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2 動き出した時間
5・【仲間】
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****♡Side・瀬戸
「いらっしゃい」
声をかけられてペコリと頭を下げる瀬戸。中には見知った二人がいた。もちろん現実で会うのは初めてだが。
この店のマスターを務めるjackこと、本名は【神楽優羽】というらしい。いつも男性のような恰好をしているが肉体性別は女性。
そしてもう一人、カウンターに腰かけ彼女と話をしているのは髪が長くスタイルの良いqueenこと、本名は【音羽薫】だ。薫は見た目は女性だが肉体性別は男性。胸は作り物らしいが、下はまだだと言っていた。
『わたしたちは世間一般ではトランスジェンダーと言われるのだろうけれど、その分類にも違和感があるのよね』
薫はAGの中で瀬戸に肉体性別について明かした時、神楽のことも含めてそういった。
『そもそも契約書などを作成する時は、分類として男女しかないわけでしょう? とはいえ、そういうものを書かされることって日常の中で頻繁にあるわけではない。となると性別を意識しないといけないのは通常公共のトイレくらいなのよね』
『それは同感だな』
傍で薫の話を聞いていた神楽が頷く。
近年ではLGBT関連でいろいろと騒がれていることもあるが、本当にトランスジェンダーで心と体の不一致に違和感がある人は公共の風呂を好んで利用しない。だが排泄は自然なものなので、どうしても自分の意思でどうにかなるものではない。
『性的なものに関しては、男か女かというよりはタチかネコかじゃないかと思うのよ』
隣でうんうんと頷く神楽。瀬戸はそんな二人を見ながら気が合うんだなと思った。いっそのことつき合ってしまえばいいのにとも思う。
以前の二人の会話を思い出しながら、薫の隣に腰かける瀬戸。
「セトって本名だったのね」
三人ともアバター作成はリアルスキャンを選んでいたため、ゲーム内外での差はない。それでも一応名乗った方が良いだろうと思った瀬戸は自己紹介をしたのである。学生証を見せながら。
「兄が気づいてくれるかもしれないなと思って」
「セトって強いから、てっきりセト神から来てるのかと思ったわ」
「強い?」
薫の言葉に聞き返す瀬戸。
瀬戸はゲーム内で彼女たちに戦う姿を視られた記憶はない。なのでなにを基準にそんなことを言っているのか気になった。
「装備見たら分かるわよ。良い装備は高いもの」
高いモノを手に入れるためにはそれなりに強い敵を倒す必要はある。
「セトのメイン職業は【舞い手】でしょう? ソロでやる職業じゃないもの。チームに入る前は基本ソロだったって聞いたわよ」
「別に好んでソロだったわけじゃない」
そもそもAGというゲームを始めたのは兄の目撃情報があったからだ。仲の良い先輩たちもプレイしていると聞いて安易に足を踏み入れたものの、その先輩の内一人はGMだという。
「しかし、セトのところのチームサブリーダーは凄いよな。GMなんだろう?」
神楽はグラスを拭きながら。
彼女たちはAGというゲームの中でも特殊な立場にある。
ユーザーたちに秩序を守らせるために選ばれた七人の調停者の内の二人だ。だがそれは表向き。本当の任務は他にある。
「元はゲームをやり込むつもりはなかったらしいんだけどね」
GMとはゲームマスターのことだ。AGはシステムが複雑な上、職業数も多いことからGMの称号を持っている者は数が少ない。
「天才っているのよねえ」
アップルパイにフォークを差しながら、羨ましいとでも言いたげにそう口にする薫。
「いいなあ」
「称号欲しわけ?」
それは素朴な疑問。
「だってGMになるためには全部の職業のランクを星2にあげてるってことでしょう? ボーナスめっちゃもらえるじゃない。その辺の雑魚倒したって私たちが軽いボス倒すより貰えるのよ? ゲーム内マネー」
ランクは最大星3。ランク5の上からマスター度合いによって星が増えるシステムだ。
