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1 それぞれの事情
4・【理性】
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****♡side:海斗
「ねえ? 頼むから泣かないで」
泣きじゃくる利久を前に、海斗はどうして良いのかわからなかった。
「なんで、簡単に他の人に触らせるの?」
しゃくりあげながら利久はそう問う。
「なんで、簡単に他の人に触れるの?」
「リク……」
「嫉妬で、頭おかしくなりそうだよ!」
「くっ」
「僕には触らないくせに! 僕は触るのも嫌なくらい汚れてるの?」
「そんなんじゃない」
──ちがうんだよ。
怖いんだ。
また君を傷つけてしまうのが。
「そんなに僕が嫌いなの?」
「リク、ちがう」
ぎゅっと拳を握って、抱き締めたいのを耐えた。
「カイのことが好きなのに」
「え?」
「僕はカイが好きだよ」
だから辛いと彼は言う。
「ねえ、僕だけみてよ」
絞り出すように。
「僕に触れてよ」
彼の瞳から涙が止めどなく落ちてゆく。
海斗はその頬にそっと手を伸ばした。
「リク」
名前を呼ばれて彼は瞳を閉じる。
少し低い体温。
──ああ、ダメだ。
**■**
「カイ?」
つもり積もった想いが俺を狂わせる。
「んっ」
後頭部に手を伸ばし支えて少し上向かせ、その唇を塞いだ。苦しがって利久が口を開くと、その可愛らしい唇の中に舌を滑り込ませる。
静かな部屋の中にイヤらしい水音が響く。
「カイ、苦しいよ」
弱々しく訴えるので、名残惜しいが離れた。
「ごめん」
恥ずかしそうに海斗を上目遣いで見上げる利久がとても可愛い。
「好きだよ、リク」
耳元でささやけば利久がへたりこんでしまう。
「カイ」
両腕を自分に伸ばしハグを求める彼が愛しくてたまらない。膝をついて海斗は利久を抱き締めた。一年半ぶりの確かなその温もりにとても安堵する。
「リク、愛してる」
「へ?」
「すきだけじゃ足りない」
なんて返して良いのかわからないようで、彼はただ海斗にしがみついた。
「カイがしたいなら、僕……」
「うん?」
「その……」
密着していた、身体を離して彼をみやれば真っ赤になって何かを言い辛そうにしている。
「抱いてもいいよ」
小さな声だった。すごく恥ずかしそうにしているのが可愛かった。
「それは……したいけど、できないよ」
「……」
「リクが怖がるだろ」
──正直、したい。
けれど、自分には前科がある。
**■**
「カイ。僕ね、知ってるから」
「?」
海斗を見上げる彼の瞳が揺れた。
「花菜ちゃんに全部聞いて知ってるから、だから」
大丈夫と彼はいった。
「あいつが話したの?」
「うん、教えてくれた」
だから、怖くないと利久は言う。
「今度は優しくしてくれる?」
「それは、もちろん」
「気持ちよく……んっ」
卑猥なことをいい始める利久の口を再び塞ぐ。
「煽らないでよ」
「え?」
キョトンとしている利久の細身のネクタイを引き抜き、シャツのボタンをゆっくりと焦らすようにはずしながら何度もキスをした。
「カイ……」
シャツを広げると、イヤらしいピンク色の胸の飾りが顔を出す。
「あっ」
触れれば利久が甘い声をだした。
「リクの身体はいやらしいね」
「やぁっ」
腕の中で快感に震えている。
「 あっ」
わざと音をたてて乳首をなめ回し、
「リクが好きだよ」
「うんっ」
「俺、リクが居ないとダメなんだ」
すがりつく海斗の……髪を利久が撫でてくれる。
「リクが居ないと俺」
──心が壊れてしまう。
無になってしまう。
「カイ」
呼ばれて顔を上げると利久が海斗の涙を指先で掬った。そこではじめて泣いていたのだと知る。
「僕、カイを閉じ込めてしまいたい」
「え?」
利久の指先が海斗の髪に触れる。
「その声も笑顔も、カイの全てを独り占めしたい」
利久の中に眠る狂気のような愛に震えた。
それは恐れではない。
「もう、誰にも触れさせたくない」
「リク?」
「恋人になってくれる?」
「いいのか? 俺で」
「カイがいいの」
