86 / 145
12話『皇子の逆鱗に触れるとき』
6 Ωの覚悟
しおりを挟む
****♡Side・Ω(レン)
「なるほど、よく分かった」
バイクの騒音に負けないように、一所懸命自分の推理をカイルに話すレン。
そのレンの推理とはこうである。
あの事件の犯人は、カイルにレンには魂の番がいると思わせたかった。
だから発情促進剤をまいたのだ。
あの日、二人が出かけるのを見て実行に移したと思われる。瓶は元々持ち帰るつもりでいたが、それを回収する前にクライスに見られてしまった。
つまり、クライスはイレギュラーな存在。
クライスの証言により捕まると思っていた犯人であったが、一向にその時は訪れない。
再び様子を探るべくカイルの屋敷を張っていた犯人は、クライスがカイルの家に滞在していることを知る。そしてクライスを利用しようと計画した。
その計画とはこうだ。
本来性欲とは無縁であるαのクライスに快楽を覚えさせ、意のままにあやつり、レンと番にさせようとしているのだ。
───調べれば調べるほど、そうとしか思えない。
αが自分一人で性欲を発散できないということは、周知の事実。誰でも知っていること。αはラットにならない限り、不能なのだ。
だから一度快楽を覚えてしまったαは、性欲に苦しむ。
どんなに自慰をしても発散することが出来ない。
プライドを優先して発狂するか、プライドを捨てβに縋るしかない。
独立記念日では確かに命を奪われるものも存在するが、ほとんどのαはΩの苦しみと同じ苦しみを負わせようと凌辱のためにβに連れ去られるのだという事を、レンは今日知った。
───もし、手遅れだったらカイルはどうするのだろうか?
クライスがもし、彼らにレイプされてしまっていたら。
もう、その快楽からは逃れられない。
もちろん個人差はあるだろうが、性欲と向き合わなければならなくなる。
カイルが他の人と……確かに考えると辛いことではあるが、自分にとってもクライスは、もはや家族同然の存在なのだ。
友人と心から言える存在は彼だけだ。
カイルは幼馴染みで友人ではあったが、恋心を抱いていた相手を純粋に友人とは言えないだろう。
───カイルは、クライスを救ってくれるのかな。
レンにとってクライスは年が二つも上であるし、自分より遥かに背も高く大人の体系だ。それなのに、弟のように可愛いと思ってしまうのだ。
素直でカイルが大好きで、純粋な彼。
そんな彼がこれからずっと苦しみ続けるのは嫌だ。
自分たちはそれぞれが違う性だ。
自分は希少なΩ。自らカイルを選んだから、国の法律によってカイルと恋人となった。
もし違う人を選んでいたなら一緒に居られなかっただろう。
そして、クライスはαだ。βとαはいがみ合う関係。
───僕ら出逢ったのは、奇跡なんだ。
出逢うはずのない僕らが、こんな風に互いを必要として傍にいられることは。
レンは腹をくくった。
カイルが自分以外の人と交わるのはイヤだが、クライスを失うのはもっとイヤだと思った。
運命を受け入れたレンはただじっと前を見据えていたのだった。
「なるほど、よく分かった」
バイクの騒音に負けないように、一所懸命自分の推理をカイルに話すレン。
そのレンの推理とはこうである。
あの事件の犯人は、カイルにレンには魂の番がいると思わせたかった。
だから発情促進剤をまいたのだ。
あの日、二人が出かけるのを見て実行に移したと思われる。瓶は元々持ち帰るつもりでいたが、それを回収する前にクライスに見られてしまった。
つまり、クライスはイレギュラーな存在。
クライスの証言により捕まると思っていた犯人であったが、一向にその時は訪れない。
再び様子を探るべくカイルの屋敷を張っていた犯人は、クライスがカイルの家に滞在していることを知る。そしてクライスを利用しようと計画した。
その計画とはこうだ。
本来性欲とは無縁であるαのクライスに快楽を覚えさせ、意のままにあやつり、レンと番にさせようとしているのだ。
───調べれば調べるほど、そうとしか思えない。
αが自分一人で性欲を発散できないということは、周知の事実。誰でも知っていること。αはラットにならない限り、不能なのだ。
だから一度快楽を覚えてしまったαは、性欲に苦しむ。
どんなに自慰をしても発散することが出来ない。
プライドを優先して発狂するか、プライドを捨てβに縋るしかない。
独立記念日では確かに命を奪われるものも存在するが、ほとんどのαはΩの苦しみと同じ苦しみを負わせようと凌辱のためにβに連れ去られるのだという事を、レンは今日知った。
───もし、手遅れだったらカイルはどうするのだろうか?
クライスがもし、彼らにレイプされてしまっていたら。
もう、その快楽からは逃れられない。
もちろん個人差はあるだろうが、性欲と向き合わなければならなくなる。
カイルが他の人と……確かに考えると辛いことではあるが、自分にとってもクライスは、もはや家族同然の存在なのだ。
友人と心から言える存在は彼だけだ。
カイルは幼馴染みで友人ではあったが、恋心を抱いていた相手を純粋に友人とは言えないだろう。
───カイルは、クライスを救ってくれるのかな。
レンにとってクライスは年が二つも上であるし、自分より遥かに背も高く大人の体系だ。それなのに、弟のように可愛いと思ってしまうのだ。
素直でカイルが大好きで、純粋な彼。
そんな彼がこれからずっと苦しみ続けるのは嫌だ。
自分たちはそれぞれが違う性だ。
自分は希少なΩ。自らカイルを選んだから、国の法律によってカイルと恋人となった。
もし違う人を選んでいたなら一緒に居られなかっただろう。
そして、クライスはαだ。βとαはいがみ合う関係。
───僕ら出逢ったのは、奇跡なんだ。
出逢うはずのない僕らが、こんな風に互いを必要として傍にいられることは。
レンは腹をくくった。
カイルが自分以外の人と交わるのはイヤだが、クライスを失うのはもっとイヤだと思った。
運命を受け入れたレンはただじっと前を見据えていたのだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。

孤独を癒して
星屑
BL
運命の番として出会った2人。
「運命」という言葉がピッタリの出会い方をした、
デロデロに甘やかしたいアルファと、守られるだけじゃないオメガの話。
*不定期更新。
*感想などいただけると励みになります。
*完結は絶対させます!

俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

両片思いのI LOVE YOU
大波小波
BL
相沢 瑠衣(あいざわ るい)は、18歳のオメガ少年だ。
両親に家を追い出され、バイトを掛け持ちしながら毎日を何とか暮らしている。
そんなある日、大学生のアルファ青年・楠 寿士(くすのき ひさし)と出会う。
洋菓子店でミニスカサンタのコスプレで頑張っていた瑠衣から、売れ残りのクリスマスケーキを全部買ってくれた寿士。
お礼に彼のマンションまでケーキを運ぶ瑠衣だが、そのまま寿士と関係を持ってしまった。
富豪の御曹司である寿士は、一ヶ月100万円で愛人にならないか、と瑠衣に持ち掛ける。
少々性格に難ありの寿士なのだが、金銭に苦労している瑠衣は、ついつい応じてしまった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる