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19話『囚われたαと真実』
1 彼の事情と真実
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****♡Side・α(クライス)
「君の部屋で話したいのだけれど、良いかな?」
クライスはそう聞かれ、こくりと頷く。願ったり叶ったりだと思いながら。
クライスは立ち上がると、彼を連れ立って部屋に戻る。彼に椅子を勧め、自分は簡易キッチンのケトルに水を入れるとスイッチを押す。
「!」
気づけば、彼はクライスの傍に居た。
「君が知りたいことは、何となく分かっている」
と、彼。
クライスは警戒した。
ベッドルームには執事が、息を顰め待機している。声をあげればいつでも助けてくれるはずだ。
「俺の恋人についてだろ」
それはあながち間違ってはいない。彼が誰にどのようにして捕まったのか、それも調査の内に含まれる。
しかしそんな事よりも、クライスには調べなければならないことがある。
「あなたは、何故ずっとこの国に留まっておられるのです?」
調べなければならないのは、彼自身について。必ず納得のいく理由があるはずだとレンは言った。
すると彼は口元に人差し指を立て、上着の胸の辺りを手で開くと軽く内側を見せる。小さな四角いものがついていて、赤いランプを灯していた。
クライスはそれが盗聴器であることに気づき、声を発しそうになった。クライスは思わず口元を抑える。
上着を戻すと、
「恋人にいつか会えると思って」
と、彼は返答した。
クライスは状況を理解し、コースターにこちらの状況を書いて彼に見せる。執事とここにいること。彼を調べに来たことなど。
すると彼は頷き、ズボンの裾を捲って見せた。
そこには信じられないものが。
「これ、淹れてもらえますか? 上着を置いてくるので」
執事に事情を知らせるためクライスがコースターに走り書きをすると、彼は、
「わかった」
と言って、この部屋に監視カメラは仕掛けられていないことをジェスチャーで教えてくれた。
───そうか。だから彼は、この国から出ることが出来ないんだ。
彼がこの国に留まっているのではなく出られなくなった理由を把握し、クライスは胸を痛める。
彼が何故、自分に”独立記念日にはここに留まらないように”と忠告したのかもわかった。ただ、彼は直接そこには関与していないのだ。
クライスは上着を置くという口実でゆっくりと寝室のドアを開けると、執事に向かって人差し指を口もとに持っていき、コースターの走り書きを彼に見せる。
「そういうことでしたか」
と、執事は小声で。
「彼にはあなたが居ることを話しました。筆談したいとのことです」
と、クライスが事情を告げると、執事は頷いた。
クライスに付いて彼のところへ引き返すと、執事はコースターに何やら走り書きをし彼に見せる。すると彼の表情が変わった。
本当に? とその顔は言っている。執事は黙って頷いた。
クライスたちのミッションが今、静かに始まろうとしていたのだった。
「君の部屋で話したいのだけれど、良いかな?」
クライスはそう聞かれ、こくりと頷く。願ったり叶ったりだと思いながら。
クライスは立ち上がると、彼を連れ立って部屋に戻る。彼に椅子を勧め、自分は簡易キッチンのケトルに水を入れるとスイッチを押す。
「!」
気づけば、彼はクライスの傍に居た。
「君が知りたいことは、何となく分かっている」
と、彼。
クライスは警戒した。
ベッドルームには執事が、息を顰め待機している。声をあげればいつでも助けてくれるはずだ。
「俺の恋人についてだろ」
それはあながち間違ってはいない。彼が誰にどのようにして捕まったのか、それも調査の内に含まれる。
しかしそんな事よりも、クライスには調べなければならないことがある。
「あなたは、何故ずっとこの国に留まっておられるのです?」
調べなければならないのは、彼自身について。必ず納得のいく理由があるはずだとレンは言った。
すると彼は口元に人差し指を立て、上着の胸の辺りを手で開くと軽く内側を見せる。小さな四角いものがついていて、赤いランプを灯していた。
クライスはそれが盗聴器であることに気づき、声を発しそうになった。クライスは思わず口元を抑える。
上着を戻すと、
「恋人にいつか会えると思って」
と、彼は返答した。
クライスは状況を理解し、コースターにこちらの状況を書いて彼に見せる。執事とここにいること。彼を調べに来たことなど。
すると彼は頷き、ズボンの裾を捲って見せた。
そこには信じられないものが。
「これ、淹れてもらえますか? 上着を置いてくるので」
執事に事情を知らせるためクライスがコースターに走り書きをすると、彼は、
「わかった」
と言って、この部屋に監視カメラは仕掛けられていないことをジェスチャーで教えてくれた。
───そうか。だから彼は、この国から出ることが出来ないんだ。
彼がこの国に留まっているのではなく出られなくなった理由を把握し、クライスは胸を痛める。
彼が何故、自分に”独立記念日にはここに留まらないように”と忠告したのかもわかった。ただ、彼は直接そこには関与していないのだ。
クライスは上着を置くという口実でゆっくりと寝室のドアを開けると、執事に向かって人差し指を口もとに持っていき、コースターの走り書きを彼に見せる。
「そういうことでしたか」
と、執事は小声で。
「彼にはあなたが居ることを話しました。筆談したいとのことです」
と、クライスが事情を告げると、執事は頷いた。
クライスに付いて彼のところへ引き返すと、執事はコースターに何やら走り書きをし彼に見せる。すると彼の表情が変わった。
本当に? とその顔は言っている。執事は黙って頷いた。
クライスたちのミッションが今、静かに始まろうとしていたのだった。
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