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17話『発情期と奇跡の子』
4 彼との計画
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****♡Side・Ω(レン)
いつだって発情期が来るのは、憂鬱で怖かった。
自分には子供を産むことは出来ない。それなのに卵巣があるために発情し、子宮が無いから受精もしないのに子孫繁栄の為にαを求める。
発情期は確かに一週間続く。しかし女性体は子宮を持っている為、受精してしまえば落ち着くのだ。
それに比べ男性体は子宮は持たない。だから受精もしない為、一週間続くのだ。それでも体液を摂取すればいくらか収まり、楽になるのは事実。
「レン」
カイルが、優しくレンの背中を撫でる。
彼は医療などで患者が着るような膝丈までの薄いワンピースのようなものを身に着けていた。もちろん、下着などつけてはいない。
「愛してるよ」
切なげに囁く彼の手を握る。病気などではないのに、まるで病人のように力なく横たわる自分。
初めて発情期が来てから、何度こうした日々を過ごしただろうか。いや、あの頃とは違う。ここには愛がある。
「カイル……」
「いつでも、傍に居るよ」
この世で一番愛しい人。これから言葉や身体で傷つけるのかと思うと、辛い。自分には記憶がないが、彼は全てを記憶し心の奥底にしまい込むのだろう。彼は今まで一度もレンを責めたことがない。
───クライスにも辛い想いをさせている。
彼はカイルに逢いたい一心でこの国に訪れた。
自分がもしΩでなかったならば、こんなに辛いもいばかりさせずに済んだ。性を知ることも、ラット化することもなかったはずだ。
だが彼は全てをαである自分のせいにして苦しんでいる。カイルが声をかけるだけで、嬉しそうな顔をするクライス。
見ているだけで癒された。
ああ、これが恋というモノなんだと理解したのだ。
───神はなんと悍ましいものを生み出したのだろうか。
自分は宗教家ではない。
しかし自分の呪われた性のことを考えると、そう思わずにはいられない。
男性体に産まれながら、女性機能の一部を持つ。そして、Ω男性体は”α”を産みだす道具となる。
”Ω男性体は、神が齎した異質な産物”
それを人々が手にした時、神の道具は穢されたのだ。
人でありながら、下々の者たちに道具にされるΩ。
自分たちは性を選んで産まれて来たわけではない。それなのに、同じ人の手で生を奪われ、心を切り裂かれ、身体を傷つけられ、最後はゴミのように捨てられる。
だが人の中に希望はあった。それはβだ。
この世で一番尊いのは、心を持つ者。愛を知る者だ。人の痛みを、我がことのように感じるβ。彼らは、神の使いなのかもしれない。
レンはそんな風に思った。
───愛が救ったものは、なんだったのだろうか。
『クライス、あの人を探して。カイルが屋敷を改装してしまったら、もう一人で外には出られない。最後のチャンスなんだ』
『犯人の目的はなんなの?』
『それは僕たちを番にして、カイルを自分のものにすることだ』
レンに番が出来てしまえば、カイルはレンの傍に居る必要はない。
『もし、相対発情させられてしまったなら。僕が君に抗フェロモン剤を投与するから、クライスは僕に発情抑制剤を飲ませて欲しい』
自分たちの発情の仕方は恐らく、真逆だ。
レンはラット化したことのあるαの書いた手記に目を通している。そこにはラット化し、記憶を失うまでの様子が書かれていた。
Ωは先に意識を失うが、αは先に身体が言う事をきかなくなる。つまり先にラット化を解除出来たなら、番にならずとも済むのだ。
───僕らは、番になってはいけない。カイルを守るために。
そこで、レンの意識は途絶えたのだった。
いつだって発情期が来るのは、憂鬱で怖かった。
自分には子供を産むことは出来ない。それなのに卵巣があるために発情し、子宮が無いから受精もしないのに子孫繁栄の為にαを求める。
発情期は確かに一週間続く。しかし女性体は子宮を持っている為、受精してしまえば落ち着くのだ。
それに比べ男性体は子宮は持たない。だから受精もしない為、一週間続くのだ。それでも体液を摂取すればいくらか収まり、楽になるのは事実。
「レン」
カイルが、優しくレンの背中を撫でる。
彼は医療などで患者が着るような膝丈までの薄いワンピースのようなものを身に着けていた。もちろん、下着などつけてはいない。
「愛してるよ」
切なげに囁く彼の手を握る。病気などではないのに、まるで病人のように力なく横たわる自分。
初めて発情期が来てから、何度こうした日々を過ごしただろうか。いや、あの頃とは違う。ここには愛がある。
「カイル……」
「いつでも、傍に居るよ」
この世で一番愛しい人。これから言葉や身体で傷つけるのかと思うと、辛い。自分には記憶がないが、彼は全てを記憶し心の奥底にしまい込むのだろう。彼は今まで一度もレンを責めたことがない。
───クライスにも辛い想いをさせている。
彼はカイルに逢いたい一心でこの国に訪れた。
自分がもしΩでなかったならば、こんなに辛いもいばかりさせずに済んだ。性を知ることも、ラット化することもなかったはずだ。
だが彼は全てをαである自分のせいにして苦しんでいる。カイルが声をかけるだけで、嬉しそうな顔をするクライス。
見ているだけで癒された。
ああ、これが恋というモノなんだと理解したのだ。
───神はなんと悍ましいものを生み出したのだろうか。
自分は宗教家ではない。
しかし自分の呪われた性のことを考えると、そう思わずにはいられない。
男性体に産まれながら、女性機能の一部を持つ。そして、Ω男性体は”α”を産みだす道具となる。
”Ω男性体は、神が齎した異質な産物”
それを人々が手にした時、神の道具は穢されたのだ。
人でありながら、下々の者たちに道具にされるΩ。
自分たちは性を選んで産まれて来たわけではない。それなのに、同じ人の手で生を奪われ、心を切り裂かれ、身体を傷つけられ、最後はゴミのように捨てられる。
だが人の中に希望はあった。それはβだ。
この世で一番尊いのは、心を持つ者。愛を知る者だ。人の痛みを、我がことのように感じるβ。彼らは、神の使いなのかもしれない。
レンはそんな風に思った。
───愛が救ったものは、なんだったのだろうか。
『クライス、あの人を探して。カイルが屋敷を改装してしまったら、もう一人で外には出られない。最後のチャンスなんだ』
『犯人の目的はなんなの?』
『それは僕たちを番にして、カイルを自分のものにすることだ』
レンに番が出来てしまえば、カイルはレンの傍に居る必要はない。
『もし、相対発情させられてしまったなら。僕が君に抗フェロモン剤を投与するから、クライスは僕に発情抑制剤を飲ませて欲しい』
自分たちの発情の仕方は恐らく、真逆だ。
レンはラット化したことのあるαの書いた手記に目を通している。そこにはラット化し、記憶を失うまでの様子が書かれていた。
Ωは先に意識を失うが、αは先に身体が言う事をきかなくなる。つまり先にラット化を解除出来たなら、番にならずとも済むのだ。
───僕らは、番になってはいけない。カイルを守るために。
そこで、レンの意識は途絶えたのだった。
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