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15話『Ωが真実に気づく時』
7 数ある可能性
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****♡Side・β(カイル)
───まさか、監視カメラをハッキングしているとでも、言うのか?
しかしそれならば辻褄が合うのだ。
この国にはΩをαから守るために、無数の監視カメラがある。それを使えば、カイル達の行動など筒抜け。
あの日、二人の関係に変化が訪れたことを知った犯人は、カイルに”レンには魂の番がいる”と思わせるために、家の近くに発情促進薬をまいた。カイルの家にαが来たと思わせて。
何故そんなことをしなければならなかったのか。犯人があの人なら、全てが繋がる。しかし妹姫の事件にどうかかわってくるのだろうか。
この国では、βがΩを守るのは当然の事。αを使いΩに危害を加えたとするのならば、Ωを何らかの理由で恨んでいるということだろうか。
とすれば……。
「レン。俺の妹が狙われたのは、ほんとに偶然なのかな」
カイルは偶然だったのか必然だったのか、非常に気になった。
必然だったのならば、事件の引き金についても明確に出来そうだったからだ。しかしカイルの質問はクライスの別な質問により、一旦中断された。
「一個気になっていることがあるんだけど」
「ん?」
「事件って約三年前だよね? αの統治国家でやっていたニュースでは、自殺した女の子は十六歳と報道されていたのだけれど。単純計算すると、生きていたら十九。妹さんって、双子なの?」
カイルは今年十九になったばかりである。
「ああ。その事か」
カイルの妹姫はレンと同じ年。
「俺の妹は一個下なんだ。きっと印刷の字が滲んで”15”と”16”を見間違えたんじゃないのかな」
αの統治国家でどのような報道がなされたのかカイルの知るところにはないが、自国であるこの国ではちゃんと十五と報道されていたはずだ。
というのも、カイルは妹の自殺を知りしばらくひきこもっていたからだ。
もちろんその間父王がバッシングを受けたことも、レンが父王に逢いにいったことも知らない。
妹だけならまだしも義理の弟になるはずだった妹の恋人も後を追ってしまった。無力な自分に嫌気が差し、仲の良かった妹の死を受け入れることが出来なかったのだ。
「もし、必然だとしたら」
と、それまで黙っていたレンが口を開く。
皆が彼に注目する。
「王を恨んでいる可能性も考えられるね」
カイルはその可能性を否定することは出来なかった。
αへの憎しみ、Ωへの恨み。根源となる王への復讐。先日の独立記念日には、人を雇ってまでクライスを捕まえようとした。
分かり合うことは出来ないのだろうか?
話し合いで、何とかならないのだろうか。
カイルはいろんなことに想いを馳せる。自分はレンとクライスを何としてでも、犯人から守らねばならない。その為には、証拠集めが必要だ。
「クライス」
彼の手を借りて。
───まさか、監視カメラをハッキングしているとでも、言うのか?
しかしそれならば辻褄が合うのだ。
この国にはΩをαから守るために、無数の監視カメラがある。それを使えば、カイル達の行動など筒抜け。
あの日、二人の関係に変化が訪れたことを知った犯人は、カイルに”レンには魂の番がいる”と思わせるために、家の近くに発情促進薬をまいた。カイルの家にαが来たと思わせて。
何故そんなことをしなければならなかったのか。犯人があの人なら、全てが繋がる。しかし妹姫の事件にどうかかわってくるのだろうか。
この国では、βがΩを守るのは当然の事。αを使いΩに危害を加えたとするのならば、Ωを何らかの理由で恨んでいるということだろうか。
とすれば……。
「レン。俺の妹が狙われたのは、ほんとに偶然なのかな」
カイルは偶然だったのか必然だったのか、非常に気になった。
必然だったのならば、事件の引き金についても明確に出来そうだったからだ。しかしカイルの質問はクライスの別な質問により、一旦中断された。
「一個気になっていることがあるんだけど」
「ん?」
「事件って約三年前だよね? αの統治国家でやっていたニュースでは、自殺した女の子は十六歳と報道されていたのだけれど。単純計算すると、生きていたら十九。妹さんって、双子なの?」
カイルは今年十九になったばかりである。
「ああ。その事か」
カイルの妹姫はレンと同じ年。
「俺の妹は一個下なんだ。きっと印刷の字が滲んで”15”と”16”を見間違えたんじゃないのかな」
αの統治国家でどのような報道がなされたのかカイルの知るところにはないが、自国であるこの国ではちゃんと十五と報道されていたはずだ。
というのも、カイルは妹の自殺を知りしばらくひきこもっていたからだ。
もちろんその間父王がバッシングを受けたことも、レンが父王に逢いにいったことも知らない。
妹だけならまだしも義理の弟になるはずだった妹の恋人も後を追ってしまった。無力な自分に嫌気が差し、仲の良かった妹の死を受け入れることが出来なかったのだ。
「もし、必然だとしたら」
と、それまで黙っていたレンが口を開く。
皆が彼に注目する。
「王を恨んでいる可能性も考えられるね」
カイルはその可能性を否定することは出来なかった。
αへの憎しみ、Ωへの恨み。根源となる王への復讐。先日の独立記念日には、人を雇ってまでクライスを捕まえようとした。
分かり合うことは出来ないのだろうか?
話し合いで、何とかならないのだろうか。
カイルはいろんなことに想いを馳せる。自分はレンとクライスを何としてでも、犯人から守らねばならない。その為には、証拠集めが必要だ。
「クライス」
彼の手を借りて。
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