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15話『Ωが真実に気づく時』
3 不安な彼を抱きしめて
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****♡Side・Ω(レン)
クライスより先に部屋に戻って来たカイルは、レンを見るなり抱きしめた。
『レン、ごめん』
『どうして謝るの?』
同時に二人を愛してしまって辛いのはカイルなんだと理解し、レンは嫉妬をやめた。
確かに愛情を持って他の人に察する恋人を見るのは辛い。
けれど自分は彼を抱きたいのであって、抱かれたいわけじゃない。Ωという、男性体でありながら女性体のように扱われる性に産まれて来た自分は、何処までも”男”でありたかった。
カイルはそれを叶えてくれる。
カイル以外だったらきっと叶わなかったであろう。
『クライスを愛してあげられた? ちゃんと』
『ああ……たぶん』
カイルの心にはまだ、迷いがある。
それではカイル自身が傷つくし、クライスを傷つけてしまう。
『僕のこと、気になってちゃんと愛してあげられなかったの?』
『わからない』
先に来てしまったという事はそう言う事なんだろうと感じた。彼は、レンに謝ることばかり考えて一人で先に来てしまったのだ。
『クライスは、今一人でお風呂なの?』
『ああ』
情事の後に一人きりにされる寂しさ。カイルだってわかっているはずなのに、気遣ってあげられなかったのだ。
ぎゅっと抱きつく彼の背中に手を回すと、レンは、
『次は、一緒に入ってあげなきゃダメだよ』
と、諭す。
『レン……』
涙声で彼がレンの名を呼ぶ。
『俺のこと、嫌いにならないで。見捨てないで』
───カイルは、自分自身が嫌になっているのかもしれない。
『そんなことないし、見捨てるわけないでしょ』
もし、たった一人を一途に愛したいと思っているのに、それを自分自身が破ってしまったら。好きな気持ちは変わらなくても、やはり苦しむのであろう。
せめていつも三人でいられるならば、彼は楽になれるのに。
自分とクライスは、Ωとα。常に一緒にはいられないのだ。
───クライスがもっと積極的ならば、カイルだってここまで苦しまないだろう。クライスも、僕に遠慮している。
レンは、自分がしっかりしなければいけないと改めて思った。
『カイル、とりあえずシャワー行ってきなよ。身体、冷えてる』
『うん』
レンはカイルを浴室へ促すと、内線用の受話器を取った。
「申し訳ないのだけれど、夜食の準備お願いできるかな。うん、三人とも」
キッチンへそう言って夜食を頼むと、すぐにレンの食べれるものが運ばれてくる。生ものばかり好むレンの食べ物は、手間がかからない。
じきにクライスの食事が運ばれてくるだろう。
原型をとどめるものが苦手なカイルの食事は時間がかかる。彼らが出そろってからかもしれない。
「レン様」
「うん?」
一人でテーブルについていると、執事がやってくる。
どうしたのかと思っていると、
「刑事さんが、いらっしゃるそうです」
と、報告を受ける。
こんな時間に? とは思ったものの、昼間だと犯人が張っている恐れもあったため、好都合だと思いなおしたのだった。
クライスより先に部屋に戻って来たカイルは、レンを見るなり抱きしめた。
『レン、ごめん』
『どうして謝るの?』
同時に二人を愛してしまって辛いのはカイルなんだと理解し、レンは嫉妬をやめた。
確かに愛情を持って他の人に察する恋人を見るのは辛い。
けれど自分は彼を抱きたいのであって、抱かれたいわけじゃない。Ωという、男性体でありながら女性体のように扱われる性に産まれて来た自分は、何処までも”男”でありたかった。
カイルはそれを叶えてくれる。
カイル以外だったらきっと叶わなかったであろう。
『クライスを愛してあげられた? ちゃんと』
『ああ……たぶん』
カイルの心にはまだ、迷いがある。
それではカイル自身が傷つくし、クライスを傷つけてしまう。
『僕のこと、気になってちゃんと愛してあげられなかったの?』
『わからない』
先に来てしまったという事はそう言う事なんだろうと感じた。彼は、レンに謝ることばかり考えて一人で先に来てしまったのだ。
『クライスは、今一人でお風呂なの?』
『ああ』
情事の後に一人きりにされる寂しさ。カイルだってわかっているはずなのに、気遣ってあげられなかったのだ。
ぎゅっと抱きつく彼の背中に手を回すと、レンは、
『次は、一緒に入ってあげなきゃダメだよ』
と、諭す。
『レン……』
涙声で彼がレンの名を呼ぶ。
『俺のこと、嫌いにならないで。見捨てないで』
───カイルは、自分自身が嫌になっているのかもしれない。
『そんなことないし、見捨てるわけないでしょ』
もし、たった一人を一途に愛したいと思っているのに、それを自分自身が破ってしまったら。好きな気持ちは変わらなくても、やはり苦しむのであろう。
せめていつも三人でいられるならば、彼は楽になれるのに。
自分とクライスは、Ωとα。常に一緒にはいられないのだ。
───クライスがもっと積極的ならば、カイルだってここまで苦しまないだろう。クライスも、僕に遠慮している。
レンは、自分がしっかりしなければいけないと改めて思った。
『カイル、とりあえずシャワー行ってきなよ。身体、冷えてる』
『うん』
レンはカイルを浴室へ促すと、内線用の受話器を取った。
「申し訳ないのだけれど、夜食の準備お願いできるかな。うん、三人とも」
キッチンへそう言って夜食を頼むと、すぐにレンの食べれるものが運ばれてくる。生ものばかり好むレンの食べ物は、手間がかからない。
じきにクライスの食事が運ばれてくるだろう。
原型をとどめるものが苦手なカイルの食事は時間がかかる。彼らが出そろってからかもしれない。
「レン様」
「うん?」
一人でテーブルについていると、執事がやってくる。
どうしたのかと思っていると、
「刑事さんが、いらっしゃるそうです」
と、報告を受ける。
こんな時間に? とは思ったものの、昼間だと犯人が張っている恐れもあったため、好都合だと思いなおしたのだった。
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