R18【オメガバース】愛を持たざる者ども─αとΩに愛されたβ─

crazy’s7@体調不良不定期更新中

文字の大きさ
上 下
141 / 145
20話『運命を背負いし者と魂の番』

5 皇子の苦悩と魂の番の真実

しおりを挟む
****♡Side・β(カイル)

───魂の番……。

 それは自分の半身とも言われる特別な存在の者だ。
 近づけば互いに発情し合い、止めるものが居なければ、そのまま番となってしまう。番になることを望まない者からすれば恐ろしい存在だ。
 そのような者がレンにいると知り、カイルはショックを受けていた。
 その相手が居るものは極稀であるし、何よりβが独立国を建立してからは、αと出逢う確率が格段に減っている。
 仮にいたとしても、出会わぬまま一生を終えるほうが多いと言えよう。

「カイル……」
 自分がβなばかりに、こんなに悔しい想いをするのであろうか。
 辛い想いをするのであろうか。
 レンを奪われたくない。
 レンも、自分と居ることを望んでいる。なのに、自分がβと言うだけで不安になってしまう。

「カイル、大好きだよ」
「レン……」
 カイルの涙がレンの頬に落ちる。これは悔し涙だ。
 彼が腕を伸ばし、カイルの頬を包む。
「カイル、どうして泣くの?」
「どうして、こんなにレンを愛しているのに、俺はレンと番になれないんだろう?」
 番になれたならレンを誰かに奪われる心配なんてしなくていいのに、とカイルが思っていると、
「カイル。つがいは恋人でも伴侶でもない。ただの繁殖の相手なんだよ」
と、彼は言う。

「愛でもない、ただ子孫を残すための相手。そこに気持ちなんて存在しない。番というのはただ子を産むための道具、産ませるための道具になり果てるだけなんだよ。もしそこに愛があるなら、動物のように番だなんて言葉は充てないはずでしょう?」
 互いに求め合い愛すればこそ、番は意味のあるものとなる。
 好きでもない相手と運命だなんだと言って結ばれたところで、そこに幸せなどない。そんなことは妹が亡くなった時に理解していたはずだ。
 それなのにレンのこととなると、自分を見失い、意味をはき違えてしまう。

 相手のαだって名前も知らない、見たことのない相手と突然番となったところで、幸せなはずはない。しかも彼には恋人がいるのだ。
 救いたくても救えず、傍に居ることさえできなくなった恋人が。
 恋人を救いたいと願ったからこそ罠に嵌り、国に帰ることすら出来なくなった。目の前で恋人を凌辱され、自分の無力さを知ってなお、その恋人を救いたいと願い愛し続けている。
 そんな彼が、他の者と番になりたいと思うはずはない。

───そうだ、どちらも被害者なんだ。呪われた性の。

「レン愛しているよ」
 レンの手を握りしめる。
 その手に光るリングに触れると、少し心が落ち着いた。
 何一人で、被害者面しているんだと心の中で自分自身を叱りつける。現実をみなければならない。なすべきことを考えなくては。
「僕もだよ、カイル」
 カイルは一度屋敷へ戻ることにした。
 直接逢うことが出来なくてもリモートと言う手段があると、思いなおしながら。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。 そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。 【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】 そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?! 【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】 ◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。 ◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。 ◆現在・毎日17時頃更新。 ◆年齢制限の話数には(R)がつきます。ご注意ください。 ◆未来、部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺

俺にとってはあなたが運命でした

ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会 βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂 彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。 その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。 それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

ふしだらオメガ王子の嫁入り

金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか? お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

孤独を癒して

星屑
BL
運命の番として出会った2人。 「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、 デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。 *不定期更新。 *感想などいただけると励みになります。 *完結は絶対させます!

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

処理中です...