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17話『発情期と奇跡の子』

7 新たな情報と推理

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****♡Side・Ω(レン)

 夜中に目が覚める。
 いや、意識が戻ると言った方が正しいか。カイルは食事を取りに行ったようで、不在だった。
 ベッドの傍らにあるサイドテーブルに手を伸ばし、スマホを掴む。電源をクリックし指紋認証後、画面をスライドすると一件のメッセージ。クライスが執事のスマホを借りて寄こしたらしい。
 そこにはラムという一言だけが書かれていた。

「子、羊……か?」
 レンは自分がクライスに頼んだことを反芻し、意味に辿り着く。
 そういうことだったのか、とレンは納得する。自分の推論の誤りを正せば、もっと真実に近づくと思っていた。

───執事にも、カイルにも気づかれないようにしたんだろう。

 あの特別に見えた執事から妹姫への態度は”親子”の関係によるものだった。この文面からは親子関係になった理由は分からないが、いずれクライスの口から聞くことが出来るはずだ。
 それよりも、この事が重要だから先に知らせて来たと考えたほうがいい。

───となると、国王の正妻は執事と愛し合っていた可能性がある。

 単に、何らかの理由で二人の間に子を作ろうとしただけならば、急いで知らせることもないからだ。
 となると妃が床に臥せてしまった理由は、愛しい人の子を失ってしまったショックからだと考えられる。危険を冒してまで二人の間に設けた子。
 では犯人は、妃か執事に恨みを抱いてるというのか。
 レンはクライスとは違う結果に辿り着こうとしていた。

───だが、国王は酷いバッシングを受ける結果になっている。

 王家に恨みを抱く者の犯行となるのか。
 犯人の予測はついてはいる。そして最終目的も分かってはいるが、どうも第一の事件を起こした理由がいまいちピンと来ない。
 もしも”Ωに恋人を宛がう法律”が現王の時に作られたのなら繋がるが、この法律は既に百年以上も前から存在するのだ。
 βがαから独立し国を建立した時から。
 階下から足音がし、レンはスマホの画面を暗くして元に位置に戻す。

───あの時、城に出向いたのはカイルが壊れてしまったからだ。

 王家に初めて産まれたΩの子は国の象徴であり、国民にとって最も守るべき存在であった。カイルはβの象徴として国民に愛されているが。

 そこでレンは、ある推理に辿り着く。
 もしかすると、犯人が憎んでいるのは”国民たち”なのではないだろうかと。法律に疑念を抱かず、家族や恋人がいても”Ωに求められれば”引き離される。
 せめてそう言った者は、除外されるべき。そう考えたとしてもおかしくはない。
 国民の象徴として愛される”特別なβ”であるカイルでさえ、恋人がいるにも関わらずレンが指名したから”密かに”引き離された。
 レンはカイルに恋人が知ることは知らされていない。もし知らされていたならば”違う未来”があったかもしれないのに。

「レン、食事にしよう」
 部屋に入って来たカイルが、レンの気配に気づき傍まで寄って来る。
 給仕の者がリビングのいつものところへ食事を並べていた。
「起きられらる?」
「カイル……」
 発情期の間はとても体力を消耗する上に、意識が正常へと戻らないと食事ができない。レンはカイルにハグを求めた。
「愛してるよ、カイル」
 ぎゅっと抱きしめてくれる彼に愛を囁く。
 これ以上、彼が傷つかないことを願いながら。
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