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1 それぞれの事情

0・【呪縛】R♡

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 ****♡side:海斗

「リク、怖がらないで。痛いことしないから」
 胸の中で震える彼をそっと抱き締める。初めての性交は彼にとって恐怖でしかなったから、トラウマになってしまっていた。どんなに取り払いたくても、過去は変えられない。大切にしたかったのに、脅されて無理矢理彼を抱いた。あれからずっと彼の傍にいるのが怖くて避け続け……。

 ──どうすれば良かった?
  俺といたらまた傷つけるかもしれない。
  そう思って離れた。
  もう、俺のせいで傷ついたりしないように。
  ただ、君を守りたかった。それだけなのに。

 大学で再会し誤解をといて恋人となったが、あの出来事は彼をずっと怯えさせている。抱かれたいと望んでいながら、そのたび怯えて震える。
「カイ、大丈夫だから……してよ」
 震えながらも必死で抱きつく彼が愛しい。何度も口づけ、頬を撫でる。どうかこの体温に馴れてくれたらいいのにと願いながら。
「挿いれるのは、やめよう?」
「やだッ……カイとしたいの……僕でイって欲しい」
 ぎゅっとしがみつき必死な彼の瞳から涙が零れる。泣かせたくなんてないのに。そんなことを思いながら唇をそっと目元に寄せた。

「カイ、お願い」
「身体がこんなに怖がってるのに」
「いつもちゃんと気持ちよくなるでしょ?」
 分かってはいる、夢中になれば震えは治まり甘い声を上げはじめることは。
「カイに浮気されたくないッ」
「しなし、してないよ」
 必死な彼の髪を撫でる。可愛らしい顔、ぷくっとした唇、キメの細かい滑らかな肌、柔らかい髪。容姿だけでも充分魅力的だ。
「カイモテるし、すぐ女の子に馴れなれしくされるし」
 ヤキモチ妬きで独占欲が強いところも可愛くてたまらない。
「僕に夢中にさせたい」
 充分夢中なのに。

「夢中だよ。指だけでも、十分だよ」
「やだッ」
 さっきほどから、ゆっくりと彼の蕾を慣らすように抜き差ししている指。
「イかせてあげるから」
「やッ……あああッ……そこダメ……」
 彼の好きなところを擦ってやれば甘い声を漏らす。
「俺はリクのその声だけで十分興奮する」
 耳元で甘く囁く。正直イきそうであった。
「カイ、ズルイッ……だめぇ……んんッ」
「イっていいよ」

 ──繋がれなくたって、君に触れられるなら十分なのに……。
  どうしてそんなに不安なの? なあ、リク。
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