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20話『運命を背負いし者と魂の番』
2 事件進展への希望
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****♡Side・β(カイル)
担当の刑事に連絡をすると準備を整え待っているとの返事を貰い、そのまま警察署へ向かうことに。
一人が同乗し、一人が車を出してくれるとの事。自分たちは三人を迎えに行かなければならないので、好都合だった。
「もうすぐクライスに逢えるね」
レンの言葉にカイルは頷く。
たった一週間なのに、どうしてこんなに寂しく感じてしまうのだろうか。
早く会って、クライスをハグしてあげたいと思っていた。しばらくすると、車は警察署前のロータリーに停車する。
「おはようございます」
と、いつもの担当刑事。
すこし離れたところに、六人乗りの白いワゴン車が、止まっている。
担当刑事はカイル達の車の助手席に乗り込むと、
「何かあった時の為に三人同行させていただくことにしましたよ」
と笑う。
「あの車が先導します」
と、続けて。
「それはありがたい」
先導車が走り出し、カイル達の車が後へ続く。
「事件の方、何か分かったことは?」
と、カイル。
「いや、それがフン詰まりでして。ホテルの方に行ったはいいが、人物が特定できないでしょう? せめて名前くらいわかればねえ」
と刑事。
そこで黙って聞いていたレンが、口を開く。
「それなら、こちらで保護してる」
と。
「はい?」
刑事は展開についていけないようだ。
レンはこれまでの経緯を簡単に話し始める。その中には推理が多く含まれるが、新しい着目点が多くあった。中でも刑事が一番興味を持ったのが、奇跡の子と彼らの会社についてだ。
「これはαの統治国家に潜入捜査に入るしか、手立てはありませんな」
そうなのだ、真っ向から真実を明るみに出すのはとても難しい。
国内で起きたことだけならば、何とか調べ上げることは可能。しかし、二つの国が関わってくるとなるとそうはいかない。知り合いに頼むことすら不可能だと思われる。
そこでカイルは、あることを思い付く。
「なあ、クライスに頼むことはできないだろうか」
その言葉に二人は同時にカイルの方を見た。
「そんな危険な事、させれないよ」
と、レン。
しかしカイルはクライス自体に何かさせる、という意味合いで口にしたわけではない。
「そうじゃなくて、クライスの知り合いは統治国家に居るんだろう? 誰かに資料集めを頼めないだろうか」
「そういうことですか」
と、刑事。
朧気ではあるが、クライスの父は位のある人だと聞いた気がしたのだ。
カイルはスマホを操作すると執事に連絡を取る。相手が出るとテレビ電話に切り替えた。
クライスを電話口に呼び出し簡単に説明を述べ、協力してくれそうな人はいないかと問いかける。
『それなら、父さんが……』
久々に顔を合わせ早く逢いたい気持ちを募らせつつ、事件解決の為の糸口になりそうな光を見つけ、カイル達は胸を撫でおろしたのだった。
担当の刑事に連絡をすると準備を整え待っているとの返事を貰い、そのまま警察署へ向かうことに。
一人が同乗し、一人が車を出してくれるとの事。自分たちは三人を迎えに行かなければならないので、好都合だった。
「もうすぐクライスに逢えるね」
レンの言葉にカイルは頷く。
たった一週間なのに、どうしてこんなに寂しく感じてしまうのだろうか。
早く会って、クライスをハグしてあげたいと思っていた。しばらくすると、車は警察署前のロータリーに停車する。
「おはようございます」
と、いつもの担当刑事。
すこし離れたところに、六人乗りの白いワゴン車が、止まっている。
担当刑事はカイル達の車の助手席に乗り込むと、
「何かあった時の為に三人同行させていただくことにしましたよ」
と笑う。
「あの車が先導します」
と、続けて。
「それはありがたい」
先導車が走り出し、カイル達の車が後へ続く。
「事件の方、何か分かったことは?」
と、カイル。
「いや、それがフン詰まりでして。ホテルの方に行ったはいいが、人物が特定できないでしょう? せめて名前くらいわかればねえ」
と刑事。
そこで黙って聞いていたレンが、口を開く。
「それなら、こちらで保護してる」
と。
「はい?」
刑事は展開についていけないようだ。
レンはこれまでの経緯を簡単に話し始める。その中には推理が多く含まれるが、新しい着目点が多くあった。中でも刑事が一番興味を持ったのが、奇跡の子と彼らの会社についてだ。
「これはαの統治国家に潜入捜査に入るしか、手立てはありませんな」
そうなのだ、真っ向から真実を明るみに出すのはとても難しい。
国内で起きたことだけならば、何とか調べ上げることは可能。しかし、二つの国が関わってくるとなるとそうはいかない。知り合いに頼むことすら不可能だと思われる。
そこでカイルは、あることを思い付く。
「なあ、クライスに頼むことはできないだろうか」
その言葉に二人は同時にカイルの方を見た。
「そんな危険な事、させれないよ」
と、レン。
しかしカイルはクライス自体に何かさせる、という意味合いで口にしたわけではない。
「そうじゃなくて、クライスの知り合いは統治国家に居るんだろう? 誰かに資料集めを頼めないだろうか」
「そういうことですか」
と、刑事。
朧気ではあるが、クライスの父は位のある人だと聞いた気がしたのだ。
カイルはスマホを操作すると執事に連絡を取る。相手が出るとテレビ電話に切り替えた。
クライスを電話口に呼び出し簡単に説明を述べ、協力してくれそうな人はいないかと問いかける。
『それなら、父さんが……』
久々に顔を合わせ早く逢いたい気持ちを募らせつつ、事件解決の為の糸口になりそうな光を見つけ、カイル達は胸を撫でおろしたのだった。
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