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16話『独立国でのαの実態』
3 レンの提案
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****♡Side・β(カイル)
レンの想像通り、盗聴器は寝室から見つかった。
つまりそれが示すことは……。
───俺たちがエッチしてるの筒抜け⁈
カイルは一人青くなったり赤くなったりしていた。
「カイル様、これからどうなさいます?」
盗聴器を撤去したという事は、相手にそれが知れることを指示している。
相手が分かっていると思われれば、この先強硬手段に出る恐れもあった。
───犯人は、やっぱりあの人なんだろうか?
でも、五年も前の話なのに。
カイルばかり幸せになって……。相手はそう思ったのかも知れない。
だが事件を起こす引き金はなんだったのだろうか。
レンと深い関係になったのはついこの間の話だ。
カイルは初めの事件について知らなければ、何も分からないままな気がした。しかし、レンの発情期が近づいている今、下手に動くのは命取りだ。
カイルは、自分たちがどう動くべきかについて考える。
───盗聴に気づいたと思われないようにするには、どうすべきか。
仮に気づいても……監視していることに気づいていないフリをしなければ、危険だ。
「刑事さん」
カイルは担当の刑事に小さな紙きれを渡しながら、
「この人物について調べて貰いたい」
と頼みごとをした。
「この方が関係あるのですかな?」
と、刑事。
「それは、まだわかりません」
「わかりました」
刑事は紙切れを大事そうにポケットに入れると、鑑識に何か指示をし始める。今夜はこれ以上表に出るのは危険だと思われた。
執事を通し彼らに屋敷に泊まるように伝えることにし、カイルは二人の元へ戻る。
「カイル様」
入口にいた執事がカイルに気づき横に移動した。
そんな彼に伝言を頼み、先ほどと同じ位置へ。
「おかえり、カイル」
レンはぼんやりと向かい側のクライスを眺めている。
クライスは、眠そうだ。
「二人とも。明日は出かけるよ」
カイルが二人に向かってそう告げるとレンが驚いた顔をする。こんな時に出かけるなんて、と思っているに違いない。しかしそれこそが計算であった。
「クライスの服を買いに行こう」
「大丈夫なの?」
と、レン。
「今、家に籠れば俺たちが気づいたことを知らせるようなものだ。相手に安心を与えなければならない」
「なるほど、そう言う事か」
レンは納得したのか、オレンジジュースを一口飲んだ。
「クライス」
「ん……」
カイルは船を漕ぐクライスの髪を撫でる。だいぶ遅い時間だ。
「ここの奥で、眠ったら?」
と、レン。
「そうだな」
カイルはクライスの脇の下に腕を通すと、彼を立ち上がらせベッドに運ぼうとした。
すると、
「ねえ、たまには二人で寝たら?」
と、レンが言う。
「僕、まだ調べ物したいから」
と。
───寝るだけで終わればいいけど。
カイルはチラリとクライスに目をやる。
だらりとした彼の首元から見える、彼の胸元。
「クライス、ほら横になって」
「んー」
彼をベッドにおろすと、カイルも隣に潜り込む。
「カイル……大好き」
寝言なのか、カイルにむぎゅっと抱きつく彼。カイルの理性は崩壊したのだった。
レンの想像通り、盗聴器は寝室から見つかった。
つまりそれが示すことは……。
───俺たちがエッチしてるの筒抜け⁈
カイルは一人青くなったり赤くなったりしていた。
「カイル様、これからどうなさいます?」
盗聴器を撤去したという事は、相手にそれが知れることを指示している。
相手が分かっていると思われれば、この先強硬手段に出る恐れもあった。
───犯人は、やっぱりあの人なんだろうか?
でも、五年も前の話なのに。
カイルばかり幸せになって……。相手はそう思ったのかも知れない。
だが事件を起こす引き金はなんだったのだろうか。
レンと深い関係になったのはついこの間の話だ。
カイルは初めの事件について知らなければ、何も分からないままな気がした。しかし、レンの発情期が近づいている今、下手に動くのは命取りだ。
カイルは、自分たちがどう動くべきかについて考える。
───盗聴に気づいたと思われないようにするには、どうすべきか。
仮に気づいても……監視していることに気づいていないフリをしなければ、危険だ。
「刑事さん」
カイルは担当の刑事に小さな紙きれを渡しながら、
「この人物について調べて貰いたい」
と頼みごとをした。
「この方が関係あるのですかな?」
と、刑事。
「それは、まだわかりません」
「わかりました」
刑事は紙切れを大事そうにポケットに入れると、鑑識に何か指示をし始める。今夜はこれ以上表に出るのは危険だと思われた。
執事を通し彼らに屋敷に泊まるように伝えることにし、カイルは二人の元へ戻る。
「カイル様」
入口にいた執事がカイルに気づき横に移動した。
そんな彼に伝言を頼み、先ほどと同じ位置へ。
「おかえり、カイル」
レンはぼんやりと向かい側のクライスを眺めている。
クライスは、眠そうだ。
「二人とも。明日は出かけるよ」
カイルが二人に向かってそう告げるとレンが驚いた顔をする。こんな時に出かけるなんて、と思っているに違いない。しかしそれこそが計算であった。
「クライスの服を買いに行こう」
「大丈夫なの?」
と、レン。
「今、家に籠れば俺たちが気づいたことを知らせるようなものだ。相手に安心を与えなければならない」
「なるほど、そう言う事か」
レンは納得したのか、オレンジジュースを一口飲んだ。
「クライス」
「ん……」
カイルは船を漕ぐクライスの髪を撫でる。だいぶ遅い時間だ。
「ここの奥で、眠ったら?」
と、レン。
「そうだな」
カイルはクライスの脇の下に腕を通すと、彼を立ち上がらせベッドに運ぼうとした。
すると、
「ねえ、たまには二人で寝たら?」
と、レンが言う。
「僕、まだ調べ物したいから」
と。
───寝るだけで終わればいいけど。
カイルはチラリとクライスに目をやる。
だらりとした彼の首元から見える、彼の胸元。
「クライス、ほら横になって」
「んー」
彼をベッドにおろすと、カイルも隣に潜り込む。
「カイル……大好き」
寝言なのか、カイルにむぎゅっと抱きつく彼。カイルの理性は崩壊したのだった。
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