R18【オメガバース】愛を持たざる者ども─αとΩに愛されたβ─

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13話『第一皇子と奇跡の子』

1 自責の念に駆られて

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****♡Side・α(クライス)

「クライス、ごめんね。僕がもっとちゃんと止めていれば」
「いや、俺が屋敷に居れば……」
 迎えの車に乗り込むと、両脇のレンとカイルが口々に謝罪の言葉を述べる。クライスはただ、首をゆっくりと横に振った。

「二人は悪くない」
 ハラハラと涙を溢す、クライス。
 二人は何も悪くはないのだ。
「レン、カイルごめんなさい」
「クライス、どうしたんだよ」
 心配そうに髪を撫でる、カイル。
 レンはぎゅっとクライスの手を握ってくれている。
「せっかく、レンが選んでくれたのに。カイルが買ってくれたのに」
 ズタズタに切り裂かれたシャツの破片は今、膝の上だ。カイルがトランクから出してくれたシャツを、クライスは羽織っている。

『ごめんな、お古で。でも、洗ってあるから』
と、カイルが渡してくれたものだ。
 大きめだった為、ちゃんとお腹まで隠れる。
 シャツを鼻にあて、
『カイルの匂い』
と微笑めば、
『柔軟剤だぞ』
と笑われた。

「クライス。そんなのいいんだよ? シャツはいくらでも代わりがきく、でもクライスは一人しかいないんだから」
と、レン。
「そうだぞ。そんなものいくらだって買ってやるから。俺は、お前が無事で本当良かったよ」
 カイルはうっすら、目に涙を浮かべ。

 自分が二人にどれだけ大事にされているかを知る。
 なのに自分にとってあのシャツは思い出が詰まっていて、宝物だった。その事を思うと涙が止まらない。
「泣くなよ、なあ……頼むから。どうしていいか分からなくなるだろ」
とハンカチを出しクライスの目元へ充てるカイル。
「クライス、怖かったよね。僕たちがいるから、もう大丈夫だよ」
と、一所懸命慰めてくれるレン。

───αだからなんだって言うんだ。
 優れている、ずっとそう言われて育った。
 ”希少価値の奇跡の子”として両親から愛されて、自分は特別なαだと思っていた。だが、実際はなんだ? ただの無力で劣等な人間じゃないか。
 大好きな人たちにこんなに心配させて。

 クライスは自分自身が嫌で仕方なかった。
 自分を孫と言って受け入れてくれたβの祖父母。祖母はもしかしたら、ケガをしているかもしれない。

───カイルに逢いたかった。
 ただ、逢いたかっただけなのに。
 自分の身勝手な行動で、どれだけの人を巻き込んだのだろう?
 もう、消えてしまいたい。αになんて産まれて来なければ……。

 しかしその想いは大好きな父母を否定することになる。
 クライスは自分自身を追い詰め、潰されそうになっていたのだった。
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