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1 雛本三兄弟異世界へゆく
0・仲良くご臨終です
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「ちょっと待って、お兄ちゃん」
少し離れた場所から兄、和宏《かずひろ》に制止をかける妹、佳奈《かな》。
「なんで突っ込んでんの?」
「ツッコむだろ? それが俺の使命なんだから」
と和宏。
「いやいやおかしいって! 後尾でしょ?」
「だから、交尾だろ?」
あの日、俺たちは思い出した。
日本語には同じ読みの言葉がたくさんあることを。
間違っていても、微妙に噛み合ってしまうことを。
クリスマスシーズン到来。街は電気代がかかりそうな装飾でチカチカしている。
節電を心がけなくてはならない時代が来たというのに、何たることか。
時は5×××年。
人類は何年経とうが学ばない生き物なので、今年もこれでもかと電気を無駄に消費する。
──俺の知ったことではないがな。
和宏は友人の結婚式に妹と参加。
弟は友人との約束があると言って欠席をし、その代わりと言って帰りに迎えに来てくれた。これが間違いのもととは知らずに。
雛本三兄弟。長子和宏は社会人であり、二つ下の妹と五つ下の弟はまだ大学生である。妹はクリーム色のひざ丈のドレスを着ており、和宏はスーツ姿。
オーソドックスな、いで立ちであろう。
弟は友人との遊びの帰りと言うこともあり、ベージュのチノパンにV字ネックのロングTシャツにワインレッドのパーカーを着ていた。
和宏は慣れないハイヒールでフラフラと歩く妹を心配しつつその後を歩いていたのだが、彼女は案の定ぐきっと足を捻りそのまま車道へ。
ほら、言わんこっちゃない!
「佳奈! 危ない」
彼女の手を掴もうとしたところ、靴紐を結びなおしていた弟に引っかかり、飛び越えて車道へ。
──優人よ、何故そんなところで靴紐を結んでいるんだ!
「お姉ちゃん! 兄さん!」
二人が車道へ飛び出したことに気づき、慌てて立ち上がった弟の優人は後ろから来た人に激突、靴紐を踏んで車道へ飛び出した。
直後こちらへ向かっているデコトラが見え、そこで三人の意識は途絶えたのだった。
──ドイツもこいつも電気を無駄にしやがって!
残念ながら、その恨み言は届くことはない。
三人が次に意識を取り戻した時、真っ白な空間に居た。
きっとどんなに掃除をしようがこんなにきれいにならないだろう、真っ白な場所に。
眩しいほどに明るく、
「ドイツもこいつも電気を使い過ぎだ!」
と和宏が不満を漏らしたところで、ダイナマイトボディの女性が出現したのだった。
ダイナマイトボディというのは、テロを起こすためにダイナマイトを身体に巻き付けている人ではなく、つまりはセクシーダイナマ……エンドレスになりそうなので割愛。簡単に言えばスタイルが良いということだ。
はい、なんの話でしたっけ?
「おお! ジャパニーズ!」
とナイスバディ子が和宏の両手を握り、歓喜の声をあげる。
──見ろ、優人。
ついに俺の時代が来たのだ。
だが彼はこちらを見てはいなかった。
和宏が人生初のモテ気が到来かと思いきや、
「ジャパン。アキバ最高デス!」
と彼女は言い始めたのだった。
それを見て妹の佳奈の瞳がキラキラする。
嫌な予感しかしない。
和宏はぐぎぎっと音のしそうなぎこちない様子で弟の方に向かってアイコンタクトを取ろうとしたが、彼はナイスバディ子の親衛隊に囲まれていた。
──お前は何処にいてもフラグしか立てないな!
「どうかした?」
親衛隊から離れ和宏に近づいてくる弟。
手には数枚の連絡先の書かれた紙の様なもの。
「どうするんだ。それは」
「ネットワーク大事。何かあった時のためにね」
──いいのか⁈
おい、優人の彼女よ。
優人が天国で浮気しているぞ!
