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1 それぞれの事情
6・【好き】
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****♡Side・利久
「カイ、帰ろう」
「ん」
海斗は相変わらず、利久がいないところでは無愛想。しかし、利久が声をかけると、笑顔を見せる。愛しいと言うように首を少し傾け、利久の髪に触れるその指先にドキリとした。
「カイ」
「どうした?」
彼の胸に額を押し当てその温もりを感じる。
「好き」
「俺も、好きだよ」
優しく抱き寄せられ心が躍る。利久は海斗の香りが好きだ。とても安らぐ。今すぐにでもキスしたいと思うのだが、いかんせんここは外だ。
「何か、食べて帰ろうか」
「うん」
───ねえ、僕のことも食べてよ。
結局、最後まではしてくれない彼。確かに初めてが酷かったからトラウマはある。しかし慣らさず入れたものの、ちゃんと性交用のジェルは使ったのだ。無理矢理突かれて痛かったし、少し血も出た。
だが大事にはいたっていない。直ぐに病院に連れていかれたことも、不幸中の幸いだったのだろう。それよりも海斗に嫌われたからあんなことをされたのではないかという、心的ショックの方が大きかった。
小さい頃からずっと一緒で。大崎家と姫川家にある伝承の【運命の恋人】。二人はそう言う関係だった。告白こそできなかったけれど互いに惹かれ合っていたはずだ。
海斗は、華奢で女の子のように可愛らしい顔をしている利久とは違い端正な顔立ちをしているし、クールでモテる。
彼に想いを寄せた人が利久に嫉妬し嫌がらせを行ったとしても不思議ではなかった。しかも彼はセレブ校で有名なK学園理事長の長男。
海斗がさりげなく利久の手を握り歩き出す。お昼、何処に連れて行ってくれるのだろうと彼の横顔を見上げると何かに気づき渋い顔をした。
「どうしたの? カイ」
「あいつ、また……」
彼の呟きを聞いて視線の方に顔を向ける。彼の視線の先は正門。そこに良く見知った美少年が立っていたのだが、数人の男たちに囲まれていた。
「おい」
囲んでいる者たちへ海斗は声をかける。
「海斗先輩」
怠そうに門に寄り掛かっていた美少年は海斗に気づくと、少しだけ首を傾げた。
「大崎じゃないかよ」
と、彼を囲んでいた中の一人が声を上げる。
「俺の連れだ。絡むな」
近づいてきたのがK学園理事長の子息だと気づき、彼らは足早に去って行く。
「瀬戸」
利久は慌て彼に近寄った。
彼の名は【瀬戸遥】と言う。彼は無口で人見知りの激しい美少年で利久たちの一級下の後輩にあたる。瀬戸には昔から懐かれ、二人が高校卒業後はこうして時々大学まで押し掛けてくるのだ。それだけならば可愛い後輩なのだが。
「怪我してない? 大丈夫?」
と利久が声をかけると、
「リク。瀬戸が怪我するなんてことは素人相手じゃありえないから」
と海斗が口を挟む。
すると、
「海斗先輩は、随分と俺のこと買ってくれてるんですね」
と、瀬戸が門から背中を起こす。
「利久先輩は優しいのに」
とむぎゅっと瀬戸が利久に抱きつく。
しかし海斗は動じなかった。
「飯行くぞ。リク、瀬戸」
「あーあ、ヤキモチも妬かない。海斗先輩冷めてる」
と棒読みの瀬戸。
「瀬戸に妬いても仕方ないだろ」
そう、この美少年は自分たちにとっては弟同然だったのである。
「利久先輩、行こ」
瀬戸は利久の手を掴むと歩き出したのだった。
「カイ、帰ろう」
「ん」
海斗は相変わらず、利久がいないところでは無愛想。しかし、利久が声をかけると、笑顔を見せる。愛しいと言うように首を少し傾け、利久の髪に触れるその指先にドキリとした。
「カイ」
「どうした?」
彼の胸に額を押し当てその温もりを感じる。
「好き」
「俺も、好きだよ」
優しく抱き寄せられ心が躍る。利久は海斗の香りが好きだ。とても安らぐ。今すぐにでもキスしたいと思うのだが、いかんせんここは外だ。
「何か、食べて帰ろうか」
「うん」
───ねえ、僕のことも食べてよ。
結局、最後まではしてくれない彼。確かに初めてが酷かったからトラウマはある。しかし慣らさず入れたものの、ちゃんと性交用のジェルは使ったのだ。無理矢理突かれて痛かったし、少し血も出た。
だが大事にはいたっていない。直ぐに病院に連れていかれたことも、不幸中の幸いだったのだろう。それよりも海斗に嫌われたからあんなことをされたのではないかという、心的ショックの方が大きかった。
小さい頃からずっと一緒で。大崎家と姫川家にある伝承の【運命の恋人】。二人はそう言う関係だった。告白こそできなかったけれど互いに惹かれ合っていたはずだ。
海斗は、華奢で女の子のように可愛らしい顔をしている利久とは違い端正な顔立ちをしているし、クールでモテる。
彼に想いを寄せた人が利久に嫉妬し嫌がらせを行ったとしても不思議ではなかった。しかも彼はセレブ校で有名なK学園理事長の長男。
海斗がさりげなく利久の手を握り歩き出す。お昼、何処に連れて行ってくれるのだろうと彼の横顔を見上げると何かに気づき渋い顔をした。
「どうしたの? カイ」
「あいつ、また……」
彼の呟きを聞いて視線の方に顔を向ける。彼の視線の先は正門。そこに良く見知った美少年が立っていたのだが、数人の男たちに囲まれていた。
「おい」
囲んでいる者たちへ海斗は声をかける。
「海斗先輩」
怠そうに門に寄り掛かっていた美少年は海斗に気づくと、少しだけ首を傾げた。
「大崎じゃないかよ」
と、彼を囲んでいた中の一人が声を上げる。
「俺の連れだ。絡むな」
近づいてきたのがK学園理事長の子息だと気づき、彼らは足早に去って行く。
「瀬戸」
利久は慌て彼に近寄った。
彼の名は【瀬戸遥】と言う。彼は無口で人見知りの激しい美少年で利久たちの一級下の後輩にあたる。瀬戸には昔から懐かれ、二人が高校卒業後はこうして時々大学まで押し掛けてくるのだ。それだけならば可愛い後輩なのだが。
「怪我してない? 大丈夫?」
と利久が声をかけると、
「リク。瀬戸が怪我するなんてことは素人相手じゃありえないから」
と海斗が口を挟む。
すると、
「海斗先輩は、随分と俺のこと買ってくれてるんですね」
と、瀬戸が門から背中を起こす。
「利久先輩は優しいのに」
とむぎゅっと瀬戸が利久に抱きつく。
しかし海斗は動じなかった。
「飯行くぞ。リク、瀬戸」
「あーあ、ヤキモチも妬かない。海斗先輩冷めてる」
と棒読みの瀬戸。
「瀬戸に妬いても仕方ないだろ」
そう、この美少年は自分たちにとっては弟同然だったのである。
「利久先輩、行こ」
瀬戸は利久の手を掴むと歩き出したのだった。
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