「リク、好きだよ。もう離さない」
「ねえ? 頼むから泣かないで」
泣きじゃくる利久を前に、海斗はどうして良いのかわからなかった。
「なんで、簡単に他の人に触らせるの?」
しゃくりあげながら利久はそう問う。
「なんで、簡単に他の人に触れるの?」
「リク……」
「嫉妬で、頭おかしくなりそうだよ!」
「くっ」
「僕には触らないくせに! 僕は触るのも嫌なくらい汚れてるの?」
「そんなんじゃない」
──ちがうんだよ。
怖いんだ。
また君を傷つけてしまうのが。
「そんなに僕が嫌いなの?」
「リク、ちがう」
ぎゅっと拳を握って、抱き締めたいのを耐えた。
「カイのことが好きなのに」
「え?」
「僕はカイが好きだよ」
だから辛いと彼は言う。
「ねえ、僕だけみてよ」
絞り出すように。
「僕に触れてよ」
彼の瞳から涙が止めどなく落ちてゆく。
海斗はその頬にそっと手を伸ばした。
「リク」
名前を呼ばれて彼は瞳を閉じる。
少し低い体温。
──ああ、ダメだ。
**■**
「カイ?」
つもり積もった想いが俺を狂わせる。
「んっ」
後頭部に手を伸ばし支えて少し上向かせ、その唇を塞いだ。苦しがって利久が口を開くと、その可愛らしい唇の中に舌を滑り込ませる。
静かな部屋の中にイヤらしい水音が響く。
「カイ、苦しいよ」
弱々しく訴えるので、名残惜しいが離れた。
「ごめん」
恥ずかしそうに海斗を上目遣いで見上げる利久がとても可愛い。
「好きだよ、リク」
耳元でささやけば利久がへたりこんでしまう。
「カイ」
両腕を自分に伸ばしハグを求める彼が愛しくてたまらない。膝をついて海斗は利久を抱き締めた。一年半ぶりの確かなその温もりにとても安堵する。
「リク、愛してる」
「へ?」
「すきだけじゃ足りない」
なんて返して良いのかわからないようで、彼はただ海斗にしがみついた。
「カイがしたいなら、僕……」
「うん?」
「その……」
密着していた、身体を離して彼をみやれば真っ赤になって何かを言い辛そうにしている。
「抱いてもいいよ」
小さな声だった。すごく恥ずかしそうにしているのが可愛かった。
「それは……したいけど、できないよ」
「……」
「リクが怖がるだろ」
──正直、したい。
けれど、自分には前科がある。
**■**
「カイ。僕ね、知ってるから」
「?」
海斗を見上げる彼の瞳が揺れた。
「花菜ちゃんに全部聞いて知ってるから、だから」
大丈夫と彼はいった。
「あいつが話したの?」
「うん、教えてくれた」
だから、怖くないと利久は言う。
「今度は優しくしてくれる?」
「それは、もちろん」
「気持ちよく……んっ」
卑猥なことをいい始める利久の口を再び塞ぐ。
「煽らないでよ」
「え?」
キョトンとしている利久の細身のネクタイを引き抜き、シャツのボタンをゆっくりと焦らすようにはずしながら何度もキスをした。
「カイ……」
シャツを広げると、イヤらしいピンク色の胸の飾りが顔を出す。
「あっ」
触れれば利久が甘い声をだした。
「リクの身体はいやらしいね」
「やぁっ」
腕の中で快感に震えている。
「 あっ」
わざと音をたてて乳首をなめ回し、
「リクが好きだよ」
「うんっ」
「俺、リクが居ないとダメなんだ」
すがりつく海斗の……髪を利久が撫でてくれる。
「リクが居ないと俺」
──心が壊れてしまう。
無になってしまう。
「カイ」
呼ばれて顔を上げると利久が海斗の涙を指先で掬った。そこではじめて泣いていたのだと知る。
「僕、カイを閉じ込めてしまいたい」
「え?」
利久の指先が海斗の髪に触れる。
「その声も笑顔も、カイの全てを独り占めしたい」
利久の中に眠る狂気のような愛に震えた。
それは恐れではない。
「もう、誰にも触れさせたくない」
「リク?」
「恋人になってくれる?」
「いいのか? 俺で」
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「リク、好きだよ。もう離さない」
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