「何か欲しいものでもあるのか?」
神楽が瀬戸の前に珈琲を出しながら。
「いらっしゃい」
声をかけられてペコリと頭を下げる瀬戸。中には見知った二人がいた。もちろん現実で会うのは初めてだが。
この店のマスターを務めるjackこと、本名は【神楽優羽】というらしい。いつも男性のような恰好をしているが肉体性別は女性。
そしてもう一人、カウンターに腰かけ彼女と話をしているのは髪が長くスタイルの良いqueenこと、本名は【音羽薫】だ。薫は見た目は女性だが肉体性別は男性。胸は作り物らしいが、下はまだだと言っていた。
『わたしたちは世間一般ではトランスジェンダーと言われるのだろうけれど、その分類にも違和感があるのよね』
薫はAGの中で瀬戸に肉体性別について明かした時、神楽のことも含めてそういった。
『そもそも契約書などを作成する時は、分類として男女しかないわけでしょう? とはいえ、そういうものを書かされることって日常の中で頻繁にあるわけではない。となると性別を意識しないといけないのは通常公共のトイレくらいなのよね』
『それは同感だな』
傍で薫の話を聞いていた神楽が頷く。
近年ではLGBT関連でいろいろと騒がれていることもあるが、本当にトランスジェンダーで心と体の不一致に違和感がある人は公共の風呂を好んで利用しない。だが排泄は自然なものなので、どうしても自分の意思でどうにかなるものではない。
『性的なものに関しては、男か女かというよりはタチかネコかじゃないかと思うのよ』
隣でうんうんと頷く神楽。瀬戸はそんな二人を見ながら気が合うんだなと思った。いっそのことつき合ってしまえばいいのにとも思う。
以前の二人の会話を思い出しながら、薫の隣に腰かける瀬戸。
「セトって本名だったのね」
三人ともアバター作成はリアルスキャンを選んでいたため、ゲーム内外での差はない。それでも一応名乗った方が良いだろうと思った瀬戸は自己紹介をしたのである。学生証を見せながら。
「兄が気づいてくれるかもしれないなと思って」
「セトって強いから、てっきりセト神から来てるのかと思ったわ」
「強い?」
薫の言葉に聞き返す瀬戸。
瀬戸はゲーム内で彼女たちに戦う姿を視られた記憶はない。なのでなにを基準にそんなことを言っているのか気になった。
「装備見たら分かるわよ。良い装備は高いもの」
高いモノを手に入れるためにはそれなりに強い敵を倒す必要はある。
「セトのメイン職業は【舞い手】でしょう? ソロでやる職業じゃないもの。チームに入る前は基本ソロだったって聞いたわよ」
「別に好んでソロだったわけじゃない」
そもそもAGというゲームを始めたのは兄の目撃情報があったからだ。仲の良い先輩たちもプレイしていると聞いて安易に足を踏み入れたものの、その先輩の内一人はGMだという。
「しかし、セトのところのチームサブリーダーは凄いよな。GMなんだろう?」
神楽はグラスを拭きながら。
彼女たちはAGというゲームの中でも特殊な立場にある。
ユーザーたちに秩序を守らせるために選ばれた七人の調停者の内の二人だ。だがそれは表向き。本当の任務は他にある。
「元はゲームをやり込むつもりはなかったらしいんだけどね」
GMとはゲームマスターのことだ。AGはシステムが複雑な上、職業数も多いことからGMの称号を持っている者は数が少ない。
「天才っているのよねえ」
アップルパイにフォークを差しながら、羨ましいとでも言いたげにそう口にする薫。
「いいなあ」
「称号欲しわけ?」
それは素朴な疑問。
「だってGMになるためには全部の職業のランクを星2にあげてるってことでしょう? ボーナスめっちゃもらえるじゃない。その辺の雑魚倒したって私たちが軽いボス倒すより貰えるのよ? ゲーム内マネー」
ランクは最大星3。ランク5の上からマスター度合いによって星が増えるシステムだ。
「何か欲しいものでもあるのか?」
神楽が瀬戸の前に珈琲を出しながら。
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