。
一階には従業員食堂や大食堂、エントランス、パソコンルーム、大浴場などがあり、二階には書斎やリビング、三階には家族個々の部屋がある。ここへ越してきたとき咲夜も個室を与えられたが、一般家庭で育った咲夜は広い部屋にはなれることが出来ず久隆と同室となった。
「咲夜」
制服から私服に着替えた【大崎久隆】が咲夜の傍にやってくるとニコッと微笑む。同じ年の義理の兄である。ベビーフェイスで可愛らしい彼は声も良い。咲夜にとっては婚約者でもあった。
「今日は遅かったんだね」
と咲夜が両腕を伸ばせばハグをしてくれる彼。
「うん、ちょっと買い物をしていて」
お土産と言って彼は小さな箱を咲夜の前に置いた。
「なあに?」
「開けてみて」
隣に腰かける彼はニコニコしている。咲夜は彼の様子から中身が特別なことに気づく。
──久隆は僕のものだ。
それは紛れもない事実。
大崎一族、姫川一族公認の”運命の恋人”であることは間違いない。
だけど……。
二人の関係は簡単なものではなかった。久隆の実兄である【大崎圭一】は弟である彼を溺愛している。それは度を超えていた。四月になり、咲夜たちは高等部にあがり、圭一は大学生に。元々、父親似で端正な顔立ちをした圭一は、幼なじみである大里家の長女に”美の女神に愛されし男”などと言うあだ名をつけられるほどの美男子へと成長。
しかし咲夜も負けてはいなかった。姫川一の美形に父を持つ中性的な美人である。
──圭一兄さんには負けられない。
ぼやぼやしてたら、すぐに奪われてしまう。
何せ、久隆はお兄ちゃん子だ。
「綺麗…」
小箱の中身はプラチナリングであった。
「高校生になったし、恋人の証」
笑顔のわけは、彼の左手薬指に。どうやらペアリングらしい。
「ねえ、咲夜。つけてくれるよね?」
甘えた声でおねだりをする彼が愛しい。
「うん」
咲夜がニコッと微笑むと、彼はほんのり頬を染める。
──兄さんに奪われるくらいなら、僕が。
久隆の初めてを……。
「ねえ、嵌めて」
「うん」
咲夜が左手を差し出すと、彼はその手を取りリングを嵌めてくれた。
『ぼくのおひめさま。世界一、可愛いーの。まもってあげるね』
天使のような彼は目をキラキラさせて咲夜を見つめ。
『くーは、ぼくの王子さまなの?』
そんな久隆が咲夜は世界で一番好きだ。
『うん』
『じゃあ、大きくなったらけっこんしようね』
だから、全てを手に入れたい。
『うん!』
嬉しそうなあの笑顔、可愛らしい心ごと全部。
咲夜は彼を見つめ幼い頃の約束を思い出す。
きっと彼は咲夜に抱かれるなんて想像はしていないだろう。
──ごめんね、久隆。
僕は君の初めてが、全部欲しい。
兄に奪われてしまう前に。
「ねえ、キスしよ」
「! ……うん」
咲夜は頬を染める彼に口づけた……。
────大崎邸にて。
【姫川咲夜】は窓に面したカウンターで頬杖をつき、シトシトと雨の降る裏庭を眺めていた。スピーカーからはしっとりと流れる”To The Limit”が部屋をロマンチックに彩っている。
父に連れられ大崎邸に引っ越してきたのはまだ四つの時。離婚の理由を知ったのは最近のことだった。
大崎邸は三階建てのアンティークで大きな洋館である。二十名ほどの従業員こと、通称ファミリーが住み込みで働いている賑やかな屋敷だ。
一階には従業員食堂や大食堂、エントランス、パソコンルーム、大浴場などがあり、二階には書斎やリビング、三階には家族個々の部屋がある。ここへ越してきたとき咲夜も個室を与えられたが、一般家庭で育った咲夜は広い部屋にはなれることが出来ず久隆と同室となった。
「咲夜」
制服から私服に着替えた【大崎久隆】が咲夜の傍にやってくるとニコッと微笑む。同じ年の義理の兄である。ベビーフェイスで可愛らしい彼は声も良い。咲夜にとっては婚約者でもあった。
「今日は遅かったんだね」
と咲夜が両腕を伸ばせばハグをしてくれる彼。
「うん、ちょっと買い物をしていて」
お土産と言って彼は小さな箱を咲夜の前に置いた。
「なあに?」
「開けてみて」
隣に腰かける彼はニコニコしている。咲夜は彼の様子から中身が特別なことに気づく。
──久隆は僕のものだ。
それは紛れもない事実。
大崎一族、姫川一族公認の”運命の恋人”であることは間違いない。
だけど……。
二人の関係は簡単なものではなかった。久隆の実兄である【大崎圭一】は弟である彼を溺愛している。それは度を超えていた。四月になり、咲夜たちは高等部にあがり、圭一は大学生に。元々、父親似で端正な顔立ちをした圭一は、幼なじみである大里家の長女に”美の女神に愛されし男”などと言うあだ名をつけられるほどの美男子へと成長。
しかし咲夜も負けてはいなかった。姫川一の美形に父を持つ中性的な美人である。
──圭一兄さんには負けられない。
ぼやぼやしてたら、すぐに奪われてしまう。
何せ、久隆はお兄ちゃん子だ。
「綺麗…」
小箱の中身はプラチナリングであった。
「高校生になったし、恋人の証」
笑顔のわけは、彼の左手薬指に。どうやらペアリングらしい。
「ねえ、咲夜。つけてくれるよね?」
甘えた声でおねだりをする彼が愛しい。
「うん」
咲夜がニコッと微笑むと、彼はほんのり頬を染める。
──兄さんに奪われるくらいなら、僕が。
久隆の初めてを……。
「ねえ、嵌めて」
「うん」
咲夜が左手を差し出すと、彼はその手を取りリングを嵌めてくれた。
『ぼくのおひめさま。世界一、可愛いーの。まもってあげるね』
天使のような彼は目をキラキラさせて咲夜を見つめ。
『くーは、ぼくの王子さまなの?』
そんな久隆が咲夜は世界で一番好きだ。
『うん』
『じゃあ、大きくなったらけっこんしようね』
だから、全てを手に入れたい。
『うん!』
嬉しそうなあの笑顔、可愛らしい心ごと全部。
咲夜は彼を見つめ幼い頃の約束を思い出す。
きっと彼は咲夜に抱かれるなんて想像はしていないだろう。
──ごめんね、久隆。
僕は君の初めてが、全部欲しい。
兄に奪われてしまう前に。
「ねえ、キスしよ」
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