残念ながらその声は届くことはなかった。
そして天国でもない!
少し離れた場所から兄、和宏《かずひろ》に制止をかける妹、佳奈《かな》。
「なんで突っ込んでんの?」
「ツッコむだろ? それが俺の使命なんだから」
と和宏。
「いやいやおかしいって! 後尾でしょ?」
「だから、交尾だろ?」
あの日、俺たちは思い出した。
日本語には同じ読みの言葉がたくさんあることを。
間違っていても、微妙に噛み合ってしまうことを。
クリスマスシーズン到来。街は電気代がかかりそうな装飾でチカチカしている。
節電を心がけなくてはならない時代が来たというのに、何たることか。
時は5×××年。
人類は何年経とうが学ばない生き物なので、今年もこれでもかと電気を無駄に消費する。
──俺の知ったことではないがな。
和宏は友人の結婚式に妹と参加。
弟は友人との約束があると言って欠席をし、その代わりと言って帰りに迎えに来てくれた。これが間違いのもととは知らずに。
雛本三兄弟。長子和宏は社会人であり、二つ下の妹と五つ下の弟はまだ大学生である。妹はクリーム色のひざ丈のドレスを着ており、和宏はスーツ姿。
オーソドックスな、いで立ちであろう。
弟は友人との遊びの帰りと言うこともあり、ベージュのチノパンにV字ネックのロングTシャツにワインレッドのパーカーを着ていた。
和宏は慣れないハイヒールでフラフラと歩く妹を心配しつつその後を歩いていたのだが、彼女は案の定ぐきっと足を捻りそのまま車道へ。
ほら、言わんこっちゃない!
「佳奈! 危ない」
彼女の手を掴もうとしたところ、靴紐を結びなおしていた弟に引っかかり、飛び越えて車道へ。
──優人よ、何故そんなところで靴紐を結んでいるんだ!
「お姉ちゃん! 兄さん!」
二人が車道へ飛び出したことに気づき、慌てて立ち上がった弟の優人は後ろから来た人に激突、靴紐を踏んで車道へ飛び出した。
直後こちらへ向かっているデコトラが見え、そこで三人の意識は途絶えたのだった。
──ドイツもこいつも電気を無駄にしやがって!
残念ながら、その恨み言は届くことはない。
三人が次に意識を取り戻した時、真っ白な空間に居た。
きっとどんなに掃除をしようがこんなにきれいにならないだろう、真っ白な場所に。
眩しいほどに明るく、
「ドイツもこいつも電気を使い過ぎだ!」
と和宏が不満を漏らしたところで、ダイナマイトボディの女性が出現したのだった。
ダイナマイトボディというのは、テロを起こすためにダイナマイトを身体に巻き付けている人ではなく、つまりはセクシーダイナマ……エンドレスになりそうなので割愛。簡単に言えばスタイルが良いということだ。
はい、なんの話でしたっけ?
「おお! ジャパニーズ!」
とナイスバディ子が和宏の両手を握り、歓喜の声をあげる。
──見ろ、優人。
ついに俺の時代が来たのだ。
だが彼はこちらを見てはいなかった。
和宏が人生初のモテ気が到来かと思いきや、
「ジャパン。アキバ最高デス!」
と彼女は言い始めたのだった。
それを見て妹の佳奈の瞳がキラキラする。
嫌な予感しかしない。
和宏はぐぎぎっと音のしそうなぎこちない様子で弟の方に向かってアイコンタクトを取ろうとしたが、彼はナイスバディ子の親衛隊に囲まれていた。
──お前は何処にいてもフラグしか立てないな!
「どうかした?」
親衛隊から離れ和宏に近づいてくる弟。
手には数枚の連絡先の書かれた紙の様なもの。
「どうするんだ。それは」
「ネットワーク大事。何かあった時のためにね」
──いいのか⁈
おい、優人の彼女よ。
優人が天国で浮気しているぞ!
残念ながらその声は届くことはなかった。
そして天国でもない!
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